英語の文を読んだり、聞いたりした時に、日本語で理解するために、英文を何度か頭の中で繰り返していませんか?
「英語は英語のままで理解すべき」という声を聞くことがあります。もちろんそれは理想ですが、特に英語学習を始めた頃、または大人になって再開した学習者は、英語を英語のままで理解することは不可能です。むしろ英語を英語で理解するには、ある程度のレベルに達していない限り難しいことです。よって、日本語で理解しようとすることは自然と言えます。
ただ、英語学習のどの段階においても、もし日本語で理解するにしても、英文を何度も繰り返し読んで訳す「戻り訳」が、癖にならないようにすることが重要です。
これが身についてしまうと、いつまで経っても英語を理解するのに時間がかかってしまいます。
これを無くすために「スラッシュリーディング」はとても効果的です。
ちなみに「戻り訳」が起こる原因には、英語と日本語の語順の違いがあります。
スラッシュリーディングのやり方を見る前に、まずは語順の違いから見てみましょう。
英語と日本語の語順の違い
まずは下の英文を読んでみてくださいね。
We went to Shinjuku yesterday to get a present for my mom.
これを日本語にして内容を理解しようとした場合どうなりますか?
昨日、私達は私の母のプレゼントを買いに新宿へ行きました。
多少の違いはあっても、大体このようになるのではないでしょうか?
これらの英語と日本語の文を見ると、情報の位置が異なることが分かりますよね。
数字を入れて、比較してみましょう。
①We ②went to Shinjuku ③yesterday ④to get a present ⑤for my mom.
③昨日、①私達は⑤私の母の④プレゼントを買いに②新宿へ行きました。
英語が①→②→③→④→⑤だとした場合、これらの情報(語句の順番)を日本語の順番に並び替えると、③→①→⑤→④→②になっているのが分かります。
これはあくまで一つの例ですが、英語の文を、しっかりとした日本語に訳した場合、これだけ情報の位置が変わる可能性があります。
情報の位置が異なれば、単語の順番(語順)が変わるので、正しい日本語に訳そうとした場合、何度も英語の文を読みながら「戻り訳」することになってしまいます。
これをすることで、日本語で情報を理解するまでに時間がかかってしまうことにつながります。
ではどうすれば良いのか?
そこで登場するのが「スラッシュリーディング」です。
スラッシュリーディングのやり方
スラッシュリーディングの「スラッシュ」とは、「/」斜線を指します。
これを使って、文を意味の塊ごとに区切り、前から理解するための勉強法をスラッシュリーディングと言います。
先ほどの英文にスラッシュを入れて、意味の塊で区切ってみましょう。
We went / to Shinjuku / yesterday / to get a present / for my mom. /
では、これを意味の塊ごとに日本語に訳しながら、前から理解してみましょう。
私達は行きました / 新宿へ / 昨日 / プレゼントを買いに / 私の母の /
いかがですか?日本語としてはおかしな順番になっていますが、意味は全く問題なく理解できましたよね。
翻訳をするのであれば、奇麗な日本語に訳す必要はありますが、会話を理解する際は、内容が正しく理解出来れば問題ないですよね?よって、聞こえたり、書かれている英文を意味の塊ごとに、前から理解することで、「戻り訳」を無くし、理解する時間を劇的に減らすことが出来るのです。
では、この「意味の塊」はどのように作れば良いのか?という疑問が出てきますよね。
これに関しては、「絶対にここで切らなければならない」というものがある訳ではありませんが、こういった部分で切ると良いという目安はあります。
また、学習者の英語のレベルによって、意味の塊の長さは変わります。最初は短めの意味の塊から少しずつ長めの塊にしていくことを意識しつつ、いずれは意味の塊を意識しなくとも文の前から情報を理解することを目標にしましょう。
では、どのように意味の塊を作れるか例を見ながらいくつか確認してみましょう。
句読点の後
コンマやピリオドといった句読点の後にスラッシュを入れることができます。
It was sold out, / so I couldn’t get it.
前置詞句の前
In, on, atといった前置詞の前にスラッシュを入れることができます。
We found the book / in the car.
関係代名詞と関係副詞の前
文中に入るwhatやwho, whereといった関係詞の前にスラッシュを入れることができます。
I think Jeff is the one / who called you last night.
that節の前
that節の前にスラッシュを入れることができます。
I was told / that I passed the test.
to不定詞の前
「~すること」や「~するため」といった意味を持つto不定詞の前にスラッシュを入れることができます。
We stopped at the store / to pick up some food.
接続詞の前
and, butやbecauseといった接続詞の前にスラッシュを入れることができます。
I went to the office, / but there was nobody there.
主語が長い場合にはその後
主語が長くなっている場合にはその後にスラッシュを入れることができます。ただし、既に紹介した他の目安が含まれている場合、そこで切ることも可能です。
The English book written by John Smith / was sold out.
長い目的語や補語の前
目的語や補語が長い場合には、その前にスラッシュを入れることができます。
He couldn’t find / the soft green sweater
これらはあくまで目安なので、参考として覚えておいてくださいね。
スラッシュの入れ方はこのような形になりますが、次は、実際にスラッシュリーディングを行う時の手順をお伝えします。複雑ではないので、スラッシュの入れ方が分かればあとは練習するだけです。
①英語の記事や会話文のスクリプトを用意し、スラッシュを入れて意味の塊を作ります。
②「意味の塊(英語)」→「意味の塊(日本語)」の順で文の頭から意味を確認していきます。分からない単語や表現は調べましょう。
③繰り返し②の作業を行い、英語の意味の塊を読んだ際、しっかりとした日本語に訳さなくても意味がスッと浮かぶようにしましょう。
④音源がある場合、③で自信を持って内容を理解出来るようになったら、耳で聞いても前から理解出来るようにしましょう。
これらのステップを、1つのスクリプトを使って、自信を持って理解出来るようになるまで行いましょう。理解が十分と判断した段階で次のスクリプトに移りましょう。
これを習慣として行うことで、徐々に英語を聞いたり読んだりした際に、文を前から理解することが出来るようになります。
スラッシュリーディングにおすすめの教材
最後に、スラッシュリーディングにはどのような教材がおすすめかお話しします。
結論から言えば、レベルに合ったものであればどのようなものでも問題はありません。
英語があまり得意でない方が、頑張りたい気持ちが強すぎてCNNやエコノミストといった難易度の高い記事を使っても長続きはしません。
分からない単語はあるけれど、調べれば内容は理解できるような記事、そして長さもそこまで長くないものを選ぶと良いでしょう。
扱う内容も学習者自身が興味を持っているもので結構です。例えばサッカーが好きであれば、英語で書かれたサッカーの記事をインターネットで見つけて使っても良いでしょう。
また、TOEIC受験のために勉強している学習者であれば、公式問題集のPart3やPart4のスクリプト、Part7の文書を使っても良いでしょう。
TOEICの音源も使えば、更にリスニングで前から理解するという強化にもつながるので一石二鳥ですね。
まとめ
スラッシュリーディングは、英語を英語の順番通りに理解するためにとても効果的な勉強法です。
もし英語の文を理解するのに時間がかかってしまうという悩みを抱えている場合、ぜひこのスラッシュリーディングを習慣化してみてください。
徐々に時間をかけずに英語の文を理解出来るようになりますよ。