TOEICのリスニングセクションで思うようにスコアが伸びず悩んでいませんか?リスニングが苦手な受験者は多く、英語の音に慣れていないと一度きりの音声を聞き取るのは簡単ではありません。本記事の目的は、TOEICリスニングセクションの特徴を正しく理解し、効果的な対策法や学習法でスコアアップを実現することです。リスニング力を鍛えることで、TOEIC全体の点数向上はもちろん、ビジネス英語のコミュニケーション力向上にもつながります。苦手意識を克服し、リスニングを得点源に変える戦略を一緒に見ていきましょう。
TOEICリスニングセクションの構成と出題傾向
まず、TOEIC Listeningセクションの基本構成を押さえておきます。リスニングセクションは約45分間で**全100問(Part1~Part4)**が出題され、音声を聞いて解答します。各パートの内容は次の通りです。
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Part 1: 写真描写問題(6問) – テスト冊子に掲載された写真を見て、その状況を表す英文が4つ放送されます。最も写真に合致した描写を選ぶ問題です。
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Part 2: 応答問題(25問) – 質問や発言を聞き、それに対する適切な応答を選ぶ問題です。質問文と選択肢は音声のみで流れ、印刷されていません。
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Part 3: 会話問題(39問) – 2人(時には3人)の英語の会話を聞き、その内容についての設問に答える問題です。設問と選択肢はあらかじめ問題冊子に印刷されています。
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Part 4: 説明文問題(30問) – アナウンスや案内、スピーチなど1人話者の英語を聞き、その内容についての設問に答える問題です。こちらも設問と選択肢が問題用紙に印刷されています。
近年のTOEICリスニングではより実践的な英語が重視されており、2016年の新形式以降、会話問題で3人の会話が登場したり、会話や説明文に関連した図や表が提示される設問も加わりました。また、音声の話者の国籍も多様で、アメリカ英語だけでなくイギリス、オーストラリアなど様々な英語のアクセントが含まれます。こうした出題傾向に対応するには、日頃から色々な話し手の英語に触れておくことが大切です。
Tips: TOEICリスニングのパート構成や出題形式を事前に理解しておくと、本番で「次はどんな問題だろう?」と戸惑うことがなくなります。それぞれのパートで何が問われるか把握し、時間配分の目安を掴んでおきましょう。
リスニングとリーディングの違いとは?求められるスキルの違い
TOEICではリスニングとリーディングの2セクションがありますが、両者では求められるスキルに明確な違いがあります。リスニングは流れてくる英語の音声をリアルタイムで理解する力が問われ、リーディングは紙面上の英文を読み解く力が問われます。
リスニングセクションでは、一度きりの音声から情報を聞き取る集中力と瞬発的な理解力が求められます。音の連結や省略、イントネーションから意味を汲み取る能力も重要です。特にTOEICのリスニングでは、次々に流れる会話やアナウンスの要点を逃さず把握する素早い処理能力がカギとなります。聞き逃しても後戻りはできないため、その場で内容を推測しながら聞き進める度胸も必要です。
一方、リーディングセクションでは、英文を正確に読み取る読解力や文法・語彙力が問われます。制限時間内に多くの文章を読む必要があるため、速読力も求められます。ただし、リスニングと異なり、文章は目で見返すことができるため、わからない部分は前後関係から推測したり、後で再確認したりする余裕が持てます。極端に言えば、リーディングは蓄積した知識(単語力・文法知識など)の勝負であり、リスニングはその場の瞬間的な対応力の勝負と言えるでしょう。
実際、日本人受験者の平均スコアを見てもリスニングの方がリーディングより高くなる傾向があります(例えば2023年の平均スコアはリスニング約335点、リーディング約278点)。これは、多くの人にとってリーディングよりもリスニングの方が取り組みやすいことを示唆しています。しかし、裏を返せば普段英語を耳にする機会が少ない人にとってはリスニングが大きな弱点にもなり得ます。Tips: リスニングが苦手な場合でも適切な練習を積めばスコアは必ず伸ばせます。その際、リーディングとは異なるアプローチが必要です。英語の音に慣れるトレーニングや、聞いたそばから内容を理解する訓練を重ね、リスニング特有のスキルを伸ばしていきましょう。
パート別リスニング対策(Part1〜4)
TOEICリスニングは4つのパートに分かれており、それぞれ問題形式が異なるため、パート別の対策が有効です。ここではPart1からPart4までの特徴と攻略法を紹介します。
Part 1: 写真描写問題の対策
Part1では1枚の写真に対し4つの英文が1度ずつ読まれ、その中から写真を最もよく描写している選択肢を選びます。比較的易しいパートと言われますが、確実に得点するために次のポイントを押さえましょう。
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写真の状況を把握する: 音声が流れる前に写真の内容を観察し、「誰が」「何をしているか」をイメージしておきます。人物が写っている場合は人数や動作、表情に注目し、人物以外の場合は物の配置や状況を確認しましょう。
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細部と描写の一致に注意: 放送される英文の細かな部分が写真と一致しているか注意深く聞き取ります。特に前置詞(on, under, above など)や数・色などが写真と合っているかが重要です。「机の上に本が置いてある」のように位置関係を正しく描写している文が正解となるため、細部まで聞き逃さないようにしましょう。
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最後まで音声を聞く: 最初の一文で「これだ!」と思ってもすぐに答えを決めず、必ず最後の選択肢まで聞きましょう。早とちりして写真と一致しない選択肢を選んでしまうミスを防ぐためにも、全ての文を聞いてから判断する習慣をつけることが大切です。
Part 2: 応答問題の対策
Part2では短い質問文または発言文に対して、3つの応答が音声で読まれます。その中から最も適切な応答を選ぶ形式です。選択肢が文章として印刷されていないため瞬発力が求められるパートです。
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冒頭の語に集中する: 質問文の最初の言葉(疑問詞や助動詞など)を聞き逃さないようにしましょう。例えば “When” で始まれば時間について尋ねている可能性が高く、その場合は応答も時刻や日付を含む内容が正解になりやすいです。冒頭をしっかり捉えることで質問の意図を素早く掴めます。
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質問の意図を考える: 音声を聞きながら「この質問に対してあり得る答えは何か?」と予測を立てましょう。Yes/Noで答える疑問文なら肯定・否定だけでなく具体的な回答が返ってくることも多いです。また依頼や提案に対する応答では “Sure.” や “I’d be happy to.” のように承諾するフレーズが正解になるなどパターンがあります。質問の種類ごとの定型表現に慣れておくと即座に反応しやすくなります。
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紛らわしい音に注意: Part2では質問に出てきた単語と音が似ている単語を含む不正解選択肢が頻出します(例:「メールを送りましたか?」に対して “No, I haven’t maled him.” など)。聞いた単語につられて安易に選ばず、質問に対して論理的に合った応答かを考えて判断しましょう。
Part 3: 会話問題の対策
Part3では二人以上の会話を聞き、その内容についての質問に答えます。1つの会話につき3問ずつ出題され、問題冊子に設問と選択肢が書かれているので、先読みが攻略のカギとなります。
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設問を先読みする: 音声が流れる前に、その会話に対応する設問文と選択肢に目を通しておきましょう。何を問われるかを把握しておけば、会話を聞きながら必要な情報を意識的に拾うことができます。特に人名や日時など具体的な情報を問う問題では、選択肢から予測を立てておくと聞き逃しが減ります。
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会話の概要を掴む: 会話が始まったら、冒頭部分で話者たちの状況(例えば職場なのか顧客との電話なのか)や話題を把握しましょう。登場人物が複数いる場合は、誰が何の役割かにも注意を払い、発言の意図を追います。会話中に “What does that mean?” のようなやり取りがあれば、話者の意図を汲み取る問題が出るサインです。
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読み上げのペースに慣れる: 会話音声は比較的ナチュラルなスピードで進みます。途中で聞き取れない部分があっても立ち止まらず、次の発言に集中しましょう。ひとつの設問で答えを迷っていると、次の設問に必要な情報を聞き逃してしまいます。普段から模擬音声を使い、音声に合わせて内容を理解する訓練を積んでおくと安心です。
Part 4: 説明文問題の対策
Part4ではアナウンスやスピーチなど1人話者のまとまった英語を聞き、その内容に関する質問に答えます。こちらも各トークにつき3問が出題されます。長めの独白形式ですが、ポイントを押さえれば効率よく理解できます。
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設問を先にチェック: Part3同様、音声が流れる前に設問文に目を通し、何を聞き取ればよいかを把握しておきましょう。例えば「話者の目的は何か?」という設問があれば、冒頭部分で話者が述べる目的に集中できます。
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導入に注意する: 説明文の冒頭部分には場面設定や目的が含まれることが多くなっています。「Thank you for coming today.」で始まればプレゼンや会議の挨拶だと分かるように、出だしを聞き逃さず状況をイメージしましょう。状況が掴めると後の内容理解が楽になります。
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重要情報を聞き逃さない: トーク全体を通して、日時・場所・数量など重要な事柄はメモを取るつもりで頭に刻みます(実際の試験ではメモは取れませんが、その意識で集中するという意味です)。質問で問われやすいポイントにアンテナを張り、数字や固有名詞は特に注意深く聞き取ります。また話者のトーンや言い回しから暗示される情報(例えば謝罪の言葉があれば何かトラブルがあった等)にも気を配りましょう。
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様々な話者の英語に慣れる: Part4では話者の性別やアクセントも様々です。アメリカ英語以外の発音にも日頃から触れておくことで、本番で戸惑うことが少なくなります。イギリス英語のニュースを聞いたり、オーストラリア英語の教材を試してみたりして耳を慣らしておくと良いでしょう。
効果的な勉強法(シャドーイング、ディクテーションなど)
TOEICリスニングのスコアアップには、闇雲に問題を解くだけでなく効果的な学習法を取り入れることが近道です。ここではリスニング力向上に役立つ主な勉強法を紹介します。
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シャドーイング: 英語の音声を聞き、少し遅れて影のように追いかけて発話するトレーニングです。音声を真似て声に出すことで、英語の発音・リズムに慣れるだけでなく、英語を聞いてすぐに理解し、口に出す回路を鍛えることができます。TOEIC公式問題集の音声や英語のニュースを素材に、1日10分でも継続して行うと効果的です。最初は難しく感じますが、短いセンテンスから始めて徐々に長くしていきましょう。
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ディクテーション: 英語音声を書き取りする練習です。聞こえた内容を一言一句漏らさず紙に書き出すことで、聞き取れない音や弱点を可視化できます。例えば聞き取れなかった単語を後でスクリプトで確認すれば、自分の聞き逃しパターン(例えば短縮形や連結音に弱い等)がわかるでしょう。ディクテーションは時間がかかりますが、その分細部まで注意を払う訓練になり、リスニング力の底上げに役立ちます。
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音読とオーバーラッピング: 音読は英文のスクリプトを見ながら声に出して読む練習で、リスニング教材のスクリプトで行うと効果的です。正しい発音を意識しながら音読することで、自分の中の英語の音のイメージを強化できます。音声と同時にスクリプトを読み上げるオーバーラッピングもおすすめです。ネイティブスピーカーの話すスピードや抑揚に合わせて発声することで、英語の音とリズムを体に染み込ませることができます。
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公式問題集の活用: TOEIC対策には公式問題集や信頼できる模擬問題を繰り返し使うことも重要です。実際の試験と同じ音声スピード・話者で練習することで本番のリスニングに慣れることができます。模試形式で通しで解いてみて時間配分や集中力を養い、解いた後は必ずスクリプトを読んで内容を確認しましょう。聞き取れなかった表現や単語はチェックして、次回までに理解しておくと着実に力がついていきます。
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語彙力の強化: 最後に地味ですが単語力の向上もリスニングスコアアップには欠かせません。知らない単語ばかりではいくら耳を澄ましても理解はできません。特にTOEIC頻出のビジネス英語の語彙は集中的に覚えておきましょう。例えば「expire(期限が切れる)」や「reschedule(予定を変更する)」など、リスニングで登場しやすい単語・フレーズを押さえておくと、本番でも聞き取ってすぐ意味が取れるようになります。
実践リスニング問題(MP3音声付き)
ここで、実際のTOEIC形式のリスニング問題を1問解いてみましょう。まずは女性の声の音声を聞いて質問に答えてみてください。
音声スクリプト(アナウンスの例):
Good morning, everyone. I have an important update regarding today’s workshop schedule. The keynote speech, which was originally set to begin at 9:30, will now start at 10:00 due to a technical issue. We apologize for the inconvenience and appreciate your understanding. Thank you.
設問: What is the speaker mainly announcing?
選択肢:
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(A)A delay in the start time of an event
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(B)A cancellation of the workshop
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(C)A change of venue for the event
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(D)An addition of a new speaker
正解: (A)イベント開始時間の遅延(スケジュール変更)です。
解説: 音声の中で話者は「基調講演を9時30分開始から10時開始に変更する」と述べています。これはイベントの開始時間が遅れること、すなわちスケジュールの変更を告知しているとわかります。他の選択肢であるイベントの中止や会場の変更、新しい講演者の追加については言及されていません。したがって正解は(A)となります。
このように、リスニングでは話されている内容の要点を正確に聞き取り、設問の意図に合った選択肢を選ぶことが求められます。日頃の練習でも、音声を聞いたら自分で内容を要約してみるクセをつけると、本番でも焦らず対処できるでしょう。
リスニング力を高めるための日常習慣・Tips
リスニング力向上の秘訣は、日々の習慣に英語を取り入れ、耳を慣らす時間を継続的に確保することです。以下に、忙しい中でも実践しやすいリスニング強化の習慣とコツを紹介します。
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毎日英語を聞く: 毎日の生活の中で必ず英語の音声に触れる時間を作りましょう。通勤・通学やスキマ時間に英語のポッドキャストやニュースを流すだけでも効果があります。大切なのは「1日も欠かさず続ける」ことです。
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英語モードの時間を作る: 一定時間、「日本語禁止」で英語だけを聞く・使う環境を自分に課してみましょう。例えば朝の30分間は英語の音声を聞きながら支度をする、移動中は日本語の音楽ではなく英語のラジオ番組を聞くといった工夫です。英語脳に切り替える時間を作ることで、徐々に英語を英語のまま理解できるようになります。
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ビジネス英語に触れる: TOEICはビジネスシーンが題材ですので、ニュースもビジネス英語のものを積極的に聞いてみましょう。BBCやCNNのビジネスニュース、ビジネス関連の英語ポッドキャストなどは語彙強化にもなり一石二鳥です。最初は難しく感じても、繰り返し聞くことで専門用語や言い回しにも慣れていきます。
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映像教材を活用する: 音声だけで集中するのが難しい場合は、英語のドラマや映画に英語字幕を付けて視聴する方法も有効です。映像の助けで内容を掴みやすく、楽しみながらリスニング力を鍛えられます。慣れてきたら字幕を外して聞き取る挑戦もしてみましょう。
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アウトプットも取り入れる: リスニング力はインプットだけでなくアウトプットと組み合わせると伸びやすくなります。聞いたフレーズを真似して声に出す、シャドーイングを日課にする、簡単な英語日記をつけて自分で読み上げてみる等、耳と口を連動させる習慣をつけましょう。発音練習をすると、自分が音の変化に気づけるようになり、聞き取りにも好影響があります。
まとめ:リスニングを得点源に変える戦略
TOEICリスニングセクションは正しい対策を行えば、大きなスコアアップが期待できる分野です。この記事では、リスニングとリーディングの違いを踏まえ、パート別の攻略法や効果的な勉強法、そして日常でできるリスニング習慣をご紹介しました。
最初は聞き取れなかった英語も、継続的なトレーニングによって少しずつ聞き取れる部分が増えていきます。リスニングを得点源に変える戦略は、一朝一夕で成果が出る魔法ではありませんが、確実に力を伸ばす王道の方法です。苦手意識を捨て、ここで紹介した対策法を実践してみてください。リスニング力の向上はTOEICのスコアアップだけでなく、実際のビジネス英語のコミュニケーションにも役立つ貴重な財産になります。コツコツと続けることで、きっとリスニングセクションがあなたの強みへと変わっていくでしょう。今日からぜひチャレンジを始めて、目標スコアの達成に一歩ずつ近づいていきましょう!