TOEIC SW(スピーキング&ライティング)試験は、英語の「話す力」と「書く力」を測るテストです。英語での会話力や文章作成力を伸ばしたい社会人にとって、TOEIC SWで高得点を取得することは大きな目標になります。本記事では、TOEIC SWの概要や試験内容、スコアの評価基準、初心者向けの練習問題、そしてスコアアップのための勉強法について詳しく解説します。TOEIC SWでのスコアアップを目指し、効率的な試験対策を進めていきましょう。
TOEIC SWの概要と受験目的
TOEIC SWとは、TOEIC Listening & Reading(以下L&R)では測れない「話す」「書く」英語力を評価する試験です。日常生活やビジネスの場で英語による円滑なコミュニケーションが取れるかを測定し、スピーキング(話す能力)とライティング(書く能力)それぞれ0点から200点で評価されます。L&Rで高得点を取ったからといって必ずしも話したり書いたりできるとは限らないため、TOEIC SWで高得点を取ることで初めて総合的な英語運用能力を示すことができます。
社会人がTOEIC SWを受験する目的はさまざまですが、代表的なものとしてスピーキング力・ライティング力の向上があります。仕事で英語を使う機会がある人や、海外とのやり取りが発生する職場では、実際に話したりメールを書いたりするスキルが求められます。また就職・転職や昇進の際にTOEIC SWのスコア提出を求められる場合もあり、高スコアを取得しておくとキャリア面でも有利になるでしょう。単にスコアを取るだけでなく、試験勉強を通じて英語で発信する力を養える点もTOEIC SW受験の大きな目的と言えます。
TOEIC SWは**パソコンとヘッドセット(マイク付きイヤホン)を使用して受験します。試験はスピーキングテスト(全11問・所要時間約20分)とライティングテスト(全8問・所要時間約60分)**の2部構成です。基本的に月に1回(主に日曜日)公開テストが実施されており、インターネットから申込みを行います。受験料は約1万円(2023年現在10,450円)で、スピーキングテストのみ受験することも可能です(※ライティングのみの受験は不可)。次からは各セクションの出題内容や求められる能力について見ていきましょう。
Speakingセクションの概要
TOEICスピーキングテストでは、与えられた課題に対して音声で回答を録音します。問題数は全部で11問です。出題形式は大きく5種類あり、英語で話す力を様々な角度から測定します。スピーキングの出題内容は以下の通りです。
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音読問題 (Read a text aloud): 短い英文(アナウンスや広告文など)が表示されるので、準備時間の後にその文章を声に出して読み上げます。
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写真描写問題 (Describe a picture): 1枚の写真が表示され、その写真の状況を英語で説明します。人物や物の配置、動作などをできるだけ詳しく描写します。
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応答問題 (Respond to questions): 身近な話題について質問に口頭で回答する問題です。インタビュー形式で3問出題され、例えば「週末は普通何をしますか?」のような質問に即興で答えます。
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提示情報に基づく応答問題 (Respond to questions using information): 表やスケジュールなどの提示された情報を参照しながら質問に答える問題です。与えられた資料を読み取って適切な回答をします。
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意見を述べる問題 (Express an opinion): 社会的なトピックについて自分の意見とその理由を述べる問題です。例えば「在宅勤務と出社勤務のどちらが良いか、その理由を含めて自分の意見を述べてください」のような形式で、60秒程度話します。
スピーキングセクションでは、発音やイントネーション、文法、語彙の正確さに加え、内容の一貫性や質問への適切な回答ができているかが評価されます。読み上げる問題では発音の明瞭さが重視され、写真描写や応答問題では限られた時間内でいかに的確に状況説明や回答ができるかが問われます。難易度は問題が進むにつれて高くなり、後半の意見を述べる問題ではより高度な表現力と思考力が求められます。
Writingセクションの概要
TOEICライティングテストでは、パソコン画面に表示された設問に対しキーボードで英文を入力して解答します。問題数は全部で8問です。出題形式は3種類に大別され、英語で書く力を段階的に測定します。ライティングの出題内容は以下の通りです。
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写真描写問題 (Write a sentence based on a picture): 1枚の写真と写真に関連する2つの単語またはフレーズが与えられます。その両方を使って、その写真の状況を説明する1文の英文を作成します。この問題が5問出題されます。
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Eメール作成問題 (Respond to a written request): ある英文Eメールの文面が表示されます。その内容に対して返信のEメール文を英語で作成します。依頼や質問に対し、丁寧で適切な返答を書く力が求められます。この問題が2問出題されます。
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意見記述問題 (Write an opinion essay): 社会的なテーマについて自分の意見を英文で記述する問題です。与えられたトピックに対し、賛成・反対の立場やその理由を含めて、論理的なエッセイを書きます(目安として150語以上)。この問題は1問のみ出題されます。
ライティングセクションでは、文法の正確さ、語彙の豊富さ、文章構成の論理性などが評価されます。写真描写では、与えられた語句を適切に用いて簡潔かつ正確な文を書く力が求められます。Eメール作成では、丁寧なビジネス表現を使い適切な文調で要件に応じた返信を書く力が必要です。意見記述では、自分の主張を明確にし、理由や例を挙げて説得力のある文章を書く力が求められます。いずれの問題でも、タイピングの速さと限られた時間内で内容を推敲するスキルも重要です。
スコアの評価基準と分布
TOEIC SWでは、スピーキングとライティングそれぞれ0点から200点のスコアで評価されます(10点刻みで採点)。両セクション満点の場合、合計400点満点となります。ただし実際にはスピーキングとライティングは別々に評価されるため、例えば「Speaking 150点・Writing 140点」のように個別にスコアが表示されます。公式認定証には各セクションのスコアに加えて、スピーキングでは発音(Pronunciation)とイントネーション&ストレス(Intonation and Stress)についてHIGH・MID・LOWの3段階評価が表示され、総合的な話す力の指標となります。
スコアの評価基準として、ETSから**スコアレンジ別評価(Score Range Descriptors)**が公表されています。スコアを一定のレンジごとに区切り、その範囲における受験者の英語運用力の目安を示したものです。例えばスピーキング160~180点のレンジには「英語で意見を述べたり複雑な要求に応えたりすることができ、多少の発音や文法の誤りがあっても意思疎通に支障がないレベル」といった評価が示されています。一方で130点前後では「意見を述べることはできるが、説明が部分的に不明瞭になることがある」というように、中級者レベルの評価となります。なお、日本国内の公開テストデータでは、受験者の平均スコアはスピーキングで約130点、ライティングで約145点となっています。
スコア分布としては、比較的ライティングの方がスピーキングより平均点が高い傾向があります。日本人学習者は学校教育で英作文に触れる機会はあっても、英語で話す訓練を積む機会が少ないため、スピーキングの方がスコアが伸びにくい傾向が指摘されています。そのため、スピーキングテストで高得点を取るには入念な試験対策と継続的なスピーキング練習がより重要となるでしょう。なお、一般的に160点以上が取得できればかなり高いスコアと言え、職場でも通用する十分なスピーキング/ライティング力の持ち主と評価されます。満点の200点はネイティブレベルに近いごく一部の上級者のみが達成できるスコアです。
初級者向けの練習問題
ここからは、TOEIC SWの練習問題を初心者向けにいくつか紹介します。実際の試験形式に沿った問題に取り組んでみましょう。音声を使わず、自分で問題文を読みながら練習できる内容になっています。
スピーキング練習問題
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音読問題の練習: 次の英文を声に出して読んでみましょう(発音やイントネーションに注意して、流暢に読む練習をしてください)。
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“Welcome to our store. We offer a wide selection of fresh fruits and vegetables every day. Please let us know if you need any assistance.”
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質問応答問題の練習: 次の質問に英語で即答してみましょう。45秒ほど時間を計り、自分の答えを声に出してみてください。
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質問: “What do you usually do on weekends?” (週末はたいてい何をしますか?)
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意見を述べる問題の練習: 以下のトピックについて、自分の意見とその理由を英語で話す練習をしましょう。1分程度でまとめられるようにしましょう。
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トピック: “Do you agree or disagree that working from home is more productive than working in an office?” (在宅勤務の方がオフィス勤務より生産的だという考えに賛成ですか、反対ですか?)
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ライティング練習問題
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写真描写問題の練習: 次の状況を表す写真を思い浮かべ、その描写に使えそうな単語を指定します。指定された語句をすべて用いて、写真の様子を表す英文を書いてみましょう。
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写真の状況: オフィスで1人の男性が電話をしている。
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指定語句: “call” (電話する), “desk” (机)
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模範解答例: The man is making a call at his desk. (※making a call=電話をかけている)
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Eメール作成問題の練習: 次の英文電子メール(依頼文)を読み、それに対する返信メールを書いてみましょう(目安: 50~100語)。
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依頼メール: “Hello, I hope you are doing well. Could you please send me the sales report by this Friday? Thank you in advance. Best regards, [あなたの同僚より]”
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あなたはこの依頼にすぐ対応できない状況だとします。メールには丁寧なあいさつと、お礼、そして報告書を金曜日までに提出できない理由(例えば出張中である等)と代替案(提出可能な期限など)を盛り込み、丁寧な表現で返信を書いてみましょう。
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これらの練習問題に取り組むことで、TOEIC SW本番の雰囲気を掴むことができます。初心者の方は、最初は短い英文からで構いませんので、正確さを意識して練習しましょう。
スコアアップのためにやるべきこと(勉強法のポイント)
TOEIC SWで高スコアを取るためには、日頃から話す・書く英語のアウトプット練習を積むことが重要です。以下にスピーキング力・ライティング力の基礎を伸ばし、スコアアップにつなげるための勉強法のポイントをまとめます。
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試験形式に慣れる: まずTOEIC SW特有の問題形式に慣れましょう。公式サンプル問題や参考書を活用し、各セクションの時間配分や回答のコツを掴んでください。形式に慣れておくことで本番でも落ち着いて実力を発揮できます。
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毎日のスピーキング練習: スピーキング力向上には、毎日少しでも英語を声に出す習慣を作ることです。シャドーイング(英語音声の後に続けて発音する練習)や音読練習を通じて発音・イントネーションを矯正しましょう。また、自分で質問を作って即興で答える練習や、身近な物を英語で説明する練習も効果的です。スマホで自分の発話を録音し、客観的に聞いて改善点を探るのもおすすめです。
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ライティングの基礎固め: ライティング力を上げるには、英文法と語彙の強化が欠かせません。文法書で基礎を見直し、よく使うビジネス表現やメールの定型文を覚えておきましょう。短い日記を英語で書いたり、英文メールのやり取りを練習したりして、文章を書くことに慣れてください。書いた英文は可能であればネイティブや上級者にチェックしてもらい、フィードバックを受けると効果的です。
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テンプレートやフレーズを習得: TOEIC SWでは、特にライティングのEメールや意見記述で使える定型表現やテンプレートを身につけておくと便利です。例えばEメールでは「Thank you for your email.」「I apologize for the inconvenience.」といった丁寧表現、意見エッセイでは「In my opinion,」「First of all,」など論旨を示す表現を暗記しておき、本番で活用できるようにしましょう。ただしテンプレートに頼りすぎず、自分の言葉で内容を伝える練習も忘れずに。
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模擬テストで時間管理: 本番同様の模擬テストを行い、時間配分の練習をしましょう。スピーキングでは準備時間から回答時間まで時計を意識し、ライティングでは各問題に割ける時間を決めて取り組むことで、時間切れを防ぐ感覚を養います。本番と同じ制限時間で練習することで、試験当日のペース配分に慣れることができます。
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積極的にアウトプット機会を増やす: 独学だけでなく、英会話教室やオンライン英会話で実際に話す機会を持つことも有効です。人と対話することで、応答力やスピーキングの度胸がつきます。同様に、SNSや英語掲示板で英語を書く機会を持つなど、実践の場でアウトプットすることでモチベーション維持とスキルアップにつながります。
以上のポイントを継続的に実践すれば、少しずつスピーキング力・ライティング力が向上し、TOEIC SWのスコアアップにつながるはずです。特にスピーキングは継続した音読練習や会話練習で表現の引き出しを増やし、ライティングは書いては直す訓練で論理的な英文を書く力を磨いていきましょう。
まとめ
TOEIC SW(スピーキング&ライティング)試験で高得点を目指すには、試験の形式を正しく理解し、日頃から話す・書くための地道な練習を積むことが鍵です。スピーキングセクションでは明瞭な発音と的確な応答、ライティングセクションでは正確な文法と論理的な文章展開が求められます。本記事で紹介した対策ポイントや練習問題に取り組むことで、弱点を補強し自信を持って本番に臨めるでしょう。
TOEIC SWのスコアアップを目指す過程そのものが、英語でのコミュニケーション能力を高めることに直結します。試験勉強を通して培ったスピーキング力・ライティング力は、ビジネスの現場でも必ず役立ちます。ぜひ計画的な試験対策で着実に実力を伸ばし、TOEIC SWでの高スコアを勝ち取ってください。