野球のメジャーリーグやバスケットボールのNBA、サッカーのセリエAなど、世界で活躍する日本人選手が増えています。では女子ゴルフ界で思い浮かぶ選手は誰でしょう。最近の活躍から東京オリンピックで銀メダルを獲得した稲見萌寧選手、2020年の全英オープンで優勝した渋野日名子選手も記憶に新しいですよね。しかし、実は世界ランク1位になったこともある選手がいるのをご存じですか。それは、宮里藍さんです。 宮里さんはゴルフの成績だけでなく、その英語力も注目されていました。今回は宮里藍さんの英語力とその英語勉強法についてご紹介します。
◆宮里藍さんプロフィール
1985年6月19日生まれ
沖縄県出身
東北高校卒業
プロゴルファー。
4歳からゴルフを始め、アマチュアとして出場した2003年の「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」で優勝し、プロに転向。東北高校3年生だったため史上初の“高校生プロ”として注目を集める。
米国女子ツアーで9勝をあげ、世界ランキング1位も経験。
2017年5月に現役引退を表明し、同年9月に現役生活を退いた。 2018年に結婚し、2021年に第一子となる長女を出産。お兄さんの聖志さん、優作さんもプロゴルファー。
どうして宮里藍さんは英語がしゃべれるの?
ざまざまな動画チャンネルで芸能人やスポーツ選手の英語力について検証していますが、なかでも評価が高いひとりが宮里藍さんです。試合前後に行われる記者会見や、表彰式などではスピーチも英語で行わなければいけない状況で、宮里さんはとても堂々としています。 アメリカでの最後のトーナメント時のインタビューがこちらです。
しゃべるスピードも速いし、発音もかなりきれいですよね!
自分の言いたいことをすらすらと話している印象があります。ある程度アメリカに住んでいれば…というレベルではないのが分かりますよね! 宮里さんはアメリカに渡った当時、「1年でペラペラになってやる!」と、熱心に英会話の勉強をされたそうです。でもすぐにペラペラになることは難しく、2017年の大会前の記者会見でこんなことを言っていました。
「ルーキー時代にクリスティナ・キムとジェニファー・ロザレスに夕食に誘ってもらったとき、私はまったく英語ができなくて。小さな辞書を持参したのが米ツアーでの最初の思い出です。」
まったく英語ができないときに夕食に誘われて参加することがまずすごくないですか?(英語しゃべれないし…)とお断りしてしまいそうですが、そこで辞書をもって参加するのがすばらしい!英語がしゃべれる人は、こうやって自分から英語を話す場所に飛び込んでいくのでしょうね。
高校前に英語での日常会話はOKだった?
宮里さんは中学卒業後に沖縄を離れ、宮城県の東北高校へ進学します。数多くのプロ選手を輩出している東北高校のゴルフ部に入部しました。3年生の時には主将を務め、同校女子部初の全国大会優勝も果たしています。
その東北高校に進学前に見学で同校を訪れた宮里さんは、監督から校内の施設を案内してもらいました。その当時、東北高校にはインターナショナルスクールがあり、英語しか話してはいけないルールがありました。なんとそこで宮里さんは生徒さんたちと英語で会話をしていたそうです。高校入学前には日常会話程度の英語力が身についていたということですね。
さらに、入学後のシーズンオフには放課後、インターナショナルスクールで授業を受けていたそうです。すでに将来海外でプレーすることを見据え、英語力を養っておこうと努力されていたのですね。
通訳を制し記者会見で見せた19歳の度胸とは?
宮里さんは2006年にアメリカツアーに本格参戦していますが、その前年の2005年、欧州ツアーに参加する記者会見で素晴らしい度胸を見せてくれます。 当時19歳だった宮里さんは英語の猛勉強中でした。その記者会見には当然通訳の方も参加していましたが、なんと宮里さんは
「すいません。いけるところまで自分でやってみたいんです」
と、通訳の方に断りを入れて自分で英語での質問に答えたそうです。分からない質問や言い方については通訳の方に確認しながらですが、あくまでも自分が英語で答えたそう。まだ決して流暢ではない英語でしたが、必死に自分で答える姿に海外のメディアの方たちもゆっくりと質問するなどしてくれたということです。記者会見という大きな場で自分の英語力を試すなんて、なかなかできないですよね!でもそこで得られる「自力で対応した(失敗したとしても)」という経験はそれからの英語学習のモチベーションになることでしょう。
下の動画は、その記者会見から5年後の2010年の記者会見です。すでに流暢な英語を披露していますが、分かりにくい質問の時には通訳さんに訳してもらい、答えは自分で英語で回答。また英語で答えるには難しいときには通訳さんにお願いしたりする様子がありました。すべてを通訳さんに任せないところ、好感が持てますよね。
そして会見のなかで記者の方から「英語が素晴らしいけれど、どのポイントで通訳さんに代わってもらうのですか?」と聞かれています。そこで宮里さんは
「いつも英語で答えようとベストを尽くしているのですが、いったん日本語で考えてしまうと英語が出てこなくなるので、そのポイントになったら変わります。今みたいに」
とこちらも上手に答えています。
宮里さんが実践した英語勉強法は?
宮里さんは、東北高校の見学の際や19歳の会見のときもそうだったように、何事にも臆することなく挑戦します。その彼女が実践していた英語勉強法は、
1.恥ずかしがらずに積極的に話すこと
英語に自信がないとなかなか難しいですが、話すことで英語力は飛躍的に伸びます。英語でコミュニケーションが取れた時の喜びは自信になるだけでなく、もっと勉強しようというモチベーションになります。宮里さんは、初対面の人にも積極的に話しかけるよう心掛けていたそうです。
2.積極的に海外の人と友だちになること
宮里さんはアメリカに拠点を移す前から、日本でも外国人選手と積極的に友だちになっていたといいます。友だちになり連絡先を交換し、その後もメールや電話などやり取りをする。これは山下智久さんが、ネイティブの友だちとの連絡はすべて英語にする。と言っていた勉強法と同じですね。これはスピーキングとリスニングだけでなく、ライティングとリーディングの力も付く素晴らしい方法ですよね!
3.英語字幕付きで映画や海外アニメを見ること
リスニング力をつけるために、テレビでCNNやBBCを流しているという人、いませんか?宮里さんの勉強法も少し似ていますが映画や海外アニメにするところがポイントです。実際のところニュースだと難しすぎて頭に入ってこなかったりしますよね。でも比較的やさしい子ども向けの番組などを選ぶと、日常生活で使えそうなフレーズが見つかりやすいと思います。
さらに、「みんなのゴルフダイジェスト」で以前、プロゴルファーのみなさんに読んでいる本を聞いたところ、宮里さんは英会話の本を読んでいると答えました。そしておすすめの本は『英語の雑談力があがるちょっとしたフレーズ』と紹介したそうです。こんな本を紹介するあたり英語力を磨いていたのが分かりますよね。
宮里さんが後輩にした具体的な英語勉強法のアドバイスは?
近年男子女子ともに海外で活躍する選手が出てきているプロゴルフ界ですが、英語に不安を持つ選手は多いようで、先輩として宮里さんは英語の勉強について聞かれることも多いそうです。
昨年マスターズで優勝し日本人として初のメジャー制覇を遂げた松山英樹選手には、ひとつ前で紹介したように、
- 正確さは気にせず、どんどんしゃべりかけること。
- 英語圏の友人を作って、話す機会を増やす。
- 家の中では英語のアニメを流しつづける。
- 米で使う携帯を買って、ツアーで仲よくなった選手とメル友になること。
などのアドバイスをしたそうです。
これは一昨年AIG全英女子オープンで優勝した渋野日名子選手とのイベントの様子。「一番心配しているのは英語…」と言う渋野選手に対して、
「英語は、大丈夫です。どうにでもなります。食事と一緒です。」
と笑い飛ばしていました。度胸がありますよね!
英語力だけでなく人としても素晴らしい宮里藍さん
ゴルフの成績や英語力だけでなく、その振る舞いも素晴らしかった宮里さんは、2012年に 「その振る舞いと精神が女子プロの模範」であることが受賞者の条件である、『ウィリアム&モージー・パウエル賞』(選手の互選により決定)を受賞しています。
また、外国人選手と英語でコミュニケーションをとり、2015年には全米女子プロゴルフ協会(LPGA)のプレーヤー・ディレクターに立候補。投票の結果、ツアーと話し合いを行う際の選手の代表役に就任し役割を果たしました。
ここに、宮里さんが現役を引退する際にそれを知ったほかの選手たちのインタビュー映像があります。
多くの選手から愛されていたのが分かりますよね。
2018年にご結婚され2021年に長女を出産された宮里さん。妻となりママとなり、そしてプロゴルファーでもある彼女の今後の活躍がまだまだ楽しみですね。