TEAPとは?大学入試で注目される英語4技能試験の全貌

TEAP

TEAPの概要と目的:なぜ大学入試で重要視されるのか

TEAP(Test of English for Academic Purposes)は、公益財団法人日本英語検定協会と上智大学が共同で開発した英語能力判定試験です 。この試験は、主に大学入試における英語外部試験としての活用を目的として設計されており、「読む・書く・話す・聞く」という英語の4技能を総合的に測定します 。   

TEAPの主要な目的は、「大学教育レベルにふさわしい英語力」を正確に評価することにあります 。具体的には、大学の講義を理解し、プレゼンテーションを行い、留学生と交流し、そして学術的なレポートを作成するなど、実際の大学生活で必要とされるアカデミックな英語運用能力が評価対象となります 。この共同開発という背景は、試験が単なる一般的な英語力測定に留まらず、日本の大学教育に特化したアカデミックな英語力を重視していることを示唆しています。そのため、志望校がTEAPのスコアを活用している場合、この試験に特化した対策は、単に英語力を向上させるだけでなく、大学入試における戦略的な優位性をもたらす可能性が高いと考えられます。  

試験の難易度は、英検の準2級から準1級レベル(CEFR A2-B2)に相当するとされており、受験者には高い英語力と集中力が求められます 。TEAPは合否判定ではなくスコア型試験であり、各技能が100点満点、合計400点満点で評価されます 。このスコアは2年間有効です 。TEAPがスコア型であり、さらに「技能別に最高点を組み合わせて提出できる」という特徴は、受験生にとって精神的な負担を軽減し、戦略的な学習計画を可能にする大きな利点です 。一度の試験で全ての技能が完璧でなくても、苦手な技能を次回の受験で強化し、その最高スコアを組み合わせることで、全体のスコアを向上させることが可能です。この仕組みは、学習のモチベーションを維持し、長期的な英語力向上にも寄与します。高校2年生からの計画的な受験が推奨されるのはこのためであり、大学側も受験生の総合的な努力と成長を評価する意図があると考えられます。  

TEAPとTEAP CBTの違い

TEAPには、紙ベースで実施されるTEAP(PBT)と、コンピューターを使用して実施されるTEAP CBTの2つの形式が存在します 。TEAP CBTは4技能(Reading, Listening, Writing, Speaking)のみの受験に対応しており、TEAPのように2技能(Reading, Listeningのみ)の受験はできません 。  

両者の大きな違いは、各技能の試験時間と問題数にあります。例えば、TEAPのリーディングは60問で70分ですが、TEAP CBTでは44問で65分と、問題数が少なく試験時間も短縮されています。また、ライティングもTEAPが2問で70分であるのに対し、TEAP CBTは4問で45分と、問題形式や時間配分が大きく異なります 。  

TEAPとTEAP CBTはそれぞれ異なる時期に実施されるため、これらを組み合わせることで、年間最大6回まで受験することが可能です 。この多数の受験機会は、受験生にとって非常に大きな利点です。試験形式に慣れるための「場数」を多く踏むことができるため、一度の試験で期待通りの結果が出なかった場合でも、すぐに次のチャンスに挑戦できます。特にスピーキングやリスニングのように「慣れ」が求められる技能においては、この豊富な受験機会がスコアアップに直結すると考えられます 。

しかし、TEAPとTEAP CBTで問題数や時間配分、さらにはライティングの設問数などが異なるという点は、単に英語力だけでなく「試験形式への適応力」も評価されることを意味します 。特にCBT形式に慣れていない受験者は、コンピューター操作や画面上での情報処理に戸惑う可能性があります。この形式の違いを認識し、両方の形式で練習を積むことが、本番でのパフォーマンスを最大限に引き出すために不可欠です。  

以下に、TEAPとTEAP CBTの試験形式を比較した表を示します。

【表1】TEAPとTEAP CBTの試験形式比較

項目 TEAP (PBT) TEAP CBT
Reading 問題数:60問 / 試験時間:70分 問題数:44問 / 試験時間:65分
Listening 問題数:50問 / 試験時間:約50分 問題数:35問 / 試験時間:35分
Writing 問題数:2問 / 試験時間:70分 問題数:4問 / 試験時間:45分
Speaking 問題数:4問 / 試験時間:約20分 問題数:5問 / 試験時間:25分
受験可能技能 4技能または2技能 (R&L) 4技能のみ
年間受験回数 年3回 年3回
合計受験回数 最大年6回 (TEAPとCBTの組み合わせ) 最大年6回 (TEAPとCBTの組み合わせ)

TEAPの試験形式と各技能の徹底解説

TEAPは、リーディング、リスニング、ライティング、スピーキングの4技能で構成されており、それぞれが大学教育で必要とされるアカデミックな英語力を多角的に評価します。

リーディング:速読と正確な理解が鍵

リーディングセクションは、試験時間70分で60問が出題されます 。内容は、学術的な文章から、掲示やEメールなどの実用的な文書まで多岐にわたります 。  

このセクションは以下のパートで構成されています 。  

  • Part 1:語彙・語法問題 (20問)
  • Part 2A:グラフ読み取り (5問)
  • Part 2B:掲示・Eメールなどの読み取り (5問)
  • Part 2C:短い英文の読み取り (10問)
  • Part 3A:長い文章の空欄穴埋め (8問)
  • Part 3B:長い英文の読み取り (12問、一部図表あり)

特にPart 3Bは文章量が非常に多く、学術的な内容が中心となるため、高度な単語力と速読力が求められます 。全体として、1問あたり1分強で解答する必要があり、速読力と正確な理解がこのセクションで高得点を獲得するための鍵となります 。リーディングセクションが学術的な内容や実用的な文書を多岐にわたって扱うことは、単語力だけでなく、大学で遭遇する可能性のある多様な英文形式に対応できる「読解の柔軟性」が求められることを意味します。このセクションは「時間との戦い」であるため 、各パートの時間配分を事前に決定し、速読スキルを徹底的に鍛えることが、高得点への直接的な道筋となります 。これは、単に英文を読むだけでなく、情報を効率的に処理する能力が評価されていることを示唆しています。  

 

リスニング:一発勝負の集中力と聞き取りのコツ

リスニングセクションは、約50分間で50問が出題されます 。このセクションの大きな特徴は、音声が一度しか流れないという点です 。

パート構成は以下の通りです 。  

  • Part 1A:短い会話の聞き取り (2人会話)
  • Part 1B:短い英文の聞き取り (アナウンスなど)
  • Part 1C:短い英文の聞き取り (図表付き)
  • Part 2A:長い会話の聞き取り (2人または3人)
  • Part 2B:長い英文の聞き取り (講義など)

出題されるトピックは、大学キャンパスでの日常会話、ミニ講義、プレゼンテーション、キャンパスアナウンスなど、大学生活に関連する内容が中心です 。音声はネイティブスピーカーの自然な速度で、イギリス英語やオーストラリア英語のアクセントが含まれることもあります 。設問の先読み、重要な情報のメモ取り、そして約50分間集中力を維持する能力が重要です 。リスニング音声が一度しか流れない上に、多様な英語アクセントが含まれることは 、単に聞き取る能力だけでなく、様々な音声環境への適応力が求められることを示唆しています。特に「聞き逃し」が許されない状況において、設問の先読みは 、次に何が来るかを予測し、重要な情報を効率的に拾い上げるための必須戦略です。これは、リスニングが単なる聴覚能力テストではなく、情報処理と予測のスキルも同時に評価していることを意味します。

ライティング:論理的な構成と表現力が問われる

 

ライティングセクションは、試験時間70分で2問が出題されます 。このセクションは、要約力と論理的なエッセイ構成力を評価します。  

  • Task A:課題文の要約 (1問)
    • 与えられた課題文(約250-300語程度)を約70語で要約する問題です 。ここでは、自分の意見を交えずに、客観的に文章の要点をまとめる力が問われます 。  
  • Task B:エッセイの要約と自分の意見の提示 (1問)
    • 2つの図表と2つの文章から情報を読み取り、それらを引用しつつ、自分の意見を約200語で述べるエッセイ問題です 。論理的な構成力、適切な語彙力、正確な文法力、そして要点と主張の分かりやすさが評価されます 。

Task Bには45〜50分を費やす時間配分が推奨されており、限られた時間内で複数の情報を統合し、説得力のある文章を構築する能力が求められます 。ライティングのTask A(要約)とTask B(意見記述エッセイ)の構成は 、大学で必要とされるアカデミックライティングの基礎力を直接的に評価するものです。Task Aでの「自分の意見を入れない」要約は 、客観的な情報整理能力を、Task Bでの「図表や文章からの引用」と「論理的な意見表明」は 、多角的な情報を統合し、説得力のある議論を構築する能力を測ります。これは、単に英文を書けるだけでなく、学術的な文脈で思考を整理し、表現する能力が重視されていることを示唆しています。  

スピーキング:面接官との対話で実力を示す

スピーキングセクションは、試験時間約20分で4問が出題され、面接官との1対1のインタビュー形式で実施されます 。入室から退出までの全てのやり取りが採点対象となります 。

パート構成は以下の通りです 。

  • Part 1:受験者の生活に関する質問 (CEFR A1レベル)
    • ウォームアップとして、受験者自身の趣味や学校生活など、個人的なことに関する質問が出題されます。
  • Part 2:ロールプレイ (CEFR A2レベル)
    • ある職業に就いている面接官に対し、受験者がトピックカードに沿って質問する形式です。
  • Part 3:1分間のスピーチ (CEFR B1レベル)
    • 与えられたテーマについて、賛成か反対かの意見を1分間で述べる問題です。
  • Part 4:質疑応答 (CEFR B2レベル)
    • Part 3のテーマに関連する質疑応答が行われます。環境問題や教育、経済など、幅広い社会問題が問われることが多いです。

各パートで求められる英語力のレベルが段階的に高まっていくのが特徴です 。評価基準には、発音、語彙の範囲と正確さ、流暢さ、一貫性、そしてやり取りの能力が含まれます 。スピーキングの各パートでCEFRレベルが段階的に上がることは 、TEAPが単語や文法の知識だけでなく、実際のコミュニケーション状況における応用力、即応性、論理的思考力を総合的に評価していることを示唆しています。Part 1のような個人的な質問から始まり、Part 3のスピーチ、Part 4の質疑応答へと進むにつれて、より複雑な思考と表現が求められます。これは、受験者が「人に伝える」という意識を持って、自信と落ち着きを持って話すことが 、採点官に良い印象を与え、スコアに影響を与える可能性があることを意味します。

練習問題例(Part 1:自己紹介系の質問) TEAPスピーキングのPart 1では、受験者の個人的なことに関する質問が出題されます。これは、自己紹介や日常の出来事について英語で話す練習が非常に有効であることを示唆しています 。  

  1. 自己紹介をしてください。  
  2. あなたの好きな国はどこですか。その理由を教えてください。
  3. 普段お昼に何を食べていますか。
  4. 自由時間があったら何がしたいですか?
  5. あなたの強みは何ですか。  

TEAPスコアアップのための効果的な対策と学習戦略

全体戦略:バランスの取れた学習と計画の重要性

TEAPは、大学入試において英語外部試験として活用される場合、4技能すべてに基準点が課される大学が多く、いずれか一つでも弱点があると不利になる可能性があります 。そのため、自身の得意・不得意を詳細に分析し、苦手な技能を重点的に補強しつつ、得意な技能は確実に得点源にすることが極めて重要です 。各技能が均等に100点満点で配点されるため、特定の技能を放棄して他の技能で補うという戦略は通用しません。全ての技能をバランスよく対策することが、高スコア獲得への第一歩となります 。

志望校のTEAP利用基準を事前に確認し、「総合〇点・各技能〇点以上」といった具体的な目標スコアを設定することが、学習の指針となります 。複数回の受験を計画することも重要です。TEAPは技能別に最高スコアを組み合わせて提出できる特性があるため 、高校2年生のうちに一度受験し、試験形式に慣れるとともに自身の弱点を把握しておくのが有効です 。高校3年生では、夏までに目標スコアをクリアすることを目指し、必要に応じて7月、9月、11月の試験を最大限に活用すると良いでしょう 。TEAPが大学入試で「出願資格」「得点換算」「試験免除」「加点」「判定優遇」「合否参考」など多岐にわたる活用方法があることは 、TEAPスコアが単なる英語力証明以上の、大学入試における強力な要素になり得ることを示唆しています。特に「技能別に最高点を組み合わせ提出できる」特性と複数回受験の機会を組み合わせることで 、受験生は自身の英語力のピークを戦略的に入試に合わせることが可能になります。これは、TEAP対策が単なる英語学習ではなく、大学合格に向けた総合的な受験戦略の一部として位置づけられるべきであることを意味します。

試験本番と同じ順序と時間配分で模擬演習を行うことは、集中力の配分や疲労度を予測する上で不可欠です 。各セクションの時間配分戦略を事前に決め、練習段階からタイマーを使用し、常に時間を意識した解答を習慣づけることが推奨されます 。また、マークシート記入の小分けや設問指示の確認など、基本的なケアレスミス対策も徹底することで、数点分の差を生み出すことができます 。  

各技能別対策:具体的な勉強法と高得点テクニック

単語・熟語

TEAPでは英検準2級から準1級レベルの語彙力が必要とされますが、特に難関大学レベルの単語は短文の穴埋め問題で出題される傾向があります 。他のセクションでは比較的難しい単語は出題されにくい傾向にあるため、英検2級レベルに絞って学習するのも有効な対策です 。  

文法

TEAPの試験で文法問題そのものは出題されませんが、長文の正確な理解やライティングで文法的な誤りがないようにするためには、文法知識が不可欠です 。高校1年生から2年生で学習する文法事項は最低限覚えておく必要があります 。

リーディング対策

リーディングは「時間との戦い」であるため、速読力の向上が必須です 。英文を早く読めるように鍛えるためには、大学入学共通テスト(旧センター試験)の過去問にある長文問題(特に論説文)を徹底的に読み解く練習が有効です 。文章全体を読む時間がなくても、設問が指す段落や文に焦点を当てて集中的に読むスキルを練習しましょう 。音読やシャドーイングも有効で、英語を英語の語順で処理する能力の向上に繋がります 。  

  • Part 1 (語彙・語法問題): 満点を目指し、頻出のアカデミック・時事語彙を重点的に覚えましょう 。  
  • Part 2A (グラフ読み取り): 比較的解答しやすいパートです。タイトルやラベルを素早く確認し、誤った選択肢を消去法で除く練習を積むと良いでしょう 。  
  • Part 3B (長い英文の読み取り): 最も難しいパートの一つです。設問の先読みと、該当箇所に集中して読む練習が効果的です 。  

リスニング対策

音声が一度しか流れないため、設問と選択肢の先読みが非常に重要です 。これにより、トピックや解答の予測が立てやすくなり、重要な情報を効率的に拾い上げることができます。メモ取りの練習も有効で、特に長い会話や講義では記憶の補助となります。ディクテーションを通じてメモ取りの速度と正確性を高めることが推奨されます 。 

  • Part 1C (図表付き問題): 得点源となりやすいパートです。図表のタイトルや項目を事前に確認する習慣をつけましょう 。  
  • Part 2A (複数話者による会話): 「誰が何を言っているか」を正確に追う練習が不可欠です 。  
  • シャドーイングやオーバーラッピングは、正しい発音やイントネーションを身につけ、リスニングのスタミナを養うのに非常に効果的です 。アメリカ英語だけでなく、イギリス英語やオーストラリア英語など、多様なアクセントに耳を慣らしておくことも重要です 。

ライティング対策

  • Task A(要約): 課題文の主要な論点と支持点を抽出し、具体例や引用を省いて約70語にまとめる練習をします。自分の意見は書かないことが鉄則です 。  
  • Task B(エッセイ): 「主張→理由→具体例→結論」といったPREP法のような論理的な構成を意識し、段落分けを明確にしましょう 。複数の情報源(図表、文章)から必要な情報を素早く読み取り、それを自分の意見の根拠として引用する練習が重要です 。本文中の表現をそのまま使うのではなく、言い換え(パラフレーズ)を積極的に行い、語彙力と表現の幅を示すことが求められます 。定期的に英文を書き、第三者からの添削を受けることで、客観的な視点から弱点を把握し、改善に繋げましょう 。  

スピーキング対策

  • Part 1 (受験者の個人的なことに関する質問): 趣味や学校生活、将来の夢など、自分に関するよくある質問への答えを事前に用意し、暗記ではなく自然に話せるように練習します 。  
  • Part 2 (ロールプレイ): トピックカードから質問事項を素早く疑問文に変換する練習が重要です。与えられた30秒の準備時間を有効活用しましょう 。
  • Part 3 (1分間スピーチ): 30秒の準備時間で「賛成か反対か→理由1つ→結論」といったシンプルな構成を組み立てる練習をします。途中で詰まっても沈黙せず、知っている表現で話し続けることが大切です 。  
  • Part 4 (質疑応答): 質問されたらすぐに自分の意見を述べ、その後に理由や具体例を1~2文で加えることを心がけましょう。社会問題など幅広いトピックに対応できるよう、日頃から意見を形成する練習が重要です 。
  • 発音や流暢さも重要ですが、完璧な発音よりも「クリアに伝える」ことを意識しましょう。もし聞き取れなくても、「Pardon me?」のように丁寧に聞き返すことは減点されません 。オンライン英会話などを活用し、実践的な面接練習を積むことも非常に効果的です 。  

リーディングやリスニングのようなインプット技能と異なり、ライティングとスピーキングは「アウトプット」技能であり、日本人が特に苦手とする傾向があります 。この苦手意識を克服するには、単に知識を蓄えるだけでなく、「英語で話す・書く習慣をつける」という能動的な学習が不可欠です 。独り言を英語で言う、英語で日記をつける、オンライン英会話で積極的に話すといった日常的なアウトプットの習慣化は、試験本番での瞬発力と表現の幅を格段に向上させます。これは、試験対策が日常生活に根ざした学習へとシフトすることの重要性を示唆しています。  

TEAPと他の主要な英語4技能試験との比較

TEAPは大学入試に特化したアカデミック英語能力判定試験ですが 、他にも様々な英語4技能試験が存在します。それぞれの試験には異なる目的と測定方法があり、受験者は自身の目標に合わせて最適な試験を選択することが重要です。

  • 英検 (実用英語技能検定):
    • 日本で最も知名度が高く、多くの大学入試で活用されています 。
    • 級ごとに合否判定があり、大学入試では2級以上が利用されることが多いです 。
    • 受験料はTEAPよりも安価な傾向にあります 。CEFRとの対応も明確に示されています 。
  • TOEIC S&W (Speaking & Writing Tests):
    • ビジネスシーンでの英語コミュニケーション能力を測定する目的が強い試験です 。  スピーキング約20分、ライティング約60分で構成され、合計約80分間です 。
    • 採点は、ETSの訓練を受けた複数のヒューマンレイター(採点者)によって行われ、客観性と信頼性が確保されています 。
    • 企業での導入事例も多数あり、双日株式会社や富士通株式会社などが活用しています 。
    • 受験料は10,450円(税込)です 。CEFRレベルへの換算も可能です 。  
  • VERSANT (ヴァーサント):
    • AIによる自動採点システムを採用しており、約20分と短時間で受験でき、結果が即座に判明します 。
    • 「発音」「流暢さ」「語彙」「文章構成」の4つの観点からスピーキング力を評価します 。
    • ビジネスでの活用事例が多く、楽天、日本たばこ産業(JT)、ヒルトングループなどが採用しています 。
    • 受験料は5,500円~7,700円程度です 。CEFRとの相関も示されています 。
  • PROGOS (プロゴス):
    • 「仕事で使える」英語スピーキング力を測定することに特化したAI自動採点システムです 。  受験時間は約20分で、結果は最短2~3分で返却されます 。  
    • 国際指標のCEFRに完全準拠しており、「表現の幅」「正確さ」「流暢さ」「やりとり」「一貫性」「音韻」の6つの評価基準でスピーキング力を測ります 。  
    • 企業や教育機関での導入が進んでおり、アマゾンジャパン合同会社やパナソニックエレクトリックワークス社などが活用しています 。  
    • アプリ版では1日1回無料で受験可能であり、問題形式に慣れる練習に最適です 。受験料は1受験550円(税込)とリーズナブルです 。  

各英語4技能試験がそれぞれ異なる目的や測定方法を持っていることは 、受験生や保護者が「なぜ英語力を測定したいのか」という目的を明確にすることが、最適な試験選択の第一歩であることを示唆しています。例えば、大学入試であればTEAPや英検、ビジネスであればTOEIC S&WやPROGOS、短時間で手軽にスピーキング力を測りたいならVERSANTなど、目的に応じた「使い分け」が最も効率的です。これは、単に「英語ができる」だけでなく、「どの場面で、どのような英語力が求められるか」を理解することの重要性を浮き彫りにします。

VERSANTやPROGOSがAI自動採点である一方 、TOEIC S&Wはヒューマン採点を採用している点は 、採点基準や対策アプローチに影響を与えます。AI採点は客観性や即時性に優れる反面、人間のようなニュアンスや臨機応変な対応の評価には限界がある可能性があります。対してヒューマン採点は、より総合的なコミュニケーション能力を評価できる可能性がありますが、結果返却に時間がかかります。この違いを理解することで、受験者は自身の強みがどちらの採点方式でより評価されやすいかを考慮し、対策を調整することができます。例えば、AI採点では「時間いっぱい話す」「無言を避ける」といったテクニックが有効であるのに対し 、ヒューマン採点ではより自然な対話が重視される傾向があるかもしれません。  

以下に、主要な英語4技能試験を比較した表を示します。

【表2】主要英語4技能試験の比較

試験名 開発・運営団体 主な目的・対象者 試験形式 試験時間 (合計) 受験料 (税込) 結果返却までの期間 CEFR対応 企業・大学活用事例 (代表例)
TEAP 日本英語検定協会、上智大学 大学入試向けアカデミック英語力測定 紙 (PBT)、面接 約3時間強 4技能: 15,000円 2技能: 6,000円 R/L: 約2週間 W/S: 約3週間 A1-C1     上智大学、早稲田大学、法政大学、明治大学など    
英検 日本英語検定協会 幅広い年齢層の英語力測定、大学入試・就職 紙、面接 (S-CBT/S-InterviewはPC) 2級: 約117分 準1級: 約128分     2級: 5,800円 準1級: 6,900円    約3週間 A1-C1     多くの大学入試、企業での英語力評価    
TOEIC S&W IIBC (ETS) ビジネス英語コミュニケーション能力測定 PC (テストセンター) 約80分 (S:20分, W:60分)     10,450円     約3週間     A1-C1     双日、富士通、資生堂、楽天など    
VERSANT Pearson 実践的なスピーキング力測定 (AI採点) PC/スマホ (オンライン) 約20分 (S)     5,500円~7,700円     即時~24時間以内     A1-C2     楽天、JT、ヒルトングループ、アメリカ国防総省など    
PROGOS プロゴス (レアジョブ) 「仕事で使える」スピーキング力測定 (AI採点) PC/スマホ (オンライン) 約20分     550円 (アプリ版は無料)     最短2~3分     A1-C2     アマゾンジャパン、パナソニック、関西電力など    

 

TEAPスコアとCEFRの関連性

TEAPのスコアは、国際的な言語能力の共通参照枠であるCEFR(Common European Framework of Reference for Languages)に紐づけられています 。CEFRは、言語運用能力をA1(初級)からC2(熟達)までの6段階で評価する世界共通の標準であり、TEAPもこの基準に沿って各技能のレベルを判定します 。  

TEAP(PBT)のCEFR目安スコアは、A2が135-224点、B1が225-308点、B2が309-374点、C1が375-400点とされています 。一方、TEAP CBTのCEFR目安スコアは、A1が320-620点、A2が235-415点、B1が420-595点、B2が600-795点、C1が800点とされています 。

CEFRレベルは、英検、IELTS、TOEFL iBT、VERSANT、PROGOSなど他の主要な英語試験とも対照表が示されており、自身の英語レベルを国際基準で把握するのに役立ちます 。TEAPスコアがCEFRに連動していることは 、受験生が自身の英語力を日本国内の基準だけでなく、国際的な標準で客観的に把握できることを意味します。これにより、「A2レベルだから、次はB1を目指す」といった具体的な学習目標を設定しやすくなり、また、将来的な留学や海外でのキャリアを視野に入れる際にも、自身の英語力がどの程度通用するのかを予測する手がかりとなります。CEFRの各レベルに記述された「Can-Do Statement」(何ができるか)は、学習の具体的なロードマップとなり、モチベーション維持にも繋がります。  

以下に、TEAPスコアとCEFRレベルの対照表を示します。

【表3】TEAPスコアとCEFRレベルの対照表

CEFRレベル TEAP (PBT) スコア範囲 TEAP CBT スコア範囲 英検級の目安
C1 (上級) 375-400     800     1級    
B2 (中上級) 309-374     600-795     準1級~1級    
B1 (中級) 225-308     420-595     2級~準1級    
A2 (基礎) 135-224    
235-415    
準2級~2級    
A1 (初級) 320-620    
3級~準2級    

※上記のCEFR対応はあくまで目安であり、公式に保証されるものではありません 。  

TEAP受験の申し込み方法と年間スケジュール

受験料、試験日程、申込手順、会場について

TEAPの受験を検討する際には、受験料、試験日程、申し込み手順、そして会場に関する情報を把握しておくことが重要です。

  • 受験料: TEAPおよびTEAP CBTの4技能パターンは、いずれも15,000円(税込)です。TEAPには2技能パターン(ReadingとListeningのみ)もあり、その場合の受験料は6,000円(税込)となります 。  
  • 試験日程: TEAPは年に3回、おおよそ7月、9月、11月に実施されます。TEAP CBTも年に3回、おおよそ6月、8月、10月に実施されます 。これら2つの形式を組み合わせることで、年間最大6回まで受験することが可能です 。  
  • 申込方法:
    1. TEAP IDの登録: まず、TEAP IDの新規登録が必要です。この際、カラーの顔写真データ、メールアドレス、TEAP IDとして利用する半角英数字、セキュリティ用の質問を用意します。氏名や生年月日など、一度登録すると変更できない重要情報には特に注意が必要です 。  
    2. ログイン: 作成したTEAP IDでTEAPウェブサイトにログインします 。
    3. 受験日・受験地域・受験パターンを選択: 希望する試験日、受験地域、そして4技能または2技能の受験パターンを選択します 。
    4. 会場を選択: 試験会場を検索し、希望する会場を選択します。各会場の座席数には限りがあるため、早めの申し込みが推奨されます 。  
    5. 支払方法の選択: クレジットカード決済、またはコンビニ・郵便局ATM支払いが選択可能です。支払い期限が設定されているため、期日までに支払いを完了させる必要があります 。  
    6. 申込完了: 申込登録と受験料の支払いが完了すると、「TEAP(またはTEAP CBT)お申し込み完了のお知らせ」メールが登録したメールアドレスに送信されます 。  
  • 受験票: 受験票は郵送されません。TEAPウェブサイトにログインし、自身で印刷する必要があります 。  持ち物: 試験当日は、印刷した受験票、有効な顔写真付き身分証明書(学生証、パスポートなど)、HBの黒鉛筆、消しゴムを持参する必要があります。スマートウォッチや電子時計の使用は禁止されています 。  
  • 結果返却: ReadingとListeningの結果は試験後約2週間、WritingとSpeakingの結果は約3週間後にオンラインで確認できます。紙の成績表は試験後約5週間後に郵送されます 。  

TEAPとTEAP CBTが年間複数回実施され、最大年6回受験可能であることは 、受験生にとって非常に柔軟な受験計画を立てられることを意味します。しかし、大学入試の出願時期に間に合わせるためには、逆算して受験日と申し込み期間を把握しておくことが不可欠です。特に、成績提出期限を考慮し、高校3年生の夏までに目標スコアをクリアするような 戦略的なスケジュールを立てることが、入試成功の鍵となります。これは、単に英語力を高めるだけでなく、受験プロセス全体のマネジメント能力も求められることを示唆しています。  

まとめ:TEAPを攻略して志望校合格を目指そう!

TEAPは、大学入試における英語外部試験として、その重要性を増しています。この試験は、公益財団法人日本英語検定協会と上智大学が共同で開発したもので、大学教育レベルにふさわしいアカデミックな英語運用能力を「読む・書く・話す・聞く」の4技能にわたって総合的に測定することを目的としています。

TEAPの大きな特徴は、スコア型試験であり、各技能の最高スコアを組み合わせて大学に提出できる点にあります。この特性を最大限に活用するためには、自身の英語力の強みと弱みを正確に把握し、苦手な技能を重点的に強化しつつ、得意な技能で確実に得点を稼ぐというバランスの取れた学習戦略が不可欠です。また、TEAPとTEAP CBTという2つの形式が存在し、それぞれ異なる試験日程で実施されるため、年間最大6回の受験機会を戦略的に利用し、試験慣れを積むことも高スコア獲得への重要な要素となります。

各技能にはそれぞれ特有の問題形式と対策が存在します。リーディングでは速読力とアカデミックな内容への慣れ、リスニングでは一度しか流れない音声に対する集中力と多様なアクセントへの対応力、ライティングでは客観的な要約力と論理的なエッセイ構成力、そしてスピーキングでは面接官との対話における即応性と表現力が問われます。これらの技能別対策に加え、日頃から英語でのアウトプット(話す・書く)を習慣化することが、総合的な英語力向上に繋がります。

TEAPスコアは、国際的な言語能力の共通参照枠であるCEFRに紐づけられており、自身の英語力を世界レベルで客観的に把握する指標としても機能します。これにより、具体的な学習目標を設定し、将来的な留学やキャリア形成にも役立てることができます。

他の主要な英語4技能試験(英検、TOEIC S&W、VERSANT、PROGOS)と比較検討し、自身の目標(大学入試、就職、留学など)に最も適した試験を選択することも重要です。それぞれの試験の目的、形式、採点方法を理解し、自身の強みが最も活かせる試験を選ぶことで、学習の効率を高めることができます。

TEAPは、単なる英語力測定に留まらず、大学入試における強力な戦略的ツールとなり得ます。計画的な学習と受験を通じてTEAPを攻略し、志望校合格という目標を達成することを期待します。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で