海外留学・移住のためのIELTSスコア目安と国別要件

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海外の大学に留学したり、移住して働いたりすることを目指す場合、英語力の証明としてIELTSスコアが重要になります。IELTS(アイエルツ)はInternational English Language Testing Systemの略で、英語圏への留学やビザ申請で広く利用されている英語試験です。高いIELTSスコアを取得できれば、志望する大学への入学や希望国でのビザ取得に有利になります。

本記事では、留学ビザ(学生ビザ)および移住ビザ(永住権など)に必要なIELTSスコアの目安を国別に解説します。アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアといった人気の英語圏を中心に、大学・大学院の入学基準や移住申請に求められるスコアについて最新情報を紹介します。また、IELTS形式の練習問題例やスコアアップのための効果的な学習Tipsも掲載しています。留学や移住を目指してIELTSの勉強をしている方は、ぜひ参考にしてください。あなたの目標達成に必要なスコアを明確にし、効率的な対策を進める一助となれば幸いです。

なお、IELTSには**Academic(アカデミック)モジュールとGeneral Training(ジェネラルトレーニング)**モジュールの2種類があります。留学目的の場合は通常Academic、移住目的の場合はGeneral Trainingを受験します。本記事でも、用途に応じて必要なモジュールおよびスコアを解説します。

人気渡航先のIELTSスコア要件(学生ビザ・移住ビザ)

留学や移住の希望先として人気の高いアメリカカナダイギリスオーストラリアのIELTSスコア要件をまとめます。それぞれ**学生ビザ(留学)**の場合と、移住ビザ(就労や永住)の場合に分けて目安を紹介します。

アメリカ合衆国(米国)

学生ビザ(F-1):アメリカの大学に留学する際、学生ビザ(F-1)を取得する条件の一つに「十分な英語力の証明」があります。一般的にビザ申請時に英語試験スコアを直接提出することはありませんが、大学への入学許可を得るためにIELTSスコアが求められます。多くの米国大学ではIELTS 6.0~6.5程度を最低ラインとし、上位校では7.0以上を要求することもあります。例えば、学部留学の場合は6.0~6.5程度、大学院留学では6.5~7.0以上が目安です。アイビーリーグや名門大学になると全体で7.0以上(一部の大学では7.5~8.0)と非常に高いスコアが求められる傾向があります。基本的にアメリカ留学ではIELTS Academicモジュールでの高スコアが必要となります。

移住(就労・永住):アメリカの場合、実は移住ビザ(就労ビザ・永住権)で特定のIELTSスコアが必須とされることはありません。他の国のようにポイント制で語学力を評価する制度がないため、H-1Bなどの就労ビザやグリーンカード(永住権)取得の際にIELTS提出は原則不要です。ただし、英語力が無くてもよいという意味ではなく、アメリカで生活・就労するには高い英語運用能力が実質的に必要です。また、**医療系職種(看護師など)でアメリカに就職する場合には例外があります。国際看護師が米国で働くための資格審査(VisaScreen)ではIELTS Academicで総合6.5以上(スピーキング7.0以上)**が課されるなど、職種によっては事実上のIELTS要件があります。なお、アメリカの市民権取得時には英語と米国歴史の筆記・面接試験がありますが、これはIELTSではなく専用のテストです。

カナダ

学生ビザ(留学):カナダの大学やカレッジでもIELTS Academicスコアの提出が一般的です。多くの大学本科課程では全体で6.5以上、各セクション(リスニング・リーディング・ライティング・スピーキング)で6.0未満がないことなどを要求するケースが多く、大学院課程では6.5~7.0以上が目安となります。専門学校やカレッジ、また一部の学部では6.0程度でも出願可能な場合もありますが、留学生として十分な英語力を示すためには6.5以上を目標にしておくと安心です。IELTS以外にTOEFLや他の試験でも代替可能な場合がありますが、IELTSスコアはカナダの多くの教育機関で広く受け入れられています。

移住(永住権):カナダではポイント制による移民選考(Express Entry)で語学力が重視されており、IELTS General Trainingのスコア提出がほぼ必須です。一般的な技術移民(Federal Skilled Workerなど)では、最低でもCLB7(カナダ語学基準7)に相当する英語力が求められます。CLB7はIELTSスコアに換算すると各セクション6.0程度にあたります(注:CLBはCanadian Language Benchmarkの略称)。ただし、CLB7はあくまで最低基準であり、実際に高得点で選考を通過するにはCLB9(IELTSで各7.0相当)以上のスコアが望ましいです。IELTSスコアが高いほど移民選考上のポイントが加算され、有利になります。例えば、IELTS 7.0以上を取得できればカナダ移住のチャンスが大きく広がります。一部、技能職向けの移民(Federal Skilled Trades)ではCLB5程度(IELTS 5.0前後)から応募可能なケースもありますが、永住権取得を目指す場合はより高い英語力を備えておくことが推奨されます。またカナダではフランス語力も評価対象になりますが、本記事では英語試験であるIELTSに絞って解説しています。

イギリス(英国)

学生ビザ(留学):イギリスの大学に留学する場合、IELTS Academic(UKVI)のスコア提出が一般的です。学部課程ではIELTS 6.0~6.5程度(かつ各セクションで5.5以上など)が一つの目安となり、大学院課程では6.5~7.0以上を要求されることが多くなります。例えば、英国の多くの大学で全体6.5以上・各項目6.0以上が標準的な入学基準です。人文・社会科学系の難関コースやMBAなどでは7.0以上を求められるケースもあります。なお、英国ビザ当局(UKVI)が認定するIELTS for UKVIという試験形式で受験する必要があります(通常のIELTSと内容は同じですが、試験結果証明書がビザ申請用に認定されています)。大学からCAS(入学許可書)が発行されるには所定の英語力条件を満たす必要があり、それが学生ビザ申請の英語要件にもなります。

移住(就労・永住):イギリスの就労ビザ(現在のSkilled Workerビザ、旧Tier 2)や永住権申請では、少なくともB1レベルの英語力証明が必要です。B1はヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)の中級程度で、IELTSスコアでは概ね4.0~5.0程度に相当します。具体的には、IELTS General TrainingもしくはIELTS for UKVI Academicで各セクション4.0~5.0程度のスコアがあればB1相当と見なされます(ビザ種類によって必要なモジュールが指定されます)。配偶者ビザ(結婚による家族呼び寄せ)ではさらに低いA1レベル(IELTS Life Skillsなどのスピーキング・リスニングの基礎的テストで証明)で申請可能ですが、その後永住権取得までにA2→B1と段階的により高い英語力証明が求められます。また、医療従事者ビザなど特定の専門職向けビザでは、雇用先や資格認定団体がIELTSで7.0以上の高スコアを要求する場合もあります(例:看護師はIELTS7.0相当の英語力要件あり)。このように、英国移住ではビザの種類に応じて必要となるIELTSレベルが異なるので、自分の申請区分に合わせて確認が必要です。

オーストラリア

学生ビザ(留学):オーストラリアの大学に留学する際にもIELTS Academicスコアが重要です。一般的な大学コースではIELTS 6.0以上(各バンドで5.5以上)を最低条件とし、より人気の高い専攻や大学院では6.5~7.0を求められることがあります。2024年からオーストラリア政府は学生ビザ申請時の英語要件を引き上げ、従来のIELTS 5.5から6.0へと最低スコア基準を改定しました。この変更により、学校への入学基準だけでなくビザ申請上も6.0以上のスコアが必要になっています(語学準備コースであるELICOS経由の場合も従来より高い英語力証明が要求されます)。そのため、オーストラリア留学を目指す場合は早めにIELTS6.0以上を取得しておくことが望ましいでしょう。多くの大学ではIELTS 6.5以上を推奨目標スコアとして掲げており、スコアが足りない場合は付属の英語コースを受講してから本課程に進むというパスウェイも用意されています。

移住(就労・永住):オーストラリアの移住ビザではIELTS General Training(またはAcademicでも可)でのスコア提出が求められます。特にポイント制の技術移民ビザ(独立技術移民189番や州指名190番など)では英語力がポイント加算要素になっています。応募の最低要件としてCompetent English(IELTS各セクション6.0以上)が必要で、これを満たさないと申請資格がありません。さらにスコアが高いと加点があり、Proficient English(IELTS各7.0以上)なら+10ポイント、Superior English(IELTS各8.0以上)なら最大の+20ポイントが与えられます。そのため永住権を目指すなら各セクション7.0以上を取得できると大きな強みになります。雇用主スポンサーの就労ビザでも基本的にCompetent English程度(6.0相当)が求められますが、職種によってはそれ以上の英語力が求められる場合もあります。また、主申請者の配偶者を含めて移住する場合、配偶者もFunctional English(IELTS平均4.5程度)以上であることが求められます(満たさない場合は語学費用を追納)。このように、オーストラリアでは移住・就労のビザ取得にあたりIELTSスコアが直接的に選考や条件に影響するため、高スコア取得が重要です。

その他の英語圏(ニュージーランドなど)

上記以外の英語圏の国でもIELTSスコアは留学・移住の重要な鍵となります。例えばニュージーランドでは、大学留学の際にIELTS 6.0~6.5程度のスコアが求められる点は他国と共通です。ニュージーランド移住(技能移民)の場合、かつては主申請者にIELTS全体で6.5以上(Academic/Generalいずれも可)のスコア証明を要求していました(英語圏の学位保有者などは免除あり)。最新の制度でも、永住権申請時に高い英語力を示すことが重要である点は変わりません。また、アイルランドシンガポールなど英語が公用語となっている国への留学・就職でもIELTSスコア提示が求められることがあります。このように、行き先の国がどこであれ、英語圏での生活を目指すなら早めにIELTSで目標スコアを取得しておくことが大切です。

大学・大学院の入学基準(専攻別のスコア目安)

留学希望者にとって、志望する大学や大学院が求めるIELTSスコアを把握することは極めて重要です。大学の専攻分野によって要求される英語スコアには差があり、文系・理系などで目安が異なります。一般に、理工系の学部は語学要件がやや低め(それでも十分な英語力は必要)に設定され、逆に言語運用能力が直接学問に関わる文系・社会科学系は高めに設定される傾向があります。また、大学院は学部よりも高度な研究・論文執筆が求められるため、IELTSスコア基準が全体的に高くなるのが普通です。

  • 理工系(理学・工学):理工学部では他分野に比べて英語要件がやや低めに設定される傾向があります。多くの場合IELTS 6.0程度(もしくは6.5)を最低条件とし、各セクション5.5以上などの基準を設けています。ただし上位校の工学部やコンピュータサイエンスなどでは6.5以上を求める場合もあります。

  • ビジネス・経済学系:ビジネススクールや経済学部では、講義やディスカッションで高度な英語力が必要となるため6.5前後が求められることが一般的です。MBAプログラムなど大学院レベルのビジネスコースでは7.0以上を要求されるケースもあります。

  • 社会科学系:政治学、国際関係学、社会学などの社会科学分野では6.5~7.0程度のIELTSスコアが目安です。読み書きの量が多いため、特にリーディングやライティングで6.5以上のスコアを求める大学が多く見られます。

  • 人文科学・法学系:文学、歴史学、哲学といった人文学系や法学部では、非常に高い英語読解力・表現力が求められます。多くの大学でIELTS 7.0前後を基準とし、時には7.5を求められることもあります。法学やジャーナリズムなどではライティングやスピーキングで7.0以上といった個別基準が設定される場合もあります。

  • 医学・看護・医療系:医学部や看護学部など医療系のプログラムでは、専門知識の習得に加え患者との高度なコミュニケーション能力が求められるため、IELTS 7.0以上のスコアを必要とする学校が多いです。医療系では全セクションで均等に高いスコア(例えば各セクション7.0以上)が条件となることが一般的です。

このように専攻分野によって求められるIELTSスコアは異なりますが、名門大学であれば理系文系を問わず全体で6.5~7.0以上を課すところが多い点は共通しています。また、各大学とも英語要件を満たさない場合に条件付き入学(付属の語学コース修了を条件とする合格)を用意していることがあります。スコアが少し足りない場合は、渡航後にプレセッショナルコース(大学入学前の英語集中プログラム)を受講して所定レベルに到達することで、本科入学が認められる制度も一般的です。したがって、志望校の規定スコアに届かない場合でも、代替パスを検討することができますが、最終的には求められるレベルのIELTSスコアを取得することが重要となります。

移住・永住権申請に必要なスコア

海外への移住永住権(Permanent Residence)取得を目指す場合、各国の移民政策に応じてIELTSのGeneral Trainingモジュールで一定以上のスコアを取得する必要があります。ここでは代表的なケースをいくつか紹介します。

  • ポイント制の技能移民:カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどでは、学歴や職歴とともに英語力がポイント評価の対象となります。例えばカナダでは先述の通りCLB7(IELTS各6.0程度)が最低ラインで、スコアが高いほど有利です。オーストラリアでもIELTS各6.0で出願資格を得ますが、各7.0や8.0に上げることで大きくポイントが加算されます。ニュージーランドでも基本的にIELTS 6.5以上が求められてきました。このように、技能移民では中~高水準のIELTSスコアが合格のための重要なファクターとなります。

  • 就労ビザ(非ポイント制):イギリスや一部の国では、ポイント制ではなく雇用に基づく就労ビザでも英語力証明が条件となる場合があります。イギリスのSkilled Workerビザでは**B1レベル(IELTS 4.0~5.0程度)**の証明が必要であり、他国でも「一定レベルの英語運用能力があること」をビザ発給条件としています。一方、アメリカの多くの就労ビザでは公式なIELTS提出要件はありませんが、実務上は高い英語力が前提となります。

  • 家族・配偶者ビザ:移住者の家族合流(配偶者ビザなど)の場合、国によって要件が異なります。イギリスの配偶者ビザでは先述のようにA1レベル(基礎的な英会話力)の英語証明が必要です。オーストラリアでは移住者の配偶者にFunctional English(IELTS 4.5相当)が求められます。カナダやアメリカでは配偶者ビザに独立した英語試験要件はありませんが、移住後の生活のために基本的な英語力は必須と言えます。

  • 永住権・市民権取得:永住権を経て市民権(国籍)申請を行う際にも、英語力証明が要求されるケースがあります。イギリスでは永住権・市民権申請時にB1レベルの英語試験合格と「Life in the UK」(生活常識試験)の合格が必要です。カナダでは18~54歳の申請者に対しCLB4相当の言語能力証明が課されます(IELTSでは各4.0程度)。アメリカでは市民権取得時に英語面接と筆記のテストがあります。したがって、最終的に現地社会へ統合されるためにも一定の英語力が求められる点は共通しています。

IELTSスコアが求められる職種・ビザの種類

海外で活躍するためにIELTSスコアが求められる主なビザの種類や職種をまとめます。自分の目標に関連するものがあるか確認してみましょう。

主なビザの種類とIELTS要件

  • 学生ビザ(留学ビザ):大学や高校への留学時に必要。基本的にIELTS Academicで所定のスコア(例:6.0~6.5以上)を提出する。国によってはビザ申請時にも一定のスコア提出が求められる(前述のオーストラリアなど)。

  • 就労ビザ(労働ビザ):海外で働くためのビザ。イギリスのSkilled WorkerビザではIELTS 4.0-5.0程度(B1)の証明が必要なように、多くの国で中級程度以上の英語力が条件となる。国によって名称や制度は異なるが、技術者や専門職として就労する場合はIELTS General Trainingでの英語力証明が求められることが多い。

  • 永住権ビザ(移民ビザ):カナダやオーストラリアなどの永住権申請ではIELTS 6.0以上の提出が事実上必須となっている。ポイント加算のためさらに高スコアが有利になる(例:IELTS 7.0以上で加点)。

  • 配偶者ビザ(家族帯同):イギリスをはじめ配偶者のビザ申請にIELTS Life SkillsなどでA1~A2レベルの英語力証明を要求する国がある。ただし国によっては家族ビザで語学証明を要求しない場合もある。

  • ワーキングホリデービザ:18~30歳程度の若者が対象の就労滞在ビザ。多くの国では語学要件が明確には定められていないが、実際に現地で仕事を探すには相応の英語力が必要。事前にIELTSを受験して自分の英語力を確認しておくとよい。

IELTSスコアが特に重要な職種

  • 医療従事者(看護師・医師など):医療分野では資格認証や就労ビザ取得の段階で高いIELTSスコアが求められます。例えば、イギリスの看護師資格登録ではIELTS 7.0以上(各セクションで一定以上)を課し、アメリカで国際看護師が働く際のVisaScreenでも総合6.5以上・スピーキング7.0が要求されます。医師や薬剤師なども同様に、外国人が英語圏で働くには非常に高い英語力証明が必要です。

  • 教育者(教師・講師):現地の学校で教師として働く場合や、教員資格を取得する場合にもIELTSスコアが重視されます。英語そのものを教えるのでなくとも、授業を英語で行うためにはIELTS 7.0前後のレベルが求められることが多いです。特に第二言語として英語を教える資格(TESOL等)取得や、海外の教員免許申請ではIELTSの提出が必要なケースがあります。

  • 専門職(法律・会計・航空など):弁護士や会計士、エンジニア、パイロットといった専門分野でも、高度な英語力は必須です。法律や金融の分野では専門用語を正確に理解し議論する力が求められるため、IELTS 7.0以上の能力が前提となります。また航空業界ではICAO英語試験が別途ありますが、IELTSで高スコアを持っていることが採用時のアピールになるでしょう。どの職種であっても、英語を使って業務を遂行するには相応のIELTSレベルが求められると考えてください。

各国のスコア基準の最新情報

IELTSのスコア要件や英語力に関する政策は、年々アップデートされることがあります。ここでは2024~2025年時点での各国の最新動向や注意点をまとめます。

  • アメリカ:アメリカ合衆国では2025年現在でも就労ビザ・移民ビザにIELTS提出義務は導入されていません。留学における大学側の英語要件も大きな変化はなく、トップ校では引き続きIELTS7.0以上が求められています。

  • カナダ:カナダ移民当局は引き続きIELTSを含む英語テストでCLB7以上の証明を重要視しています。2023年以降、移民選考でフランス語話者を優遇するカテゴリー制度が導入されましたが、英語圏からの申請者にとっては引き続きIELTS高スコア取得が鍵となります。必要スコア水準自体に大きな変更はありません。

  • イギリス:イギリスでは2021年にポイント制の移民制度へ移行して以降も、ビザ要件としての英語レベルは概ね据え置かれています(就労ビザはB1レベル維持)。ただし、UKVIが認める語学テストの選択肢が拡大しており、IELTSに加えてLanguageCertPTE Academic UKVIなども利用可能になっています。IELTS受験者にとっては特に影響はありませんが、常に最新のビザガイダンスを確認しましょう。

  • オーストラリア:オーストラリア政府は2024年3月より学生ビザの英語要件をIELTS5.5→6.0に引き上げるなど、英語力基準を強化する動きを見せています。また、移民ビザでも英語力の重要性は増しており、高得点者に有利なポイント配分が続いています。IELTS運営側も新たな施策として、一度の試験で期待したスコアに届かなかった場合に不足セクションのみ再受験できる「ワンスキル・リテイク (One Skill Retake)」制度を開始しました(国によって利用可否が異なりますが、オーストラリアでは一部ビザで結果が認められる動きがあります)。これにより、例えばリーディング以外は目標に達した受験者が、リーディングのみ再挑戦してスコアを引き上げることが可能になりました。

  • IELTS受験全般の最新トレンド:IELTSは紙筆試験に加えてコンピューター受験も普及が進み、結果の迅速なオンライン確認など利便性が向上しています。ただし、IELTS Online(自宅受験型)は現時点で移民申請用途には認められていません。試験結果の有効期限は基本的に2年間であるため、ビザ申請や出願時には有効期限切れにならないよう注意が必要です。また、各国のビザ制度や大学入学基準は変更される可能性があるため、志望先の公式情報を定期的にチェックし、最新の要件を把握しておくことが大切です。

練習問題(IELTS形式の問題例)

IELTSの出題形式に慣れることも高スコア取得には欠かせません。以下に、IELTSの各セクション(リーディング、ライティング、スピーキング)の問題例を紹介します。実際の試験より短いサンプルですが、どのような形式かを掴んでみましょう。

例題1: IELTSリーディング
次の短い文章を読み、設問に答えてください。

Passage: The rise of online learning platforms has significantly changed how students approach higher education. In recent years, many universities have started offering courses through Massive Open Online Courses (MOOCs), enabling learners worldwide to access quality education. This shift has led to debates on the effectiveness of traditional in-person education versus online learning.

Question: According to the passage, what is one effect of the growth of online learning platforms?

<small>解答: It has changed how students approach higher education (学生の高等教育への取り組み方が変化した)。</small>

例題2: IELTSライティング
以下のTask 2形式のライティング課題を読んで、自分ならどのように回答するか考えてみましょう。

Write about the following topic:
“Some people believe that studying abroad offers great advantages for students, while others argue that it also comes with significant challenges. Discuss both views and give your own opinion.

この課題では、海外留学の利点と問題点の両方について議論し、自分の意見を述べる必要があります。実際の試験では約250語のエッセイを英語で書きます。

例題3: IELTSスピーキング
スピーキングテストのPart2の課題例です。1分準備した後に2分程度スピーチする想定で内容を考えてみましょう。

Describe a teacher who has greatly influenced you.
You should say:

  • who the teacher is (was) and what subject they taught,

  • what made this teacher special or memorable,

  • what you learned from them,
    and explain how this teacher influenced your life or education.

このようなトピックについて、自分の経験を交えて英語でスピーチする練習をしてみてください。ポイントを箇条書きで準備し、時間内にまとまった話ができるようにすることが大切です。

スコアアップのコツ:効果的な対策と学習法

最後に、IELTSで目標スコアを達成するための効果的な学習法や対策のヒントを紹介します。

  • 出題形式に慣れる:IELTS特有の問題形式(例えばTrue/False/Not Givenの判断や、リスニングの地図問題など)に十分慣れておきましょう。公式問題集や過去問を使い、設問パターンと解き方を身につけることが重要です。

  • 弱点を分析して重点練習:リーディングは得意だがリスニングが苦手、というように自分の弱点を把握しましょう。公式模擬テストやオンラインの無料模試を受けて現状のバンドスコアを確認し、スコアの低いセクションに集中的に取り組みます。

  • 語彙力と表現力を強化:IELTSではアカデミックな語彙や言い換え表現が頻出します。毎日の学習で新出単語を覚え、エッセイで使える表現を蓄積しましょう。また、パラフレーズ(言い換え)力をつけることでリーディングとライティングの得点向上につながります。

  • 時間配分の練習:本番では各セクションに厳格な時間制限があります。リーディングでは約1時間で3文章を解く必要があり、時間との戦いになります。過去問演習では必ず時間を計って解き、制限時間内に全問に取り組む練習を繰り返しましょう。

  • スピーキングは録音して練習:スピーキング力向上には、自分の回答を録音して聞き返す練習が効果的です。Part2のトピックに沿って2分間話す練習をし、その録音をチェックして発音や流暢さ、構成を改善します。また、可能であればネイティブ話者や指導経験のある先生からフィードバックをもらいましょう。

  • 模擬試験で本番を想定:定期的に全セクションを通したフル模擬試験に挑戦し、本番さながらの環境で実力を試してみましょう。試験会場と同じように静かな環境でリスニングを解き、リーディング・ライティングも通しで行うことで、本番への耐久力と精神的な準備が整います。

  • 最新資料やプロの指導を活用:IELTSは出題傾向が大きく変わる試験ではありませんが、最新の模試や教材を使うことで直近のトピック傾向を把握できます。独学が難しい場合は予備校やオンライン講座でプロの指導を受けるのも有効です。スコアが伸び悩むセクションがあれば、経験豊富な講師に添削やアドバイスを依頼して弱点克服につなげましょう。

まとめ:必要スコアを知り、目標達成への第一歩を踏み出そう

海外留学・移住に必要なIELTSスコアの目安と国別要件について、主要国を中心に解説しました。国ごと・ビザごとに求められる英語力の水準は異なりますが、自分の目標とする進路に照らして「何点を目指すべきか」が明確になったのではないでしょうか。例えば、「イギリスの大学院に進学したいからIELTS7.0が必要」、「オーストラリア永住権には各7.0以上を取ろう」など具体的な目標設定ができます。

必要スコアがわかったら、あとは計画的な学習と反復練習でそのスコアに到達するのみです。本記事で紹介した練習問題学習Tipsも活用しながら、日々の勉強を積み重ねてください。IELTSは決して簡単な試験ではありませんが、正しい対策を続ければスコアは着実に向上します。そして何より、「留学して○○を学びたい」「家族で移住して新天地で生活したい」といったあなた自身の夢や目標が最大の原動力になるはずです。

最後に、IELTSで高スコアを達成することはゴールではなく、留学先の大学で学び、移住先の社会で活躍するためのスタートラインです。必要なスコアをクリアした先には、新たな世界での学びやキャリアが広がっています。ぜひ前向きにチャレンジを続け、夢の実現に向けて一歩ずつ前進していきましょう!

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