「どうやったら英単語を増やせるの?」
英語学習者であれば必ず抱く疑問ですよね。
ほぼ全ての指導者は単語帳を買って覚えることを提案します。
しかし、書店に行っても英単語関連の本が多すぎて、どれが良いか自分では判断できないという経験された方も多いのではないでしょうか。
この記事では、英語指導のプロである筆者が、英単語に関連した本を3冊選び、それらの良い点と残念な点を伝えながら評価をしていきます。
今回選んだ3冊は、前提として英単語を覚えるのに効果がある、または役立ちそうと筆者が感じたものを選んでいます。
英語の単語帳には、学習者がほぼ必ずと言ってよい程薦められる素晴らしいものがいくつもあります。しかし、今回はそういった王道と呼ばれる教材は対象から外し、下記の要件を満たすものを、筆者が書店で実際に手に取って選びました。
1.2020年~2022年に出版されたものである
2.単語とその訳と例文が記載された単語帳ではない
3.TOEICや英検といった資格試験用のものではない
今回選んだ3冊を読み、下記の評価ポイントをそれぞれ5点満点で採点しました。
①分かりやすさ
②値段
③内容
④総合点
今回の3冊は、書店にある多くの英単語関連本の中から選んだものであり、その時点で筆者の興味を惹いたことになります。
参考書を評価するという記事のために評価はつけていますが、これらはあくまでも筆者がプラスやマイナスと感じたということであって、学習者によっては評価が異なる可能性もあります。
これを踏まえた上で、早速1冊目の本を一緒に見ていきましょう!
英単語本①:これを英語で言えるかな?こあら式 意外と知らない英単語図鑑
分かりやすさ:★★★★★
値段:★★★★☆
内容:★★★★★
総合点:★★★★★
この1冊は2022年1月に出版されたものです。255ページで、価格が1,500円+税です。
対象者の記載はありませんが、初級から上級の学習者までが単語を学べる内容となっています。筆者が書店で軽く見た時に、「あれ?この単語は英語で何て言うんだっけ?」と思うものがあったので、対象者のレベルは幅広いと言えます。
この本は、「こあらの学校」というTwitter,、InstagramやYouTubeで英語関連情報を発信している方が書かれたものです。
「こあらの学校」の校長のこあたんが、可愛らしい絵で最初から最後まで登場するので、それだけでこの本を取るハードルが下がります。
それでは早速「これを英語で言えるかな?」のプラスな点とマイナスな点を見てみましょう!
プラスな点①:知りたい単語が直ぐに選べる
1つ目のプラスな点は、知りたい情報を簡単に見つけられるという点です。
9つのテーマに分かれた構成になっており、知りたいテーマに関連する単語をまとめて覚えることができます。
9つのテーマは、①感情・五感 ②日常生活 ③料理 ④学校生活・友人づき合い ⑤身体・健康 ⑥おしゃれ・ファッション ⑦仕事・ビジネス ⑧算数・数学 ⑨動物 です。
例えば、多くの日本人が和食について話す際に、特に寿司のネタで困りますよね。これは上級者でもかなり困るものですが、③の料理の章では、「覚えておきたい寿司ネタ」というユニットで、「はまち」や「こはだ」、「かんぱち」といった寿司ネタが一発で分かります。
テーマが決まっていて、その中で今回のように「寿司ネタ」という章を見ると、1つの単語を確認して、関連した単語を芋づる式で確認できるので、「そう言えば、あのネタは何て言えば良いのかな?」と思いながら一から調べるといった手間も省けます。
プラスな点②:とにかくイラストが可愛くて分かり易い
2つ目のプラスな点は、この本の大きな売りでもあるイラストです。
コアラのこあたんとカンガルーのるーたんが登場しますが、両方ともとても可愛いです。また、全部ではありませんが、多くの単語を表すイラストが描かれている点も素晴らしいです。
違いが分かり難い単語でも、そういったイラストを見比べることで、違いが分かります。
例えば、日常生活がテーマの章では、「意外と言えない天気の表現」があります。
そこに、「fog(濃霧)」「mist(霧)」「haze(薄霧)」がありますが、コアラのこあたんが立っているイラストが、左から凄くぼやけている、少しぼやけている、ほぼぼやけていないとなっているので、単語と日本語訳だけでなく、イラストも合わせて記憶することで、単語が覚えやすくなります。
こういったイラストはこの本の大きな売りです。
プラスな点③:充実したコラム
この本には、それぞれの章の最後に、合計4ページのコラムがあります。
コラムと言っても文字がびっしり書かれているのではなく、通常のユニットと同じように、イラストを交えながら、知っているととてもためになる単語の紹介をしています。
例えば、「英語の名前・ニックネーム」というコラムがありますが、AlexやAndyといった日本人でもよく知っている名前の多くは、実はニックネームであり、それらの本当の名前をそのコラムでは紹介しています。
AlexはAlexander、AndyはAndrewであるといったことは、通常の単語帳では知ることはほぼないと思います。
こういった日常生活の中で 学ぶような単語や情報を、コラムで知ることができるのは、この本のプラスな点です。
マイナスな点①:単語の文中での使い方が分からない
単語を覚える時には、文でどのように使うのか知ることも大切です。
「これを英語で言えるかな?」は残念ながら、図鑑という扱いのため、例文はありません。よって、文の中でどのように使うか、単語を知るのと同時に覚えることができません。
名詞が多くなっていますが、形容詞や動詞も含まれます。
こういった単語をどのように使うのか確認できれば、更に良かったのではないか感じました。
マイナスな点②:難易度にバラツキがある
2つ目のマイナスな点は、音源がないという点です。
これも図鑑なので音源がないと言ってしまえばそれまでですが、紹介してる単語の中には、綴りを見るだけでは発音が正しく言えないであろうものも多くあります。
例えば、guffaw(ゲラゲラ笑う)やotorhinolaryngology(耳鼻咽喉科)といった単語は音源無しでは結構難しいのではないでしょうか。
単語帳には、CDまたはダウンロードできる音源がついているものが多いので、そういった意味では、少しマイナスな点と言えます。
英単語本②:微妙な違いがスーッとわかる 英単語使い分け図鑑
分かりやすさ:★★★★☆
値段:★★★☆☆
内容:★★★★☆
総合点:★★★★☆
2冊目の本は2020年11月に出版された「微妙な違いがスーッとわかる 英単語使い分け図鑑」です。447ページで、価格は1,800円+税となっています。
この本を持って最初に気になったのが重さです。447ページということでページ数はありますが、良い質の紙を使っているのか、とても重く感じ、気軽に持ち歩けるというものではない印象を持ちました。
対象者に関する記載はありませんでしたが、扱っている単語を見るとかなり難易度が高いものもありましたので、全てのレベルの学習者が対象と言えます。
日本語の単語は難しいものはないので、初心者の方は紹介されている同じか似ている意味を持つ英単語の中でも、難しいものに関しては参考にする程度にして、使えそうだと思う単語を覚えるようにすれば良いと思います。
この本の一番の特徴は、タイトルにある通り、単語の使い分けを理解しながら単語を学ぶというものです。
例えば、「見る」と言ってもsee, watch, lookという3つの英単語が頭に浮かぶと思います。それらの単語の違いを確認しながら覚えていくという形です。
それではこの本のプラスな点からご紹介します。
プラスな点①:品詞を章で分けて紹介している
今まで他にも似ている英単語の違いを確認して覚えるという本はいくつも読んだことがあります。
しかし、それらの本には、扱う単語を出す順番に特にこだわりがないというものや、品詞によって本が分かれているというものが多くありました。
この本は、下記の通り、品詞と表現で4つの章に分けられていました。
第1章 似ている動詞
第2章 似ている形容詞
第3章 似ている名詞
第4章 その他の似ている表現
このような分け方になっているため、品詞で混乱することはないというのはプラスな点と言えます。
プラスな点②:マメ知識が勉強になる
単語の中には、「マメ知識」が含まれているものが多くありました。
このマメ知識には、扱っている単語の例外的な使い方や派生した単語の紹介などがありました。このマメ知識も実際にそれらの英単語を会話等で使う際に役立つ情報で、学習者にはプラスになるものばかりと感じました。
例えばcuteという単語はどのように使うと思いますか?
訳は「かわいい」が頭に浮かんだのではないでしょうか。
Cuteは、一般的には小さい子供や動物をかわいいと言う際に使うことが多い単語です。
しかし、実はこのcuteという単語は、意外にも大人の男性に向けても使うことができるのです。
その場合、「かっこいい」や「ハンサム」といった意味になります。
こういった情報が、このマメ知識に書かれているので、単語の意外な使い方や辞書では書かれていない可能性がある使い方等も知ることができます。
プラスな点③:扱う英単語のイメージを紹介している
3つ目は、扱う英単語を紹介する際に、日本語訳のみだけではなく、「単語のイメージ」が含まれているという点です。
例えば、「適切な」という単語に対して、いくつか英単語が紹介されていましたが、その中にはappropriate, properとrightがありました。
それらの単語には、下記の訳が一緒に記載されていました。
appropriate: 適切な、ふさわしい
proper: 適した、適切な、ふさわしい、好ましい、正しい
right: 適切な、適当な、ふさわしい
これらの訳を見ても、全てに「適切な」と「ふさわしい」とあるため、これだけだと違いが分からないですよね。
しかし、それぞれの単語に「単語のイメージ」と例文が加わると、一気に違いが分かるようになります。これらの「単語のイメージ」は、下記の通りです。
appropriate: 状況にぴったり合っていて正しい
proper: 基準に沿っていて適切な
right: 間違いない
こういったイメージがあることで、違いがよりしっかりと分かるようになります。
マイナスな点①:単語の日本語訳が同じ
英単語には日本語訳が書かれているとお伝えしましたが、これが1つ目のマイナスな点です。
これはどういうことかと言うと、単語の日本語訳を見ることで、むしろ違いがより分からなくなってしまう印象を受けました。
例えば、「退屈な」という形容詞ですが、本では3つの英単語を紹介していました。
boring以外では、dullとtediousという単語が挙げられていました。
このdullとtediousの日本語訳は下記のようになっていました。
dull: おもしろくない、退屈な、あきあきする、単調な
tedious: 退屈な、うんざりする、あきあきする
これらの訳を見ると、「退屈な」と「あきあきする」が両方の単語に含まれています。
「退屈な」の英単語を比べることになっていたので、「退屈な」が含まれることは自然ですが、「あきあきする」まで同じになると違いが分からなくなってしまいます。
個人的には、1つずつ日本語訳を入れず、もう少し解説を充実すれば良いのではないかと思いました。
マイナスな点②:説明で混乱するものがある
2つ目のマイナスな点は、単語の説明の中には、少し読者を混乱させてしまう可能性があるものがあるという点です。
例えば、「価格」には複数の英単語が記載されていましたが、その中にpriceとchargeがありました。
説明には、priceは、「商品やサービスに対して支払わなければならない金額」、そしてchargeは、「サービスに対して請求される金額」とありました。
元々ある程度違いが分かっている人には、これでも違いは分かるかもしれませんが、全く違いが分からない人からすると、この説明では混乱してしまう可能性があります。
こういう意味でも、もう少し説明が詳しく記載されていると良いように感じました。
扱っている単語の数が多いので、日常の英語学習の中で、ふと違いを知りたいと思った単語があった場合、それらを簡単に調べることができる1冊です。
英単語本③:英単語の鬼100則
分かりやすさ:★★★☆☆
値段:★★★☆☆
内容:★★★☆☆
総合点:★★★☆☆
最後の1冊は、2021年5月に出版された「英単語の鬼100則」です。こちらは453ページで1,800円+税とページ数と価格共にそこそこある本です。
この単語の本は、3300の単語と40の学習法を紹介することで、1万語分の語彙力が身につくという点に加え、知らない単語に直面した際にも意味を考える思考力も身につくことが売りとなっています。
この本の対象者は、名詞や形容詞といった品詞の確認をしていることからも、恐らく全レベルということになっていると思います。しかし、全体的な内容を確認すると、初級者や中級者は難しく感じてしまうのではないかと思いました。
この1冊を選んだ理由は、単語を覚える方法やルールが100も紹介されているということで興味を持ったからでした。
それではプラスな点とマイナスな点を見てみましょう。
プラスな点①:英単語を覚えるヒントが100個ある
本の著者は、英単語は単語帳を見て必死に「覚える」のではなく、「これ何て英語で言うのだろう?」と興味を持ったものを楽しみながらネット検索等で調べて、忘れたらまた調べれば良いと述べています。要するに辛いと思いながら暗記をするのではなく、面白がりながら調べて自然に語彙力を上げるということです。
この本では、単語を面白がって増やすヒントを集めているので、それらを読むことで、英単語に興味を持ったり、それ知っていると単語が覚えやすいと感じられるようになっています。
例えば、英語(アルファベット)、中国語(漢字)、韓国語(ハングル)は1つの文字システムを使う言語で、それに対して日本語は、ひらがな、漢字、カタカナと3つの文字システムを使う言語という違いあり、3つの文字システムのメリットとデメリットを説明していました。
「うちとけた」「カジュアルな」「多いとこどもっぽい」といったひらがなの印象と「フォーマル」「格調の高い」「多いと仰々しい」といった漢字が与えるイメージを述べ、同じ意味を持つ「ひらがなっぽい英単語」と「漢字っぽい英単語」を伝えて興味を惹くことができていました。
英単語を覚えるために使えるものから、英単語を使う際に参考になるヒント等が100あるということが1つ目のプラスな点として挙げられます。
プラスな点②:Q&A形式で始まっている
各ユニットのタイトルのみだと何について書かれているユニットか分かり難いということもあります。
しかし、Q&A形式で質問があれば、何について書かれたユニットかが直ぐに分かります。
構成としては、質問に対する簡単な回答があり、その後に単語をいくつも紹介しながら詳しく説明するといった形になっています。
この後半の沢山の単語を述べる部分に関しては、良い場合もあれば、少々逆効果になってしまう場合もあるように感じますが、各ユニットの冒頭で、Q&A形式でポイントを明確にしている点はプラスと言えます。
プラスな点③:アルファベットのイメージを持たせている
3つ目のプラスな点は、アルファベットにイメージを持つことを勧めているという点です。このポイントは個人的に面白いということで選びました。
分からない単語は、もし接頭辞と接尾辞で分けられる場合には、分解すると理解するヒントになります。
この本では、omnidirectional(全方向の)という単語が例に挙げられていました。
この単語が分からない場合には、omni(全)+direction(方向)+al(形容詞化)と分解できるため、これらが分かれば、「全方向の」という意味を持つ形容詞だと気付ける可能性があります。
しかし、単語の中にはこのように分解できないものも多く存在します。
そういったものを少しでも理解しやすくするために、アルファベットのイメージやその単語を覚えるためのエピソードを作って覚えると良いとあります。
本には、アルファベットのイメージが書かれているので、それを参考にすると「こういう考え方があるんだ」と思えるかもしれません。
個人的には、ちょっと無理があるかなと思うイメージもありましたが、覚え方としては面白いと感じたのでプラスな点として挙げてみました。
マイナスな点①:見せ方で圧倒されてしまう可能性がある
1つ目のマイナスな点は、単語の見せ方で読者が圧倒されてしまう可能性があるという点です。
単語帳の場合、英単語、日本語の意味、例文とその対訳がセットになり見やすく並べられているので、単語の数は多くても、目に飛び込んできた情報で圧倒されるということは少ないと思います。
この本は、「単語帳ではない、単語の本」ということで、従来の単語帳のような構成ではなく、読み物としての構成になっており、文の中で多くの単語が紹介されているという形になっています。
この書き方だと、もちろん個人差はありますが、びっしりと書かれた文書の中に、漢字、ひらがな、カタカナ、そして英単語が混ざっているため、見た瞬間に圧倒されてしまうことが考えられます。
もう少し与える印象も考慮できていれば、実際に購入して読んでみようと思う人も多くなるのではないかと思いました。
マイナスな点②:100則が対象者を減らしている可能性がある
2つ目のマイナスな点は、タイトルにある100則です。
書店でこれを手に取った際は、「100もあるのか。どんなものがあろうのだろう」と興味を持って、むしろプラスな点という印象を持ちました。
しかし、実際に読んで、100のポイントは多すぎると感じました。
もちろん興味深いものが多く、読み物として面白いと感じることも多くありました。
しかし、100則にするために作ったのではないかと思うものがあり、単語を覚えるのに役に立つのかなと疑問に思うポイントも少なくありませんでした。
また、分かる人は面白いと感じても、内容的に難易度が高すぎるものも多くあるので、初級者や中級者、英語に苦手意識を持っている学習者は、難しくて自分に合ったものではないと感じてしまう可能性があります。
興味深いものも多くあるにもかかわらず、100則にすることで、対象者を減らしてしまう可能性がある点は残念なポイントと感じました。
まとめ
ご紹介した3冊はここ2年程に出版された単語関連の本のため、面白いアプローチをする本のように感じました。
いずれの本もとても参考になる点が多くあるので、「自分にとっては100点満点の教材」と思う人もいるかと思います。
英単語の学び方は、人によって適した方法が異なります。
単語帳をひたすら暗記する方法が合っているという人もいれば、今回ご紹介したようなイラストと一緒に覚える方法、日本語から似ている英単語の違いを覚える方法、または単語を覚えるためのヒントを知る方法の方が、より効率的に単語を頭に入れることができるといった人もいます。
単語の本を選ぶ際は、この記事にあるような評価を参考にしつつも、必ずご自身で本を手に取って目次といくつかのユニットを読んで選ぶようにしましょう。