IELTSは海外留学や移住の際に英語力を証明するための重要な試験です。「忙しいけれど短期間でIELTSのスコアを上げたい」と考えている方も多いでしょう。
実際、1ヶ月という限られた期間でも、適切な勉強計画と効率的な学習法を実践すれば、現在のスコアから+1.0のスコアアップも決して不可能ではありません。
この記事では、忙しい人でも1ヶ月以内の短期集中でIELTSの目標スコアを達成するための具体的な勉強法や対策をご紹介します。リスニング・リーディング・ライティング・スピーキングの各セクション別のポイントから、毎日の学習スケジュール例、弱点の克服法、模擬試験(模試)の活用法、本番直前のチェックリストまで網羅しています。
短期間でも効率よく学習してIELTSで高スコアを目指すコツを、ぜひ掴んでください。
IELTS試験の傾向と各セクションの違い
まずはIELTSという試験の概要と、リスニング・リーディング・ライティング・スピーキング各セクションの特徴を押さえましょう。IELTSは**聞く(Listening)・読む(Reading)・書く(Writing)・話す(Speaking)**の4技能を測定する英語試験で、各技能が0~9のバンドスコアで評価され、その平均がオーバーオール(Overall)スコアとして提示されます。大学留学を目指す場合はアカデミック・モジュール(Academic Module)を受験するのが一般的です。
各セクションにはそれぞれ出題形式や求められる力に違いがあります。リスニングでは約30分間の音声(会話や講義など)が流れ、設問数は40問です。一度しか音声が流れないため、集中力とメモを取るスキルが鍵となります。英語の様々なアクセント(イギリス英語・アメリカ英語・オーストラリア英語など)が登場するのも特徴です。
リーディングでは60分で3つの長文を読み、合計40問に解答します。学術的な内容の文章が多く、速読力と語彙力が求められます。設問形式は選択肢問題や文章の内容一致(True/False/Not Given)、見出しの対応付けなど多岐にわたります。日本の受験英語で読み慣れている方にとっては比較的得点源にしやすい一方、文章量が多いため時間配分が重要です。
ライティングでは2つの課題(Task 1とTask 2)が与えられ、計60分で英作文を行います。Task 1ではアカデミック・モジュールの場合、グラフや図表の要約説明文を書く必要があります(150語以上)。Task 2では一般的な社会問題や意見を問うエッセイを書きます(250語以上)。評価基準には内容の一貫性・論理性、語彙の豊かさ、文法の正確さなどが含まれ、構成力と表現力が問われるセクションです。
スピーキングは試験官との1対1の面接形式で行われ、11~14分程度で完了します。Part 1では身近な話題についての簡単な質問、Part 2では与えられたトピックカードに基づいて1人で長めに話すスピーチ、Part 3ではより抽象的・発展的な質問に答えます。日常会話のようなリラックスした形式ですが、流暢さや発音の明瞭さ、アイデアの論理展開などが評価されます。
このように、IELTSでは各セクションごとに形式も求められるスキルも異なります。短期間でスコアアップを目指すには、まず自分の得意・不得意を把握し、各セクションの傾向に合わせた対策を立てることが重要です。次章からは、具体的なセクション別の対策プランを見ていきましょう。
各セクションの対策プラン(リスニング・リーディング・ライティング・スピーキング)
短期間で効率よくスコアを伸ばすため、各セクションに特化した勉強法を取り入れましょう。以下にリスニング、リーディング、ライティング、スピーキングそれぞれの対策ポイントを紹介します。
リスニング対策プラン
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音源に毎日触れる習慣:リスニング力向上には、とにかく英語の音声に毎日触れることが大切です。IELTS公式問題集のリスニング音源や、BBCなどのニュース、ポッドキャスト、TEDトーク等を活用し、通勤通学のスキマ時間にも英語を聞く習慣をつけましょう。様々なアクセントの英語を聞いて耳を慣らしておくと、本番で戸惑いにくくなります。
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シャドーイングで集中力アップ:音声をただ聞き流すのではなく、シャドーイング(聞こえた英語をすぐ追いかけてマネして発声する練習)を取り入れましょう。シャドーイングを行うことで、英語の音をしっかり聞き取る集中力が身につき、発音やリズムも同時に改善されます。リスニング教材のスクリプトを手元に置き、最初は音読→次にスクリプト無しでシャドーイングという手順を繰り返すと効果的です。慣れてきたら一つの音源につき最低10回は繰り返して、内容を完全に聞き取れるようにしましょう。
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設問パターンを研究:IELTSリスニングの設問には、記入式(空所補充)、選択式、地図の聞き取りなどいくつかパターンがあります。短期間で高得点を狙うなら、頻出パターンに絞って練習しましょう。例えば、フォームに名前や電話番号を書き取る問題では、アルファベットのスペルや数字の聞き取りに慣れておくことが重要です。また選択肢問題では、話者が**言い換え(パラフレーズ)**表現を使ってくるため、質問文のキーワードと同意表現を結びつける練習をしておきます。
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本番さながらの練習:リスニングは音声が一度しか流れないため、練習の際も途中で一時停止したり、繰り返し聞き返したりせず、本番同様に通しで解いてみる訓練が必要です。40問を連続で解き、終わったらスクリプトを確認して答え合わせをしましょう。間違えた問題は、該当部分の音声を再度聞きながら内容をチェックし、なぜ間違えたのかを分析します(聞き逃したのか、単語が分からなかったのか等)。実践形式の練習を積むことで、当日の緊張感にも慣れ、集中力を持続させやすくなります。
リーディング対策プラン
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スキミングとスキャニング:リーディングでは限られた時間で長文を読み切るために、スキミング(ざっと読む)とスキャニング(必要な情報を探す)の技術が欠かせません。まず設問に目を通し、何を問われているかを把握してから本文を読むと効率的です。段落ごとに簡単なメモを書く癖をつけるのも有効でしょう(各段落の主旨を一言でまとめておく)。こうすることで後から設問に答える際に該当箇所を探しやすくなります。
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時間配分の徹底:IELTSリーディングは60分で3つの長文を解くため、1つの文章に約20分が目安です。普段の練習からタイマーを使って各セクションを時間内に解く訓練をしましょう。例えば1つ目の文章は18分、2つ目は20分、3つ目は22分など、自分なりの配分を決めて、本番で最後まで解き切れるように練習します。時間内に終わらなかった設問は一旦飛ばし、次に進む決断力も必要です(後で時間が余れば戻って解答する戦略を取ります)。
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復習して弱点分析:練習問題を解いた後は必ず復習し、間違えた問題の傾向を分析しましょう。「True/False/Not Givenの”Not Given”を誤ってTrueにしてしまう」「見出し選択問題で似たような選択肢に惑わされた」など、自分のミスのパターンを洗い出します。同じタイプの問題で繰り返し間違える場合は、その設問形式に特化した対策が必要です。一度解いた問題も、数日経ってからもう一度解き直すことで確実に理解できます。特に難しかった長文は、答え合わせ後に精読して内容を完全に理解し、分からない単語を調べるといった学習も効果的です。
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語彙力の強化:リーディング高得点の鍵は語彙力です。短期間で一気に語彙を増やすのは大変ですが、IELTS頻出の単語集(例えばAcademic Word ListやIELTS用語集)から毎日コツコツ覚えていきましょう。1日200語を目標に覚えると、1ヶ月で約6000語に触れる計算になります。既に一度覚えた単語も、翌日以降に再度テストして定着度を確認し、忘れていたものは繰り返し復習します。同義語や言い換え表現も併せて学ぶことで、設問と本文中の表現のギャップに対応しやすくなります。
ライティング対策プラン
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テンプレート(型)の習得:IELTSライティングでは型(テンプレート)を活用することがスコアアップの近道です。特にTask 2のエッセイでは、序論→本論→結論という基本構成を崩さず、決まった言い回しや接続詞を使うことで論理的かつ読みやすい文章になります。短期間で書く力を伸ばすには、参考書や予備校で紹介されている模範解答を分析し、構成や表現を自分のものにすることが効果的です。いくつか汎用性の高いイントロダクションや結論のフレーズ(例:「It is often argued that…」「In conclusion, I firmly believe that…」など)を暗記しておくと、本番で素早く書き始められます。
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繰り返し書いて添削を受ける:ライティング力向上にはアウトプットの反復が不可欠です。可能であれば週に2〜3回はTask 1とTask 2の練習問題に取り組み、書いた答案を英語の先生やIELTS指導経験者に添削してもらいましょう。忙しい場合でも、自分で模範解答と照らし合わせて自己チェックするだけでも効果があります。間違いや指摘を受けたポイント(例えば「単数・複数の誤り」「時制の不一致」「語彙の繰り返し」など)はノートにまとめ、次回は同じミスをしないよう意識して書きます。同じテーマで書き直してみるのも良い練習です。一度ではなく何度も書き直すことで、表現が洗練されミスも減っていきます。
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時間内に書く練習:ライティングはTask 1に20分、Task 2に40分が目安配分とされています。本番と同じ60分で2つの課題を書き上げる訓練をしましょう。最初の数分でそれぞれ構成のプランを練り、書き始めたら時間内に最後まで書き切ることを重視します。時間が余れば見直しをして文法ミスやスペルミスをチェックします。特にTask 2は配点も高いので、必ず書き終えるよう配分を考えましょう。練習の段階から時計を置いて、プレッシャー下でも書き終えるスキルを身につけておくことが大切です。
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文法と表現の底上げ:短期間でも英文法の重要ポイントはおさらいしておきましょう。例えば時制の一致、冠詞の使い方、仮定法や関係代名詞など、普段間違えやすい文法事項をチェックします。基礎的な文法に不安がある方は、高校レベルの文法書を1冊決めて早めに復習を終えると安心です。また、エッセイで使える表現(言い換え表現や多彩な接続詞など)もストックを増やしておくと、自分の書ける表現の幅が広がります。例えば「重要である」を表す際に「important」だけでなく「crucial」「significant」などと言い換えられるようにしておく、といった具合です。語彙と文法の底力がつけば、短期間でもライティング全体の質が向上します。
スピーキング対策プラン
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毎日英語で話す練習:スピーキング力は使わないと錆びついてしまいます。試験までの1ヶ月間、毎日必ず英語を声に出して話す時間を作りましょう。理想的にはIELTS指導に慣れた講師やオンライン英会話で模擬面接を行うのがベストですが、難しければ家族や友人に相手になってもらったり、自分で質問リストを用意して独り言練習するだけでも効果があります。重要なのは英語で話す筋肉を毎日動かしておくことです。発話に慣れておくと、本番でも緊張せずスムーズに言葉が出てきやすくなります。
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パート別の対策:IELTSスピーキングは3つのパートに分かれているため、それぞれにあった練習をしましょう。Part 1(自己紹介的な質問)では想定される質問例(仕事や勉強について、住んでいる町のこと、趣味など)をリストアップし、簡潔かつ明るく答える練習をします。Yes/Noで終わらず、必ず1〜2文付け加えて答える癖をつけます。Part 2(スピーチ)では、過去のトピックカードの例を使って2分間話し続ける練習を繰り返します。始めの1分でメモを取る練習もし、本番さながらにタイマーを使ってスピーチをするのがおすすめです。Part 3(ディスカッション)はPart 2と関連した抽象的な質問が来るので、自分の意見を論理的に述べる練習をします。日頃からニュース記事や社会問題について英語で自分の考えを話すトレーニングをすると、この部分で考えをすぐ組み立てられるようになります。
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録音して自己分析:自分のスピーチを録音して聞き返すと、弱点が客観的に見えてきます。例えば「えーと(uh, um)」が多すぎないか、文法ミスをしていないか、発音が不明瞭な単語はないかなどをチェックしましょう。録音が恥ずかしい場合は、スマホのボイスメモなどを使って自分だけで確認すればOKです。また、可能ならネイティブや試験経験者に音声を聞いてもらいフィードバックをもらうと飛躍的に改善します。指摘された癖(たとえば終始単調なイントネーションになっている、など)は意識して直し、再度同じ質問で録音し直すなど繰り返し練習します。
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流暢さと自信を意識:スピーキングでは、文法の正確さもさることながら流暢に話し続けることが評価のポイントです。もし質問に対して考え込んでしまっても沈黙せず、「That’s an interesting question. Let me think…」などとつなぎのフレーズを使って時間を稼ぎましょう。多少言い直しや文法ミスがあっても、伝わる範囲で落ち着いて話し切る方が高評価に繋がります。また、本番では笑顔ではきはきと答えることを心がけ、自信を持って堂々と英語を話してください。態度や話し方の自信は内容以上に印象を左右します。
以上のように、各セクションごとに対策ポイントは異なります。短期間でのスコアアップには、自分に必要な部分に優先順位をつけて集中的に取り組むことが重要です。次に、毎日の具体的な学習内容と時間配分の例を見てみましょう。
毎日やるべき勉強内容と時間配分(具体例付き)
1ヶ月という短い期間で成果を出すためには、毎日の継続的な学習が欠かせません。忙しい人でもスキマ時間を活用し、計画的に学習時間を確保する工夫が必要です。ここでは、1日の中でどのように勉強時間を配分すると効率的か、具体例を示します。
平日のスケジュール例:
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朝(出勤・通学前後):30分~1時間程度、リスニング学習に充てます。通勤・通学中にイヤホンでIELTSのリスニング音源や英語ニュースを聞く、朝食中に前日の復習として単語帳を眺めるなど、頭が冴えている朝にリスニングと単語を入れると効果的です。
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日中(昼休み・移動時間):15~30分ほど、短い隙間時間で単語暗記やリーディングの一部練習を行います。スマホの単語アプリでボキャブラリーをチェックしたり、前日に読んだ長文の要約を思い出してみたりしましょう。仕事や授業の合間でも、英語に触れる時間を途切れさせないことがポイントです。
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夕方(帰宅途中):仕事や学校が終わった後、帰宅までの電車・バスの中ではリーディング問題を1~2セット解いてみます。紙の問題集を持ち歩かなくても、IELTS対策アプリやオンライン教材をスマホで使えば移動中に読解練習ができます。疲れて集中しづらいときは、英文記事を読んで気になる単語にマーカーを引く程度でも構いません。
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夜(自宅学習時間):まとまった勉強時間が確保できる夜は、ライティングとスピーキング練習に重点を置きます。例えば19:00〜20:00はライティング演習としてTask 1かTask 2のどちらか1題を書いてみる(時間を計って実施)、20:00〜20:30に書いた答案の見直し・自己添削をする。休憩を挟んで21:00〜21:30にはスピーキング練習としてPart 2の質問に対する2分スピーチを数題こなす、21:30〜22:00に録音を聞いてフィードバックをノートにまとめる、という具合です。
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深夜(就寝前):就寝前の15分間ほどは、その日新たに出会った単語や表現をおさらいしましょう。自作の単語カードやノートをパラパラめくり、覚えた知識を定着させます。また、明日の学習計画を簡単に確認し、優先順位を頭に入れてから眠ると計画倒れを防げます。
週末の活用: 平日十分に時間が取れない場合、週末にまとまった時間で模擬試験に挑戦しましょう。土日のどちらかで、午前中にリスニングとリーディングの通し模試(約2時間)を実施し、午後にその復習・分析、さらにライティングとスピーキングも本番同様の形式で練習してみます。例えば土曜日にListening+Readingの模試+復習、日曜日にWriting(60分計測)とSpeaking(15分模擬)の練習といった形です。週末の模試によって自分の進捗を測り、残りの週で強化すべきポイントを洗い出します。
上記は一例ですが、ポイントは毎日欠かさず4技能全てに触れることです。もちろん日によって重点を置く配分は変えて構いません(例えば「月曜はリスニング強化デー」「火曜はライティングに多く時間を割く」など)。自分の弱点に合わせて学習時間のカスタマイズを行い、限られた時間を最大限に活用しましょう。大事なのは「今日は何もしない」という日を作らないことで、一日一日の積み重ねが短期スコアアップには必要です。
弱点補強のための反復練習法
短期間で効率よくスコアアップするには、自分の弱点を的確に補強することが不可欠です。闇雲に全分野を勉強するよりも、得意分野は現状維持程度に留め、苦手分野に時間を多めに配分する戦略が効果的です。ここでは弱点克服のための反復練習法を紹介します。
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初回模試で弱点を洗い出す:勉強を始める最初に公式問題集などで一度模擬試験を解いてみて、自分の各セクションのスコアを確認しましょう。例えばListening 5.5、Reading 6.0、Writing 5.0、Speaking 5.5だった場合、この中ではライティングが一番弱点ということになります。弱点セクションが判明したら、その部分の学習割合を増やします(例:学習時間配分をListening:Reading:Writing:Speaking = 1:1:3:2のように苦手に多く割く)。
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弱点分野の徹底攻略:苦手セクションに関しては、同じタイプの問題を繰り返し練習して慣れることが大切です。例えばリスニングで地図問題が苦手なら、地図問題ばかり集めて連続して練習し、地図を聞き取るコツ(方向や施設名の聞き取りなど)を体で覚えます。リーディングで「Not Given」が判断しにくいなら、その設問が多く含まれる過去問を集中的に解き、解説を読み込んで感覚を掴みます。ライティングでグラフ問題が苦手なら、Task 1の図表問題を毎日1題書いてみて、表現パターンを暗記してしまうくらいやり込むと自信がつきます。
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ミスノートを作る:各セクション共通ですが、間違えた問題や指摘されたミスはノートにまとめて可視化しましょう。例えば、単語のスペルミス、文法誤り、勘違いしていた表現などを書き出し、定期的に見直します。ノートを作ることで自分の弱点リストが明確になり、「またこのミスをしてしまった」ということを防ぎやすくなります。短期間の学習では、以前できなかった問題を後日解き直してできるようになるという改善サイクルを何度も回すことが重要です。
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口と手を動かして覚える:インプットだけでなくアウトプットを伴う反復練習が効果的です。スピーキングであれば、言いにくかった音や表現を集中的に練習し、スラスラ言えるまで何度も声に出す。ライティングであれば、間違えた文法構文を正しく書けるよう例文を何度も書いて暗記する。人間は受け身で読むだけだと忘れやすいですが、自分の口や手を動かして能動的に学習した内容は記憶に残りやすくなります。苦手分野ほどこの「反復」が物を言います。
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徐々に負荷を上げる:最初は難しく感じた問題も、繰り返すうちに慣れて簡単に思えてくるものです。そうなったらしめたもので、次は少しレベルの高い問題や初見の問題にチャレンジし、再び自分の壁を破ります。例えばリーディングで普段6割しか正解できなかったセットが8割取れるようになったら、別の難しめの長文に挑戦してみる、といった具合です。短期間でも段階的に負荷を上げることで、停滞期を作らずスコアの底上げができます。
弱点克服には地道な練習の積み重ねが必要ですが、「できなかったことができるようになる」体験を積むことで自信にもつながります。苦手意識を取り払い、短期集中の勢いで弱点を強みに変えていきましょう。
模試の活用法とスコア分析法
**模擬試験(模試)**は短期間の学習において、自分の進歩を測り効果的に学習を進めるための強力なツールです。ここでは模試の活用方法と、結果の分析の仕方について解説します。
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公式問題集で本番さながらの模試:IELTSには公式から過去問に相当する問題集(Cambridge IELTSシリーズなど)が出版されています。短期間でスコアアップを目指すなら、これら公式問題集をフル活用しましょう。最初の週に1回、そして試験直前にももう1回など、計2〜3回は時間を計って本番通りに模試を実施します。リスニングの音声から始め、リーディング、ライティングまで一気に解き、可能であればスピーキングも友人やオンラインツールで模擬面接をします。本番と同じ順番・時間配分で行うことで、集中力の持続や体力面の調整にも役立ちます。
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スコア結果の分析:模試を受けっぱなしにしては意味がありません。終わった後に自己採点し、各セクションの得点と間違えた箇所を詳細に分析しましょう。リスニングとリーディングでは、不正解だった問題を一つ一つチェックし、誤答の理由を分類します。「単語の意味が分からなかった」「ケアレスミスで聞き漏らした」「設問の勘違い」「文章のこの部分を読み落とした」等、原因を洗い出します。原因に応じて対策も変わりますから、例えば「単語不足」が原因なら直前まで単語を強化、「時間切れ」が原因なら次回は各パッセージにかける時間を見直す、といった改善策を講じます。
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ライティングとスピーキングの評価:これらは自分では点数がつけにくいですが、公式問題集の模範解答やバンドスコアの解説を参考に自己評価してみます。ライティングでは、「課題にきちんと答えているか」「構成が論理的か」「語彙や文法にどの程度ミスがあるか」を確認します。自分の答案を読み返し、言い換え語彙が十分か、アイデアに説得力があるかチェックしましょう。スピーキングは録音して自己診断したり、可能なら英語講師に頼んで評価してもらいます。評価基準(流暢さ、一貫性と論理、語彙力、文法と発音)ごとに、どこが弱いかを分析します。
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フィードバックを次の勉強に活かす:模試で見つかった弱点や課題は、残りの勉強時間で重点的に強化します。例えば模試の結果、リスニングでパート3(学術的な対話)の正答率が低ければ、そのタイプの音源を集中的に聞き込む。スピーキングで「話の展開が単調」と評価されたなら、意識的に具体例や理由を付け加える練習を積む、などです。模試結果から得られた学びを即座に反映させ、次の模試や本番で同じ失敗を繰り返さないようにします。
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スコアの推移を記録する:短期集中とはいえ、模試を複数回行った場合は自分のスコア推移を記録しておきましょう。Listening/Readingの正答数やWriting/Speakingの自己評価ポイントなどをノートやスプレッドシートにまとめておくと、自身の成長が見えてモチベーション維持にもつながります。また、各模試間で改善できた点・新たに出てきた課題をメモしておけば、試験直前に総復習する際のチェックリストにもなります。
模試は実力を測るだけでなく、戦略を修正するための重要なヒントを与えてくれます。短期間のうちに計画→実践→検証→改善というサイクルを回すことで、効率よくスコアを伸ばしていきましょう。
本番直前対策チェックリスト
試験日が目前に迫ったら、学習面と準備面の両方で最終チェックを行いましょう。本番直前に確認すべきポイントをチェックリスト形式でまとめます。
<学習面のチェックリスト>
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重要ポイントの総復習:これまで覚えた単語リストや表現集、ライティングのテンプレート、頻出トピックなどをざっとおさらいしましょう。新しいことに手を出すのではなく、今まで学んだことを100%思い出せるように復習するのが直前期の鉄則です。特に苦手だった部分(例:ライティングで覚えた言い回し、スピーキングで使おうと決めていたフレーズ)は念入りに確認します。
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模擬面接や予想問題で最終練習:スピーキングは、試験直前の日にも軽く口慣らししておくと良いでしょう。パート1想定問答をいくつか声に出して答えてみたり、直前に一人で2分スピーチの練習をしておくと、ウォーミングアップになります。ただしやりすぎて喉を痛めないよう注意してください。また、ライティングの構成テンプレートも紙に書かずとも頭の中でシミュレーションしておくと、本番で焦りにくくなります。
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リラックスと体調管理:最後の追い込みで徹夜勉強したくなるかもしれませんが、本番で実力を出し切るには十分な睡眠が必要です。試験前夜は遅くとも普段どおりの時間に就寝し、当日は寝不足にならないようにしましょう。脳を冴えた状態に保つために、朝食もきちんと摂ります。カフェインの摂り過ぎでトイレが近くならないよう飲み物にも気をつけつつ、ほどよい緊張感で試験会場に向かいましょう。
<試験当日のチェックリスト>
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必要書類・持ち物の確認:受験票や本人確認書類(通常IELTSは有効なパスポートが必要です)は前夜のうちにカバンに入れましたか?鉛筆(またはシャープペンシル)と消しゴム、身分証以外の持ち込みは禁止される物(電子機器など)はカバンに入れていないか確認しましょう。基本的に試験会場で筆記用具は支給されることもありますが、念のため筆記用具は持参しておくと安心です。
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会場までのアクセス再確認:試験会場の場所と集合時間を再度チェックし、余裕をもって出発します。電車の遅延などもあり得るので、予定より早めに着くよう心がけましょう。会場に到着したらトイレは早めに済ませ、受付を済ませてからは試験官の指示に従い落ち着いて行動します。
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Speaking試験の時間確認:IELTSではスピーキングテストが他のセクションと同日または別日になる場合があります。別日程の場合はその日も忘れずスケジュールに入れておきましょう。同日の場合も、リスニング・リーディング・ライティングが終わった後の待機時間など、順番を間違えないよう案内に注意します。
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リラックスして臨む:試験直前は深呼吸し、「ここまでやってきたから大丈夫」と自分に言い聞かせてください。万一リスニングなどで聞き逃しがあっても引きずらない、リーディングで分からない問題があっても切り替える、といったメンタル面の準備も忘れずに。本番では緊張もありますが、適度な緊張は集中力を高めます。程よい集中状態で、自分の実力を最大限発揮しましょう。
以上のチェックポイントを押さえておけば、当日は余計な心配をせず試験に集中できます。しっかり準備を整え、万全の態勢で本番に臨んでください。
練習問題例とTips(セクション別)
最後に、IELTS各セクションの練習問題例と攻略Tipsをいくつかご紹介します。実際の出題形式をイメージしながら、解答のコツを確認しましょう。
リスニングの例とTip
例題:次の会話を聞いて、フォームの空所 1~3 を埋めなさい。(会話の内容:図書館で本を予約する手続き)
空所1:予約者の名前 ________
空所2:電話番号 ________
空所3:受取予定日 ________
Tips:リスニングでフォーム記入の問題が出た場合、解答は1~3語または数字と指定されることが多いです。解答欄を事前に見て、名前や日付、番号などどの種類の情報が来るか予測しましょう。スペルミスに注意が必要な固有名詞(人名や地名など)は、会話中にアルファベットでゆっくり読み上げられる場合があります。聞き取った文字はすぐメモし、見逃した場合は深追いしないで次に意識を移します。また、電話番号は一気に読み上げられるので、あらかじめ数字の聞き取りに慣れておくと安心です。例えば「0」はイギリス英語では「oh」と発音されることなども知っておきましょう。一度聞き逃しても会話は進行するため、引きずらずに次の設問に集中する切り替えも大切です。
リーディングの例とTip
例題:以下の文章が述べている内容が事実かどうか、True(正しい) / False(誤り) / Not Given(記載なし)で答えなさい。
記述:「The research was conducted in the 1990s by a team of international scientists.」
設問:文章中で、この研究が国際的な科学者チームによって1990年代に行われたことが示唆されていますか?
Tips:True/False/Not Given問題では、本文中に明確な根拠があるかを慎重に判断します。上記の例では、本文に「1990年代に国際的なチームが研究を行った」とはっきり書いてあればTrue、真逆の内容(例えば「国内のチームが2000年代に行った」等)が書かれていればFalse、言及自体がなければNot Givenとなります。「Not Given」を見極めるコツは、設問文の主語・動詞・条件が本文に一切触れられていないかどうかを確認することです。焦って推測で判断せず、該当箇所を探しても見つからなければNot Givenとしましょう。また、リーディングでは設問先読みによるターゲット探しが有効ですが、True/False/Not Givenでは文章全体の内容理解も必要です。普段から段落ごとに要点をつかむ読み方をしていると、情報の有無が判断しやすくなります。時間配分に注意しつつ、根拠探しに執着しすぎて他の問題を解く時間を失わないよう、見切りの良さも意識しましょう。
ライティングの例とTip
例題(Task 2):次の問いに対し、あなたの意見を述べなさい。(250語以上)
「大学教育はオンラインで完結できるようになるという意見があります。それに対してあなたは賛成ですか、反対ですか?理由を付けて述べなさい。」
Tips:Task 2の意見エッセイでは、最初に自分の立場を明確に示すことが重要です。上記の例なら、序論で「I disagree that university education can be fully completed online.」のように賛否をはっきりさせます。続く本論では、各段落に一つずつ理由を述べ、それを支える具体例や説明を加えましょう(例:「対面での討論や実験が不可欠である」「キャンパスでの人間関係構築も教育の一部である」など)。段落構成を整然とするために、Firstly, Secondly, Furthermore, On the other hand, In conclusionといった論理をつなぐ表現を適切に使います。字数が不足すると減点対象になるため、必ず250語を超えるよう練習時から意識しましょう。語彙については同じ単語の繰り返しを避け、例えば「important」の言い換えに「essential」「crucial」を使う等、バラエティを持たせます。書き終えたら数分で見直しを行い、スペルミスや簡単な文法ミス(単複のs抜けなど)を確認します。短期間の対策では、使い慣れた表現を武器にするのもポイントです。新しく難しい単語を無理に使うより、確実に正しく使える語彙・構文でミスなく書き切る方が結果的に高スコアにつながります。
スピーキングの例とTip
例題(Speaking Part 2):次のトピックについて1~2分間で話してください(1分準備時間があります)。
Describe a skill you have learned recently that you think is useful.
You should say:
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what the skill is
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how you learned it
-
how long it took to learn
and explain why this skill is useful.
Tips:Part 2では、与えられたトピックカードに沿ってできるだけ話を広げて2分間話し続けることが求められます。上記の例では、「最近習得した役に立つスキル」とありますので、まず話す内容の構成を1分で考えメモします。例えば「料理」と決めたら、箇条書きで「簡単な料理(目玉焼き)も作れなかった」「YouTubeで料理動画を見て勉強」「毎日少しずつ練習して1ヶ月で基本習得」「自炊できるようになり健康的・節約にもなる」と要点を書き留めます。スピーチをする際は、カードに書かれた項目(what, how, how long, why)に触れつつ、自分の体験談を交えて話すと具体性が増します。緊張して早口になりすぎないように、適度に区切りながら話すと良いでしょう。また、1分ほどで話し終わってしまいそうな場合は、「エピソードを詳しく描写する」「そのスキルに関連する別のメリットにも触れる」など話を発展させ、時間いっぱい使うことを意識します。スピーキングでは完璧な文法よりもコミュニケーション意欲と一貫性が評価されるため、多少言い間違えても落ち着いて言い直し、最後まで伝えようとする姿勢が大切です。日頃から様々なトピックで1人スピーチの練習を重ね、どんなテーマでも話せる引き出しを増やしておきましょう。
まとめ:短期集中でも確実に伸ばすために
忙しい中で1ヶ月という短期間にIELTSのスコアを+1.0向上させるのは簡単なことではありません。しかし、本記事で述べたように、戦略的な学習計画と効率的な勉強法を実践すれば、短期集中でも着実に力を伸ばすことが可能です。
ポイントは、各セクションの傾向を理解し、自分の弱点を見極めてメリハリのある対策を行うことです。毎日のスキマ時間も活用して4技能全てに触れ、アウトプット重視で英語力を総合的に鍛えましょう。模試を定期的に受けて進捗を測りつつ、その結果から学習法を微調整することで無駄のない学習ができます。また、短期間だからこそ体調管理やメンタルケアも怠らず、当日はベストコンディションで臨んでください。
「短期集中でもここまで伸ばせた」という成功体験は、今後の英語学習において大きな自信となります。IELTSの高スコアは留学やキャリアの新たな扉を開く切符です。限られた時間を最大限に活かして目標スコアを達成し、ぜひ次のステージへと羽ばたいてください。あなたの1ヶ月の努力が実を結び、IELTSで目標スコアを勝ち取れることを心から応援しています。