はじめに:TOEICの重要性とスコアアップの目的
TOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)は、大学生や社会人の英語力を客観的に示す指標として非常に重要な試験です。日本では年間250万人以上が受験する、最も人気のある英語資格試験の一つです。就職活動や社内昇進でもTOEICスコアの提出を条件とする企業が増えており、「TOEICは必須の資格になった」とまで言われています。実際、英語力をアピールしたいなら平均点をやや上回る600点以上は欲しいというのが一般的な目安です。
スコアアップの目的は人それぞれですが、多くの場合は「就職・転職で有利になる」「社内評価や昇進の要件を満たす」「ビジネスで通用する英語力を身につける」などが挙げられます。企業のグローバル化が進む中、新入社員にも業務上で最低限のコミュニケーションが取れる英語力が求められており、企業が新入社員に期待するTOEICスコアはおおむね425~645点程度と報告されています。TOEICで高得点を取れる人材はそれだけで海外取引先とのコミュニケーション戦力になるため、800点以上のスコアは就職・昇進で強力な武器となります。本記事では、TOEICの概要から各スコア帯のレベル感、効果的な勉強法、企業が求めるスコア基準までを詳しく解説します。TOEICスコアアップを目指す皆さんの目標設定と学習計画の参考になれば幸いです。
TOEICとは?試験概要と出題形式
TOEIC(L&R)テストは英語によるコミュニケーション能力を測るための試験で、Listening(聞く)とReading(読む)の2技能について合計10~990点のスコアで評価されます。試験時間は約2時間(Listening 45分・Reading 75分)で、問題数はリスニング100問+リーディング100問の合計200問です。各設問はマークシート方式の選択問題で構成され、受験者は音声と文章の両方に対応する総合力が求められます。以下にTOEIC L&Rテストの基本構成をまとめます。
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リスニングセクション(100問/45分) – Part1~4
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Part1(写真描写):写真を見て最も適切な説明文を選ぶ問題(6問)
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Part2(応答問題):質問や発言に対する応答を選ぶ問題(25問)。このパートのみ選択肢が3択になります。
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Part3(会話文):2~3人の会話を聞き、印刷された設問に答える問題(39問。1会話につき3問×13会話)。グラフィック(図表)問題や意図問題なども含まれます。
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Part4(説明文):アナウンスやナレーションなどのミニトークを聞き、設問に答える問題(30問。1トークにつき3問×10トーク)。
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リーディングセクション(100問/75分) – Part5~7
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Part5(短文穴埋め):不完全な短文の空所に入る適切な語句を選ぶ文法・語彙問題(30問)。文法や品詞の基礎知識が問われ、品詞問題の出題率が高い傾向があります。
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Part6(長文穴埋め):メールや記事など1つの文章中の空所を埋める問題(16問:4空所×4文章)。空所補充に加え、文章全体の文脈把握や1文挿入問題も含まれます。
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Part7(読解問題):1つまたは複数の文書を読んで設問に答える読解問題(54問)。シングルパッセージ(単一文書)29問とマルチパッセージ(複数文書)25問で構成され、内容はメール、広告、通知、記事、チャットなど多岐にわたります。リーディング全体の半数以上を占める重要パートですが、文章量も多く高速な読解力が求められます。
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TOEIC L&Rテストは以上7つのパートから構成され、全パートを2時間で解き切る必要があります。音声は一度しか流れないため、リスニング中は先読みをしつつ聞き逃さない集中力が大切です。リーディングでは時間配分との戦いになるため、各パートの問題形式と出題傾向を把握し、効率よく解答するテクニックが要求されます。なおTOEICはスコアによる評価で合否はありません。各設問の難易度に応じてスコアが算出されるため、同じ正答数でも実施回によってスコアが若干異なることがあります。990点満点中どのくらいの点数を取れるかで英語運用能力のレベルを判断できるようになっています。
TOEICスコア別の実力目安と到達難易度
TOEICは10点刻みでスコアが表示されますが、自分のスコアがどの程度の英語力を意味するのか気になる方も多いでしょう。一般的に600点以上で「英文の大意を把握し日常会話に対応できるレベル」、730点以上で「ビジネスの場面でも対応できる実力」、860点以上で「高度なコミュニケーションがほぼ問題なくできるレベル」といった目安があります。以下、スコア帯ごとの実力イメージと難易度を解説します。
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400点未満:基礎初級レベル。中学英語を一通り理解している程度で、高校レベルの英文は理解があいまいです。語彙数はおよそ2,000~3,000語程度で、ビジネスには不十分なため履歴書に記載してアピールするには厳しいスコア帯です。英検でいえば3級から準2級程度、日常の簡単な会話に辛うじて対応できるレベルとされます。
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400~495点:初級レベル。基本的な単語や短い文章の意味は理解できますが、長文や複雑な表現は苦手です。リスニングでは最低限の単語のみ聞き取れる程度で細部は理解できません。就職でアピールするには難しいスコア帯で、英語力の証明としては不十分のため更なるスコアアップが必要です。
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500~595点:準中級レベル。高校卒業程度の英文法は概ね身についており、社会生活で求められる平易な英語なら理解・使用できる水準です。リスニングでは「話の大意はある程度つかめるが細部は聞き取れない」状態、リーディングでは「短めの文章なら文脈から推測して理解できる」レベルです。英検では2級相当、履歴書に書ける最低ラインとも言われ、企業によっては500点以上を昇格や採用の基準に設定している場合があります(例:川崎重工業でプラント関係職に500点以上、日本精工やクラレで管理職に500点以上など)。
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600~695点:中級レベル。英語で日常生活のニーズを満たし、限定的な範囲で業務上のコミュニケーションができる力を備えています。語彙力は約5,000語程度とされ、基本的なビジネス英会話やメール対応が可能な水準です。このスコア帯になると履歴書にも十分記載でき、就職活動でも「英語力を持つ人材」としてアピール可能です。企業の新卒採用平均も概ね550~600点前後であるため、600点台は一つの目標ラインと言えます。実際、600点以上を新卒・中途採用の応募条件にする企業(例:出光興産、富士通、商社の三井物産など)も存在します。
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700~795点:中上級レベル。通常会話でほぼ問題なく意思疎通でき、ビジネス上でも限定的な内容なら対応できる力があります。TOEIC全受験者の上位約20%程度に入るスコア帯で、英検準1級相当とも言われます。730点は特に区切りの良い目安で、「国際業務に耐えうる基礎力がある」レベルとして多くの企業が重視します。外資系企業やグローバル業務では最低700点以上を求められることが多く、実際採用条件を700点以上(または730点以上)に定める企業も多数あります(例:NTT東日本・西日本、ヤマト運輸、資生堂で新卒採用時に700点以上、ソフトバンクや武田薬品工業で730点以上など)。このレベルに達すると英語を活かしたキャリアの選択肢が大きく広がります。
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800~895点:上級レベル。TOEIC受験者の上位約10%に入る難関スコア帯で、どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地があると評価されます。リスニングでは放送内容の8割以上を正確に聞き取れ、リーディングでも難解な一部を除き正確に読解できる域です。企業では800点台を「海外赴任や国際部門でも十分通用する英語力」と見なす傾向が強く、800点以上を昇進要件や採用基準にしている例もあります(例:楽天グループは新卒に800点以上要求、住友不動産は新卒・中途に800点以上、商社では社内留学に850点以上必要など)。このレベルを持つ人材は社内でも貴重で、海外案件や通訳的な役割を任されることも多くなります。
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900点~990点:最上級レベル。TOEIC満点に近いスコアで、非ネイティブとしては極めて高い英語運用力を示します。**950点前後からは事実上「一部ネイティブ並み」**と評価されることもあり、英語専門職や通訳翻訳レベルの求人でも強力なアピール材料になります。一般のビジネスパーソンがこの域に達するのは容易ではありませんが、継続的な学習と適切な対策で到達可能です。なお、スコアが高くなるほど1点上げる難易度も上がり、800点台から900点に上げるには約300時間の追加学習が必要との試算もあります。満点(990点)は全受験者のうちごく一握りですが、満点講師によれば「重要なのは難問を解けたかではなく、落とすべきでない問題を確実に拾えたか」が満点取得の鍵だと言います。
以上がスコア別の実力目安です。スコアアップの難易度について補足すると、TOEICスコアを100点上げるには約200時間の学習が必要とも言われています。例えば現在450点の人が650点を目指す場合、およそ450時間(1日3~4時間の勉強で約4か月)が必要とする試算もあります。目標スコアが高くなるにつれ必要な学習時間も増える傾向があるため、無理のない計画を立てて継続的に学習することが大切です。「スコアは受験時の英語力のスナップショット」であり、時間経過とともに向上も低下もし得るため、常に最新のスコアで自分の実力を示せるように継続学習を心がけましょう。
企業が求めるTOEICスコアの目安(業界別・職種別)
企業によって「求められるTOEICスコア」の基準は異なりますが、大まかな傾向として業種や職種がグローバル色を帯びるほど高スコアを期待される傾向にあります。以下に業界・職種別の目安と具体例を紹介します。
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外資系企業・海外業務系職種:700~800点以上を条件とする企業が多いです。例えば、外資系IT企業のソフトバンクは新卒・中途採用で730点以上を目安にしており、コンサルティング企業のアクセンチュアでは特定職種で700点以上を求める例があります。また楽天グループは社内公用語が英語ということもあり、新卒入社までに800点を課すことで有名です。「英語力必須」の業界では730点(目安:英語で専門業務が遂行できるレベル)を下回ると応募が難しい場合もあるので、ハイレベルなスコアが求められます。
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総合商社・貿易・海外営業:730~800点前後が望ましい水準です。総合商社では入社時に600~730点程度を条件とし、さらに入社後の一定年次までに730点以上取得を義務付ける例もあります。例えば伊藤忠商事は入社4年目までに730点が求められ、住友商事も管理職登用要件として730点以上を設定しています。商社は海外との取引が主業務のため、**800点近い英語力(高度なビジネス交渉が円滑にできるレベル)**が理想とされています。
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メーカー(製造業):職種によってばらつきがありますが、500~650点を基準とするケースが多く見られます。例えば自動車メーカーの日産自動車は新卒・中途で600点を応募条件、トヨタ自動車では係長昇進時に600点以上が求められます。一方で海外営業や技術開発など国際部門では700点以上を課す企業もあります。製造業全般では「600点=基礎的なビジネス英語力あり」と判断されることが多く、国内向け業務中心なら600点程度でも十分とされます。ただしグローバル展開を積極化しているメーカーでは650点以上を昇格条件にする例も増えています。
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情報通信・IT業界:国内企業の場合600点台、外資系ITでは700点台が目安です。国内大手の例では、富士通がエンジニア職等に600点以上を要件とし、NTTコミュニケーションズは新人研修で一定期間海外派遣の権利に730点以上を設定しています。外資系ITでは社内公用語が英語の場合もあり、日本IBMが中途採用で800点を必須としたケースや、日本オラクルが営業職に600点以上を求めた例があります。IT分野は技術知識が重視されるとはいえ、グローバル企業との協業も多いため英語力も評価対象となっています。
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金融・証券・医薬:職種によりますが、700点以上を目標にしておくと安心です。例えば武田薬品工業(医薬)は新卒・中途で730点以上が望ましいですし、丸紅(商社・金融関連も扱う企業)は入社5年目社員に730点を期待しています。一方、国内業務が中心の銀行などでは600点程度でも問題ない場合もあります。しかし金融業界も海外投資家対応や英文資料読解などで英語を使う機会が増えており、高得点保持者は採用・昇進で有利になる傾向があります。
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航空・旅行・サービス業:接客部門では必ずしも高スコアは要求されませんが、国際線や海外顧客対応では600点以上が求められることが多いです。例えばJTBではグローバルエントリー枠の新卒採用でTOEIC750点を条件にした例がありました。航空業界では客室乗務員やグランドスタッフで600点前後、パイロットで英語証明が必要なケースもあります。サービス業全般では「英語ができれば尚可」というスタンスですが、観光業界などでは語学堪能な人材を評価する企業も増えています。
以上のように、**「英語を使う頻度が高い業種・職種ほど、TOEICスコアの要求水準も高くなる」傾向があります。逆に言えば、国内業務中心の職種であれば600点程度でも十分アピールできますし、英語必須の職種では730点や800点以上で差別化を図ることができます。まずは志望業界や自社の「TOEICスコア活用状況」を調べ、自分の目標スコアを明確にすることが大切です。企業の求人票や人事発表を確認すると、「昇格条件:TOEIC○○点以上」など具体的な数字が記載されている場合もあります。一般に外資系・グローバル企業は高め(700~800点)、日系企業は中程度(600点前後)**が目安となりますので、自身の業界に合わせたスコア目標を設定しましょう。
TOEICスコアアップのための具体的な勉強法
TOEICスコアを効果的に上げるには、現在の実力に応じた勉強法で弱点を克服していくことが重要です。ここでは**初心者(~600点)・中級者(600~800点)・上級者(800点~)**の3つのレベル向けに、それぞれおすすめの学習法を具体的に紹介します。自分の現在地に合わせて取り入れてみてください。
初心者向け(目安スコア:400〜600点)
TOEICで600点未満の場合、まず強化すべきは英語の基礎力です。具体的には「語彙力の増強」と「文法の習得」がスコアアップの土台となります土台が固まったらTOEIC特有の問題形式に慣れる演習に取り組みましょう。
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語彙力の強化: 初心者の多くは圧倒的に語彙力が不足しています。TOEIC400点レベルで必要な単語数は約3,000語、600点には約5,000語と言われます。まずは頻出単語帳を1冊選び、繰り返し学習して単語を暗記しましょう。で紹介されているように、定番の**「TOEIC L&Rテスト 出る単特急 金のフレーズ」(通称金フレ)は600/730/860/990点レベルごとに重要単語を厳選して掲載した単語帳で、効率よく頻出語彙を習得できます。金フレが難しければ、より基礎的な「銀のフレーズ」(最重要1000語を収録)から始めるのもおすすめです。音声も活用して発音とセットで覚えるとリスニング力向上にも繋がります。ポイントは1冊を完璧に**仕上げることで、知っている単語が増えれば解ける問題も確実に増えてスコアアップに直結します。
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文法の習得・復習: 英文法は英語の骨組みであり、特に初級者のスコアアップには欠かせません。400点台の人は文法知識がまだ不十分なことが多く、文法力を上げることで長文がすべて読めなくてもPart5・6とシングルパッセージだけで600点を狙えるとも言われます。まずは中学~高校レベルの文法を総ざらいし、品詞・時制・文型など基本ルールを理解しましょう。おすすめ参考書としては、「TOEIC L&Rテスト 文法問題 でる1000問」(Part5対策の定番問題集)や、「TOEICテスト 英文法 出るとこだけ!」(解法の鉄則をまとめた速習書)などがあります。これらを使って、間違えた問題の解説を読み込み「なぜその選択肢が正解/不正解なのか」まで理解することで実力がついていきます。文法事項はただ暗記するのではなく、人に説明できるか試してみると理解度をチェックできます。説明に詰まる箇所は自分の弱点なので、そこを重点的に復習しましょう。
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問題演習と形式慣れ: 語彙と文法の基礎固めができたら、TOEICの実際の問題形式に慣れる練習を積みましょう。「公式TOEIC問題集」や市販の模試本を使って、できるだけ多くの問題を解いてください。いきなり満点を目指す必要はないので、例えば1日20~30問ずつでも構いません。重要なのは解きっぱなしにせず、復習して学びを得ることです。間違えた問題は解説を読んで理解し、可能なら音読して体に染み込ませます。またリスニング練習では、ディクテーション(書き取り)やシャドーイング(音声に続いて発話)も効果的です。初心者は特にリスニングで置いていかれがちなので、シャドーイングで音に慣れるとともに、発音やリズムに慣れて聞き取りやすくする訓練をしましょう。公式問題集の音声は公式スピーカーが読み上げており、本番に限りなく近いので積極的に活用すると良いです。
以上を並行して行いながら、とにかく継続することが初心者脱出の鍵です。英語学習は習慣化が大切なので、毎日スキマ時間でも構わないので英語に触れるようにしましょう。「単語15分+文法15分+問題演習20分」のように小分けにすれば、忙しい日でも取り組みやすいはずです。基礎力がついてくるとTOEIC600点は十分射程圏内に入ります。まずは土台固め → 問題演習の順で着実にスコアアップを図りましょう。
中級者向け(目安スコア:600〜800点)
TOEICで600~700点台の人は基礎力は身についていますが、得点の伸び悩みを感じているケースも多いです。中級者が800点突破を目指すには、弱点克服とテストテクニックの両面からアプローチすることが重要です。
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弱点パートの重点対策: まず、自分が特に苦手としているパートを洗い出しましょう。例えば「長文問題になると時間が足りない」「リスニングPart2でいつも勘頼みになる」といった具合です。中級者が陥りがちな課題として、以下のような「壁」があります:
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リスニングPart2で細かいところが聞き取れず、勘で答えてしまう問題が多い
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リスニングPart3・4で内容は理解できても、聞いた情報を記憶に留められない(先に進むと前の内容を忘れてしまう)
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リーディングPart5で選択肢に知らない単語が複数出てきて迷い、時間を消費してしまう
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Part6・7で文章を読んでいても内容が頭に入ってこないことがある(読んでも記憶に残らず理解が曖昧)
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Part7で根拠を見つけられずに勘で答えてしまう問題がある
こうした自分の弱点を認識できたら、それぞれに対策を講じます。例えば(1)にはディクテーションで細部の音まで聞き取る訓練、(2)にはメモを取る練習や内容を要約する練習、(3)には引き続き語彙力強化(中級者向け単語帳やニュース記事から新出単語を吸収)、(4)には精読と音読で読解力・集中力アップ、(5)には設問先読みと根拠となる文のマーキング練習などが有効です。それぞれの課題に対応する学習法を取り入れ、弱点の壁を一つ一つ崩していきましょう。
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読解スピードの向上: 中級者が800点を狙う上で、大きな鍵になるのがリーディングセクションで時間内に全問解き終えることです。75分で100問を解くには相当な速読力が必要で、多くの受験者が時間切れを経験します。そこでおすすめなのが精読+音読トレーニングです。精読とは、一つの英文を文法構造や意味を丁寧に解析しながら読むことです。Part7の長文などを素材に、主語・動詞・修飾関係をしっかり捉えながら読む訓練を積みましょう。理解した英文は何度も音読します。音読によって英文処理のスピードが上がり、読むのが段々速く正確になります。また音読はリスニング力強化にも繋がるため一石二鳥です。さらにタイムアタック練習として、公式問題集などでリーディング75分の模試を行い、どこまで解けるか測るのも良いでしょう。解き直しの際はPart5・6に時間をかけすぎていないかをチェックします。満点講師のアドバイスでは「Part5/6で悩みすぎるのは時間の浪費。難問は飛ばして、Part7に時間を投資せよ」とされています。目安としてPart5+6を20分以内に終え、残り55分弱をPart7に充てる配分が理想です。日頃から時間配分を意識して演習することで、本番でも自分のペースを崩さず解き切れるようになります。
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リスニング得点の底上げ: 800点を狙うには、リスニングで安定して高得点(目標400点以上)を取れるようにすることも大切です。中級者の場合、リスニングは比較的伸ばしやすいパートでもあります。対策としては、まず語彙・構文など基礎力を固めること。音が聞こえても単語の意味が分からなければ得点できないので、引き続き語彙と文法は学び続けます。その上で、シャドーイングを習慣にしましょう。Part3・4のスクリプトを使い、音声にかぶせて発声する練習をすることで、英語の音の流れやリエゾン(音の連結)に慣れることができます。「聞こえた英文をそのまま真似て発音する」という訓練は、自分の耳と口を英語に同調させる効果があり、集中的に行うと数週間でリスニング精度が向上したという声もあります。また日常的に英語の音声に触れる工夫も大切です。通勤・通学中にポッドキャストや英語ニュースを聞いたり、洋画・ドラマを英語音声で視聴するなど、「耳ならし」の時間を増やしましょう。英語に浸る時間を増やすほど、リスニング中に集中しても疲れにくくなり、試験中も安定して実力を発揮できるようになります。
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TOEICテクニックの習得: 中級者層にはTOEICのテストテクニックもしっかり身につけておきたいところです。例えば頻出パターンの把握です。TOEICには定番のパターン・ひっかけが存在します。早川幸治氏によると「Part3/4の会話や説明文は展開にパターンがある」し、「重要なのは難問を解いたかではなく易しい問題を確実に拾うこと」とも強調されています。具体的テクニックとしては、Part1では選択肢を先読みして写真のポイントを予測する、Part2では疑問詞を聞き逃さない、Part3/4では設問→選択肢の順で先読みしておき重要キーワードに注意する、Part5では空欄前後を見て即断し長考しない、Part7では設問から先に読んで該当箇所を探す等があります。またマークシートの塗りつぶし時間もばかになりませんから、リーディングの最後に時間が余らない場合は、残り1分で一旦全てマークし終える(いわゆる「塗り絵」)ことも戦略として必要です。テクニック本や対策講義動画で学べる小技も多いので、参考にしてみてください。ただし **「テスト中に努力してはいけない」**とも言われます。つまり普段の練習で努力すべきで、本番では身につけた技術を淡々と出すだけにしましょう。焦ってテクニックに頼りすぎると空回りするので、平常心で臨むことも重要です。
上級者向け(目安スコア:800点以上)
800点を超えてさらに高得点を狙う上級者には、緻密な弱点補強と高度な演習が求められます。既に土台はできているはずなので、細部の詰めと実戦力強化にフォーカスしましょう。
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上級語彙・表現の習得: 800点付近から先は、一般的な語彙に加えてビジネス特有の表現や難易度の高い単語も得点差を分けます。例えばPart7の長文には経済・法律・医療など専門的なトピックも登場します。市販の**「TOEIC上級単語帳(ブラックフレーズなど)」**や英字新聞・ビジネス誌から、高度な単語・表現を積極的に学びましょう。目安としてTOEIC800点には約8,500語の単語力が必要とも言われます。語彙力8500語を目標に、日々新しい単語を習得し続けてください。ただし語彙強化ばかりに偏らず、文法・構文などもバランス良く復習を。800点ホルダーでも知らないイディオムや紛らわしい語法は出てきますので、公式問題集の解説や上級者向け文法書で細かい知識を補完すると万全です。
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模試演習と徹底解析: 既に高得点のあなたは、公式問題集や模試をフル活用して実戦力を鍛え上げましょう。時間を計って解く模試形式の演習を繰り返すことで、本番でも焦らず自分のペースで進められるようになります。ポイントは解いた後の徹底的な解析です。間違えた問題はもちろん、正解した問題も含めて「なぜその選択肢が正しいのか/他が違うのか」を言語化できるようにします。上級者になると1問のミスが致命傷になるので、一つ一つの失点要因を潰す作業が不可欠です。例えばリスニングで聞き逃したならスクリプトで確認し音読、リーディングで誤答したなら該当箇所を精読して理解する、といった具合です。また公式問題集は本番と同じプロセスで制作されているため、繰り返し使うことで出題傾向を肌で掴むことができます。10冊以上解き込んでいる上級学習者も少なくありません。それに加えて、難易度の高い模試(例えばパート別の難問集や他社の上級者向け模試本)に挑戦するのも効果的です。難しめの問題に慣れておくと本番で余裕が生まれますし、900点超えを狙うなら敢えて高難度に取り組んで伸びしろを作るのも一つの戦略です。
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安定したメンタルと体調管理: 上級者が満点近くを狙う段階では、メンタル面や当日のコンディションも結果を左右します。模試で常に900点相当を取れる実力があっても、本番で極度に緊張したり体調不良だと実力を出し切れません。早川先生の「今できることが当日できれば結果は出る」という言葉通り、練習と本番を同じようにこなせる精神状態を作りましょう。普段から本番と同じ時間帯に2時間ぶっ通しで模試を解く訓練をし、試験慣れしておくと良いです。試験直前1週間は新しいことに手を出さず、今まで培った知識の総復習に努めましょう。十分な睡眠を取り、試験当日は余裕を持って会場に向かい、平常心でリラックスすることが大切です。上級者にとっては「本番で普段通りやれば満点も見える」状態ですから、焦らず冷静に取り組んでください。
以上のような学習法を実践すれば、800点からさらに上を目指すことも可能です。**「継続は力なり」**で、英語力は日々の積み重ねによって磨かれます。上級者の方も慢心せず、新たな表現に触れたりスキルを伸ばしたりする姿勢を保っていきましょう。
効果的なTOEIC教材とアプリの紹介
TOEIC学習には市販教材やスマホアプリが豊富に存在します。ここではスコアアップに役立つ定番教材と人気アプリを厳選して紹介します。自分の学習スタイルに合ったツールを活用して、効率的に勉強を進めましょう。
● おすすめ教材(参考書・問題集)
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公式TOEIC Listening & Reading 問題集(ETS) – TOEIC運営元が発行する公式問題集。実際のテストと同形式の問題が5~6回分収録されており、本番に最も近い良質な演習素材です。初級者から上級者まで必携の教材で、模試演習と復習に活用しましょう。
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出る単特急 金のフレーズ(朝日新聞出版) – 前述のとおりTOEIC頻出単語をフレーズごと収録した大定番の単語帳です。600点レベルから990点レベルまで段階的に単語が掲載されており、目標スコアに応じて必要な語彙を効率よく習得できます。TOEIC頻出のビジネス用語が網羅されている点も魅力です。
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出る単特急 銀のフレーズ(朝日新聞出版) – 金のフレーズの基礎版。TOEIC300~500点レベルの人向けに最重要単語1000語を厳選した単語帳で、まず基礎語彙を固めたい初心者に最適です。金フレが難しいと感じる場合はこちらから着手しましょう。
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TOEIC L&Rテスト 文法問題 でる1000問(アスク出版) – Part5対策の定番問題集。品詞、時制、語法などあらゆる文法ポイントの問題が計1000問収録されています。解説が詳しく、誤答肢がなぜ間違いかまで説明されているため独学でも理解を深められます。文法を徹底的に鍛えたい方におすすめです。
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TOEIC L&Rテスト 英文法 出るとこだけ!(アルク) – 忙しい人向けの文法対策本。TOEICによく出る文法ポイントに絞って解説しており、頻出の「鉄則」33項目を学ぶことで効率よくPart5の攻略法を身につけられます。解説がコンパクトなので短期間の総復習に向いています。
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究極の模試600問/800問(アルク 他) – 模試形式の問題集。600問版(3回分模試)や800問版(4回分模試)などバリエーションがあります。公式問題集だけでは演習量が足りない人は、これら市販模試で量をこなして実戦力アップを図りましょう。難易度は本番相当で、解説も丁寧です。
以上はごく一部ですが、「自分のレベル×強化したい分野」にフィットする教材を選ぶことが大切です。教材は色々手を出すより厳選したものを繰り返し使う方が効果的です。5冊中途半端にやるより1冊を5周する方が実力は伸びます。まずは評判の良い1冊から始め、必要に応じて買い足す形で十分でしょう。
● おすすめTOEIC学習アプリ
スキマ時間の学習にはスマホアプリも強力な味方です。最近ではAIを活用したアプリや公式連動アプリなど、多彩なものがあります。以下、人気のTOEIC対策アプリをいくつか紹介します。
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スタディサプリENGLISH(TOEIC対策コース) – リクルート社の総合英語学習アプリ。月額制の有料アプリですが、文法・単語・問題演習・動画講義・模試までオールインワンで備えた充実度が魅力です。初心者が基礎から学ぶのにも、上級者が模試や解説動画を活用するのにも使えます。忙しい社会人でも1回3分程度のレッスンで進められる工夫がされており、継続率が高いと評判です。
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Santa TOEIC – AIがあなたの弱点を分析し、最適な問題を出題してくれるTOEIC特化型アプリです。無料から使えますが、有料版にすると全機能が解放されます。初心者にも人気で、ゲーム感覚で問題演習が進められる点が特徴です。AIによるスコア予測やレベルチェック機能もあり、自分の実力推移を見ながら効率よく弱点補強ができます。短期間でスコアを伸ばしたい人におすすめです。
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abceed – こちらもAI搭載の人気アプリで、数多くのTOEIC参考書のコンテンツを収録しています。手持ちの教材をアプリ上で購入して学習できるほか、レベル診断に基づき2万問以上の中からAIが問題を出題してくれるモードもあります。学習時間の記録やスコア予測、解説閲覧など学習管理機能が充実しており、TOEIC学習には欠かせない「神アプリ」との声もあります。基本無料で使え、必要に応じて教材課金や有料プランを検討すると良いでしょう。
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TOEIC公式アプリ(TOEIC Official Learning and Preparation Course) – 運営元IIBCによる公式教材アプリです。公式問題集の音声をダウンロード再生できるほか、2019年にリリースされた**「English Upgrader」**の全コンテンツも搭載されています。English Upgraderとはビジネスシーンを題材にした英会話ストーリーで、リスニング練習に最適です。これら公式コンテンツを無料で利用できるため、ぜひ活用しましょう。
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mikan TOEIC – 短時間で単語を覚えることに特化した無料アプリ「mikan」のTOEIC版です。TOEIC頻出単語が出題され、スワイプ操作でサクサク覚えられるので通勤電車内などにも便利です。覚えた/覚えていないの判定で復習頻度を自動調整してくれるため、効率よく記憶定着できます。隙間時間のボキャビルにおすすめです。
この他にも、「TED」「NHK英語ニュース」といった一般英語力向上アプリや、「ターゲットTOEIC」など単語暗記系アプリ、「みんチャレ」(勉強仲間と継続を支援するアプリ)などもあります。大事なのは、アプリを自分のペースメーカーとして活用し、学習習慣を途切れさせないことです。アプリ学習は手軽ですが継続が難しい面もあるため、目標スコア達成までは毎日ログインして何らかのトレーニングをすると決めて取り組みましょう。上記のような優良アプリを使えば、忙しい人でもスキマ時間を有効活用してTOEIC対策を進めることができます。
スコアアップのための学習スケジュール例(社会人・学生別)
TOEICで目標スコアを達成するには、計画的な学習スケジュールを組むことが大切です。社会人と学生では使える時間帯や一日の勉強量も異なるため、自分の生活に合わせたスケジュール管理をしましょう。ここでは社会人向けと学生(時間に比較的余裕がある人)向けに、それぞれモデルケースの学習スケジュール例を紹介します。
社会人の場合(忙しい人向け3ヶ月計画の例)
平日フルタイムで働いている社会人が3ヶ月後のTOEIC公開テストでスコアアップを狙うケースを考えます。ポイントは、スキマ時間を徹底活用して1日合計2~3時間を捻出することです。例えば以下のようなプランはいかがでしょうか:
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朝出社前:普段より1時間早起きしてカフェ等でシャドーイング練習(約60分)。通勤前の頭が冴えている時間にリスニング強化を行い、耳を慣らします。
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通勤電車(往復):行き15分+帰り15分の計30分間、スマホアプリや単語帳でボキャブラリー学習。Flashカード形式で単語を覚えたり、アプリでクイズに答えたりして語彙力アップ。
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昼休み:昼食後の30分間を利用して単語・熟語の復習。または文法問題を数問解いてみるなど、軽めの勉強で構いません。
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帰宅後(夜):就寝前に1時間確保し、リーディング問題演習を実施。Part5・6の問題や長文読解を練習し、時間内に解く訓練をします。
このように平日は朝1時間+通勤30分+昼30分+夜1時間 = 計約3時間の学習時間をひねり出すことが可能です。ポイントは15分などの細切れ時間でもコツコツ継続することで、チリも積もれば3時間相当になるということです。また周囲の音が気になるリスニングや、集中を要する読解は自宅や静かな場所で行い、逆に単語暗記や瞬間英作文などは片手間時間に行う、といったメリハリも大切です。週末にはまとまった2~3時間で模試を解いたり、平日にできなかった復習をまとめてやるなど調整しましょう。
このスケジュールを3ヶ月続ければ、200~300時間の学習時間を確保できます。忙しい社会人にとって1日3時間の勉強は決して楽ではありませんが、朝・昼・夜のスキマを組み合わせれば実現可能です。自分のタイムテーブルを見直して、無理なく割ける時間を洗い出してみましょう。**「いつ・どこで・何を」**明確に決めておくと実行に移しやすいです。例えば「通勤電車では必ず単語アプリを開く」「夜10時~11時はテレビを消して問題演習」といったルール化をすると習慣になります。
学生(または比較的時間に余裕がある人)の場合
大学生など授業の合間や放課後の時間を活用できる人は、集中して勉強するブロックを作る戦略がおすすめです。就活を控えた学生が3ヶ月でスコアアップを目指す例を考えます:
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授業の空きコマ(80分):大学の空き時間をリスニング学習に充てます。例えば図書館や静かな食堂で公式問題集のリスニングパートを解いたり、シャドーイングを行ったりします。90分の空きコマなら途中10分休憩を挟みつつ80分間集中学習すると効果的です。
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夕方の時間(本来帰宅している時間を勉強に):1コマ分(80~90分)をリーディング演習に当てます。例えば自習室でPart5~7の問題を解き、時間内に読解する練習をしましょう。長文を読む訓練にしっかり時間を割くことで読解スピードが上がります。
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就寝前の20分×2:寝る前のちょっとした時間に単語や文法の復習をします。20分程度なら集中力が保てるので、その日のうちに覚えた単語を再確認したり、間違えた文法問題をノートにまとめたりします。風呂上がりや布団に入る前などリラックスした状態で暗記すると記憶に残りやすいです。
このスケジュールなら昼間に約160分+夜に40分 = 1日3時間20分程度の学習時間を確保できます。社会人に比べればまとまった長時間を取りやすい分、途中で休憩を入れつつ集中する習慣をつけることが重要です。人は普通、3時間ぶっ通しで集中するのは難しいため、自分の集中が持つ時間(例えば50分)ごとに適度に休憩を挟みましょう。80~90分の勉強でも、途中で5~10分休憩するだけで残り時間の集中力が全然違います。
また環境を変えて勉強する工夫も有効です。家だと誘惑が多くて難しい人は、図書館・自習室・カフェなど「ここに来たら勉強する」とスイッチが入る場所を見つけましょう。一方、人の気配があると集中できない人は静かな自室で没頭するのが良いでしょう。自分に合った環境づくりもスケジュール管理の一環です。さらに、モチベーション維持も長期計画では課題になります。そんなときは、同じ目標を持つ友人と図書館で一緒に勉強したり、SNSで勉強記録を報告し合ったりするのも効果的です。競争や仲間の存在があると継続しやすくなります。
以上のように、自分の立場に合わせて学習時間をひねり出し、スケジュールを立て、それを習慣化することがスコアアップへの近道です。社会人であれ学生であれ、「今日は疲れたから休もう」と何もしない日を減らすことが大切です。1日休むと勘が鈍ると言われるほど語学は生ものですので、毎日少しずつでも英語に触れるよう計画しましょう。自分なりの時間割を作り、それを3ヶ月継続できれば大幅なスコアアップも十分可能です。
TOEIC受験当日の対策と心構え
試験本番で実力を十分発揮するために、当日の過ごし方や受験時のテクニックにも注意を払いましょう。せっかく勉強してきたのですから、本番で100%の力を出し切ることが大切です。以下、TOEIC受験当日に役立つポイントや心構えをまとめます。
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持ち物・事前準備:受験票、写真付き身分証、HBまたはBの鉛筆(シャープペン不可)と消しゴムは必須です。試験会場によっては時計が見にくい場合もあるので、アナログ腕時計も持参しましょう(スマホは電源OFFで鞄に収納)。会場までは余裕を持って到着し、受付を済ませたらトイレなども早めに済ませます。着席後、音テスト(リスニング音量確認)がありますので、音声が聞こえにくい場合は遠慮なく手を挙げて会場係員に伝えてください。音量や音質の不備はスコアに直結します。
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試験前のウォーミングアップ:着席して試験開始を待つ間、頭の中でパート別の攻略ポイントをおさらいしましょう。リスニングでは先読みをするタイミングを確認したり、Part2の応答パターンを思い出したりします。リーディングでは時間配分(例:Part5+6は○分以内、残りPart7)を再確認しておきます。また緊張しすぎると実力が出せないので、深呼吸してリラックスすることも大切です。**「今まで練習した通りにやれば大丈夫」**と自分に言い聞かせましょう。
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リスニング中の戦略:Part1が始まったら、目は写真に集中しつつ放送を聞き取ります(問題冊子に余計なメモは書かないよう注意。TOEICではリスニング中にリーディングパートを見る行為は禁止されています)。Part2では放送文と選択肢は一切印刷されていないので、耳だけが頼りです。質問文の冒頭に集中し、疑問詞(What/Whereなど)を聞き逃さないようにしましょう。わからない問題があっても引きずらず、次に意識を切り替えます。Part3・4では先読みが命です。各設問ブロックの直前に問題文を読む時間が与えられるので、その間に質問と選択肢をできるだけ読み、キーワードに線を引いておきます。先読みで「誰が・何についての会話か」「何を問われそうか」を予測しながら聞くと効果的です。音声が流れたらテキストから目を離し、耳に全集中します。聞きながらメモを取ることは禁止されていませんが、書いていると逆に内容を逃すことも多いので、要所で頭の中で内容をイメージする程度で良いでしょう。万一聞き逃してしまった場合でもパニックにならず、「解けない問題は仕方ない、次で落とさない」と気持ちを切り替えます。リスニングパートが終わったら「This is the end of the Listening test…」の指示で一息つけますが、すぐリーディングに移るので気を抜かないでください。
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リーディング中の戦略: リーディングセクションでは時間配分との勝負です。事前に決めた目安時間を意識して、マイペースで解いていきます。Part5では深追い禁物です。難しい語彙問題で悩み込むくらいなら即答or飛ばす判断をします。「Part5・6合計で○分まで」と決めた時間になったら、たとえ数問残っていても一旦マークしてPart7に移る勇気も必要です。Part7では設問先読み→本文の順で読んで効率化します。シングルパッセージとマルチパッセージの順番は人それぞれですが、多くの人は前から順に解きます。複数文書問題は情報量が多いので、設問ごとに該当する文書へ飛ぶなどスキャニング(必要箇所探し)を活用しましょう。根拠が見つからない問いは一旦保留して、次の問題に進む決断も大事です。すべての問題を解き終えたら時間が余っても見直しを。時間が足りなければ、残り1分で塗り絵をして未回答を絶対に残さないようにします。TOEICは誤答の減点はないので、空欄放置は厳禁です。迷った問題も勘でいいので必ずマークしましょう。
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メンタルと姿勢: 2時間集中力を保つのは簡単ではありません。姿勢を正し、前のめりで問題に向かうと意識が持続しやすいです。途中で疲れても椅子にだらっともたれないようにしましょう。リスニングで数問聞き逃したり、リーディングで難問に当たったりしても、深呼吸してリセットし、「落とした分は他で取り返す」と前向きに切り替えます。解けない問題が続いても心が折れないように、「次の易しい問題で点を拾おう」というマインドで臨みましょう。試験中の努力(ジタバタ)は報われないとも言われます。培った力を出すことだけに集中し、その場でなんとかしようとは考えすぎないことです。
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試験後: 全部終わったらお疲れ様でした。すぐ自己採点はできませんが、覚えている限りで振り返りをして次回への課題をメモしておくと良いでしょう。結果はインターネット発表(受験後約17日でWEB閲覧可)や郵送公式認定証で確認できます。スコアは企業提出等では基本的に2年間有効とされます(ETSは最新スコアの利用を推奨し、有効期限を2年と設定しています)。
以上がTOEIC本番での心構えと対策です。大切なのは**「普段どおりやれば結果は出る」**と信じて落ち着くこと。適切な準備と冷静な対応で、きっと目標スコアに手が届くはずです。
よくある質問(FAQ)
最後に、TOEIC学習者から寄せられるよくある質問とその回答をまとめます。疑問や不安を解消し、スコアアップへの道筋をはっきりさせましょう。
Q1: TOEICのスコアは何点から履歴書に書けますか?
A: 明確な決まりはありませんが、一般的には600点以上が一つの目安です。日本人平均(公開テスト)のスコアがおよそ580点前後と言われる中、600点を超えていると「平均以上の英語力」とアピールできます。就職活動でも600点台から英語力を評価され始め、730点を超えると強みとして堂々と記載できるでしょう。逆に500点未満だと英語初級レベルの印象となり、業務で英語を使う職種でない限り履歴書に書いても大きなプラスにはなりにくいです。もちろん志望業界によりますが、600・730・860点といったキリの良いラインを一つの目標にすると良いでしょう。
Q2: TOEICスコアに有効期限はありますか?
A: 公式には2年間とされています。TOEICのスコア自体は一度取得すれば消えませんが、ETS(試験開発元)は「英語力は時間とともに変化するもの」として最新2年以内のスコアを参照することを推奨しています。企業や学校でも「TOEICは2年以内のスコアに限る」といった指定をする場合が多いです。そのため、仮に3年前に高得点を取っていても、応募時には直近2年以内のテストでもう一度目標スコアを取得しておくことが望ましいです。
Q3: スコアを100点上げるにはどれくらい勉強時間が必要ですか?
A: 個人差はありますが、約200時間が一つの目安です。例えば400点→500点に上げる、600点→700点に上げる、といった場合、集中して200時間程度の学習を行えば達成可能というデータがあります。ただしスコア帯が上がるほど1点あたりの伸びに必要な時間も増える傾向があります。実際、450点の人が650点を目指すには約450時間(1日3~4時間で4ヶ月)、800点の人が900点を目指すには300時間以上かかったという報告もあります。大切なのは闇雲に時間をかけるのではなく、弱点にフォーカスした質の高い学習を積み重ねることです。目安時間を参考に、自分の勉強計画を立ててみましょう。
Q4: リスニングとリーディング、どちらに重点を置くべきですか?
A: 両方バランスよく取り組むのが理想ですが、効率面ではリスニングから攻めるのがおすすめです。理由は二つあります。第一にTOEICではリスニング満点が495点と配点が高く、リスニングを伸ばす方がスコア全体が上がりやすいためです。第二にリスニング力の向上はリーディング力向上にもつながる点です。音読やシャドーイングで鍛えた速処理能力は読解スピードを上げる助けになります。とはいえ全くリーディングをおろそかにして良いわけではありません。600点未満の方はまず文法・単語を強化し読解の土台を作る必要がありますし、700点以上を狙う方は読解力・速読力の向上が不可欠です。総じて、基礎固め期はリーディング重視→スコア中盤以降はリスニング重視、といった配分が効率的でしょう。自分の得意不得意に応じて学習比率を調整してください。
Q5: 毎日どれくらい勉強すればTOEICは伸びますか?
A: 理想を言えば1日2~3時間、まとまった勉強時間を確保できるとスコアアップが早いです。例えば1日3時間勉強できれば、3ヶ月で約270時間となり100点以上のアップも十分可能でしょう。しかし仕事や学業で忙しい場合、連日それだけの時間を取るのは難しいかもしれません。その場合は、スキマ時間を合わせて1日1時間でも継続することが大事です。毎日継続できる量から始め、週末に多めに学習するなどメリハリをつけても構いません。重要なのは**「一週間で○時間」**といった目標を決め、それをコンスタントに積み上げることです。ゼロの日を作らないようにし、習慣化することで少しずつ力は伸びていきます。
Q6: TOEICと英会話力は別物ですか?勉強しても話せるようにならない?
A: TOEIC L&Rはあくまでリスニングとリーディングのテストなので、「話す・書く」能力そのものは測定対象ではありません。ただし、TOEIC学習を通じてビジネスで頻出の単語・表現が身につき、英文読解力や聞き取り能力が上がるのは事実です。これらは英会話の基礎力となるため、間接的には会話力向上に役立ちます。実際800点以上の人は英語での意思疎通もかなり円滑にできるケースが多いです。一方、TOEIC高得点でも話す訓練をしていなければスピーキングに慣れておらず口から英語が出てこないこともあります。そのギャップを埋めるには、**TOEIC学習に加えてアウトプット練習(英会話レッスンやスピーキング練習)**を並行すると良いでしょう。TOEICで土台を固め、会話練習で運用力を伸ばすのが理想的な組み合わせです。
Q7: 次の公開テストまで時間がありません。短期間でスコアを伸ばすコツは?
A: 時間が限られる場合、重要ポイントに絞って集中的に学習することが肝心です。例えば試験まで1ヶ月なら、以下のような対策がおすすめです:
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苦手パートを割り切る:全パート満遍なく手を付けるのは時間的に難しいので、得点源になりそうな部分にフォーカスします。例えばリスニングが比較的得意ならリスニング満点を狙う勢いで対策し、読解は最低限の点を落とさない戦略を取る、など。逆に読解が得意ならPart7を完答する練習に注力し、リスニングは捨て問を作らない程度にカバーします。
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模試を解いて弱点発見:まず1回公式模試を解いてみて、自分の弱点箇所を洗い出します。そして残り期間はその弱点克服に全振りします。例えばPart2対策に集中する、長文問題ばかり解く、といった具合です。苦手が明確になれば短期でも伸びしろがあります。
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テンプレート暗記:頻出の定型表現やイディオムを集中的に覚えます。例えばPart3/4の定番フレーズ(日時変更の表現、依頼への回答パターンなど)や、Part5の頻出コロケーション(collaborate withなどの熟語)を直前期に暗記すると即効性があります。
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直前テクニック:試験直前1週間は新規学習より体調管理とテスト慣れを優先しましょう。模試形式で毎日2時間解いてみて、集中力の持続に慣れます。また当日のミスを減らすために、本番の心得(先読みや塗り絵タイミングなど)を頭に入れておきます。
もちろん魔法のように一気に200点アップとはいきませんが、ポイントを絞れば短期でも100点前後のスコアアップは十分可能です。最後まで諦めずやれることをやり切りましょう。
Q8: 一度目標スコアを取ったら、もう勉強をやめても大丈夫でしょうか?
A: 目標達成おめでとうございます!しかし、英語力は使わないと落ちてしまうものです。せっかく身につけた実力を維持・向上させるためにも、継続的な学習をおすすめします。例えばTOEIC〇点達成後は、スピーキングやライティングなど他の技能に挑戦してみるのも良いでしょう。TOEIC Speaking/Writingテストや英検、さらには実際の英会話に取り組めば、リスニング&リーディングの力も維持できます。また仕事で英語を使う予定がなくても、定期的に英語のニュースを読んだり洋画を字幕なしで観るなどして、英語との接点を持ち続けると錆び付き防止になります。半年や1年おきにTOEICを受験して現状チェックするのも有効です。語学は一生もののスキルですので、ぜひ引き続き楽しみながら磨きをかけてください。
まとめ:継続的な学習の重要性
TOEICスコアアップの道のりを総合的に解説してきましたが、最も大切なのは**「継続的な学習」**であることは言うまでもありません。英語力向上には近道はなく、コツコツと積み上げた努力がスコアに反映されます。幸いTOEICは目に見える数字で成果が出るのでモチベーションに繋がりやすい試験です。高い目標を設定しすぎず、段階的にクリアしていけば達成感を味わいながら伸ばしていけるでしょう。
また、TOEIC学習を通じて得た単語力・読解力・リスニング力は、仕事や日常で英語に触れる際の大きな武器になります。スコアだけでなく実際のコミュニケーション力も向上しているはずですから、自信を持って英語に挑戦してください。で述べられているように、800点レベルの人材は企業にとって「海外とのコミュニケーションを円滑に進められる」貴重な存在です。つまり努力の先にはキャリアアップや活躍の場の拡大といったご褒美も待っています。
最後になりますが、スコアアップ達成後もぜひ英語力維持・向上のために学習を続けてください。言語習得にゴールはありません。TOEICをきっかけに始まった英語学習をライフワークとして継続すれば、きっと将来さらなるチャンスが巡ってくることでしょう。**「継続は力なり」**を胸に、楽しみながら英語力を磨いていってください。あなたのTOEICスコアアップと英語学習の成功を応援しています!