“いい講師”の条件とは?
英語を話せるようになりたいという最終目標がある場合、オンライン英会話で学習効果を上げるのに最も重要なポイント、それはなんといっても「継続」でしょう。そして、その継続のカギを握るのは講師です。いい講師に出合えればそれだけ学習効果が高くなることは自明の理。問題は、“いい講師”とはどういう人か、というところです。DMM英会話を始めて5年目に突入した筆者の子どもと、筆者の周囲の人々の例から考察してみました。
前提として知っておきたいのは、DMM英会話ではさまざまな国の講師が在籍していることが大きな“売り”のひとつですが、講師たちは必ずしもTESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages 英語が母語でない人々に向けた教授法)を修めているわけではなく、ましてCELTA(The Certificate in English Language Teaching to Adults)やDELTA(The Diploma in English Language Teaching to Adults)といった英語教師の資格を持っているわけでもない(持っている人もいます)ということ。これはDMM英会話に限らず、特に有資格者によるレッスンであると謳っていない限りオンライン英会話サービスの講師たちに共通していることでしょう。しかし、だからといってそれがよくない講師というわけではありません。
他人の評価より自分の感触
DMM英会話の場合、講師のレーティングがあり、これは利用者の評価が反映されています。そして、最高の5.0とレートされている講師はリストのはじめのほうに表示されるので、お気に入りの講師ができるまではレートの高い講師から選ぶ人が多いはず。筆者もしかり。ですが、高評価の講師を狙って予約をしても、ウチの子どもの反応はまちまちでした。
以前の記事にも書きましたが、ウチの子はお勉強というよりいろいろな話をしたいという理由でフリートークのレッスンをしています。テキストは使わず、自由にお話をするわけですが、小学生のころはノリのいい楽しい講師、中学生になってからは趣味の話をじっくりできる講師を好む傾向にあります。たとえ高評価の講師でも、ノリが合わなかったりこちらの話にまったく興味を示さないタイプの人では、レッスン中に聞こえてくる子どもの声のトーンや発話の頻度が全然違います。反面、何度もリピートしてレッスン予約するお気に入り講師の中にはそれほどレートが高くない人もいますが、いつも楽しそうでレッスンが待ち遠しいくらい。つまり、評価はあくまでも他人がつけたものですから、絶対ではないのですよね。ちなみに、最近は受験のことも考えテキストを用いたお勉強も少しずつ取り入れるようにしていますが、お気に入り講師でフリートークは最高に楽しいのに、勉強となると教え方が下手だと感じる講師もいるようです。難しいものですな。
どの講師を選ぶ? ポイントは
おなじみの講師が予約したい時間帯におらず、初見の講師を予約する場合、筆者はまず講師のプロフィールに書かれている「趣味」を確認します。子どもの趣味――オンラインゲームや日本のアニメに興味のある講師なら、たとえ講師の知らない作品について子どもが話しても、興味をもってくれるので話しが盛り上がりやすいのです。自分の推しの尊さを伝えるために、子どもは全力で英語知識を動員しますから、趣味の合う講師との会話は効果絶大です。
プロフィールの次にチェックするのは、利用者によるレビューです。低評価の理由が「通信状態が悪く、音声が何度も途切れた」「ニワトリが鳴いていてうるさくて集中できなかった」「子どもが乱入してきた」といったものが多く見受けられますが、筆者としてはそこは気になりません。なぜならそれは環境の問題で、常に講師がその状態にいるわけではないし、なにより講師の資質には関係がないからです。また、「すごく上から目線だった」「やる気がなさそうだった」といった主観的な意見もよく目にしますが、そこはまず予約してから考えます。レッスン中に注意して様子を見ているほか、終わってから子どもの感想を聞いての判断。結局「やってみなければわからない」状態ですが、「いい講師に出合えればラッキー」程度に構えていられるのは、やはり多くのサービスに共通するように、レッスン料が安いからでしょう。
講師との“距離感”の大切さ
こうしてレッスンを重ね、リピートの回数が多いお気に入りの講師ができてくると、その講師とまるで友達になったような気安さを感じることでしょう。筆者の子どももそうで、講師と文化に関するトークで盛り上がった後などは「夏休みに〇〇のところに遊びに行きたい」なんて言い出すこともしばしば。異文化を実際に体験してみたい思うと同時に、講師とも遊びたいと考えているようです。もちろん、歓迎してくれる講師もいるでしょうし、講師と深い友情を築くことだって可能です。ただし、多くの講師がやさしいのは、レーティングのシステムがあり、こちらがクライアントだからである、ということもまた、事実ではあります。そこを理解せず講師との距離感を間違えると、切ない結果になることもあるでしょう。
たとえば、筆者の友人A子のお話。趣味の海外旅行がもっと楽しくなるように、と始めたオンライン英会話で、ノリのいい男性講師を気に入り毎日のように彼のレッスンを予約し、話すようになりました。海外旅行好きな彼女ですから、講師の住む国にももちろん興味があります。「あなたの国に行ってみたいな~」と言えば「来て来て! 来たらぜひ僕に案内させて」といった感じに話は盛り上がり、A子の夢はどんどんふくらんでいったもよう。そして彼女はついに、ゴールデンウィークの旅先を講師の国に決め、しかもサプライズで突撃するという計画を立てました。イヤな予感しかしませんね。
講師と生徒は友達ではない?
講師の住む町の鉄道駅に降り立ったA子。いつものように予約しておいた講師とのレッスンに臨みます。「あれ? 今日はいつもと違う場所だね?」気づく講師。「そう。どこにいると思う?」こんな会話で、サプライズは大成功! 宿泊ホテルとスケジュールを伝えると、講師はおすすめの見所やレストランなどを教えてくれました。
A子のスケジュールは講師が仕事を休む土日を含めた4泊です。彼が仕事をする日であっても、18時には最後のレッスンが終わることを知っていたので、いきなり押しかけても1回くらいは会えるとA子は思っていたといいます。が、残念ながらレッスンのある平日は「疲れているから」、土日は「すでに予定がある」とのことで、講師と会うことはできませんでした。A子は「まぁ、突然だしね……」と、じゃっかんモヤりながらも旅行を楽しんで帰国しました。
帰国後、A子はいつものように講師の予約を取りましたが、レッスン直前で“講師側の都合”でキャンセル。何度か同じことが起こり、A子は講師から避けられていることを悟ります。同じオンライン英会話サービスを利用している友人に「友達だと思っていたのに」と愚痴ると、「ぜひ僕の国に遊びに来て、なんてみんな言うでしょ。社交辞令だよ」とばっさり。友人、ひどい。まぁ、その“友人”というのが筆者なわけですが。
「“本音と建て前”は日本独自の文化」というようなお話をよく耳にしますが、社交辞令は日本以外の国にも当たりまえに存在します。毎日のように会話をして、「また会えてうれしいよ」と毎回言ってくれても、それは旅館の女将がお客に「毎度ご愛顧いただきましてありがとうございます」と言うのと動機は変わりません。本当にそう思ってくれている人もいるものの、英語表現ではこうした社交辞令――ときに大げさな――はよく使われるので、知っておいた方がいいでしょう。実際、適度な社交辞令は会話に取り込むと人間関係を滑らかにしてくれます。そのあたりの感覚は日本語と同じですね。
目的と立場を忘れない
オンライン英会話をより楽しく、長く続けていくために、とても気の合うお気に入りの講師が見つかるのはうれしいことですが、とはいえ講師とユーザー互いの目的は英語の学習であるということを忘れないようにすることが肝要です。温かい言葉のやりとりのすべてが嘘ではありませんが、だからといってそれが講師と生徒という間柄を超えるものかどうかは、往々にして温度差があるものだなぁ、とA子やほかのケース(まだあるんですよ)を見ていて思うしだいです。
逆に、慣れてくると態度が悪くなる講師がいることも事実で、それもやはり「友達だから」と我慢したり講師におもねる必要はありません。
留学経験があり、英語のブラッシュアップにと、オンライン英会話でフリートークを楽しむB子。彼女のお気に入り講師はある日、レッスン開始時間に少し遅れ「二日酔いで……」とよれよれの状態で現れました。話していてもうつらうつらと居眠りを始める始末で、10分ほど経過したあたりで「ごめん、もう休んでいいかな?」と画面から消えてしまいました。B子は「辛そうでかわいそう。お大事にね」と声をかけたそうです。
本来、体調が悪くレッスンの続行が不可能なら講師が自ら「自己都合によるキャンセル」をして、代わりのレッスンチケットを発行するよう手続きします。講師だって人間ですから、体調不良やレッスン直前に急な用事が発生することはあるでしょう。そういうときに対応するシステムがあるにもかかわらずそれを利用せず、レッスンの対価を得るのはプロとして問題です。事務局に伝えれば講師の代わりにチケットを発行してくれるでしょうけれど、B子は「そんなことをしたら、講師にペナルティが加算されるかもしれないじゃない」と、このままでよいと言います。後日、またお気に入り講師とレッスンをした際、「この間はごめんね~」と軽い謝罪があり、「いいのいいの、気にしないで。そんなこともあるよ」とニコニコ許したB子。すると、こんなことがたびたび起こるようになってきました。
レッスンに遅れるのはしょっちゅう、用事があってレッスンを休みたいが、レッスンしたことにしてほしいと言われたり、レッスン中に携帯操作をしていて会話に集中していなかったり……。「求職中で、面接担当者とやりとりをしていたんだよ」との言い訳に、「がんばって! 仕事が見つかるといいね」と聖母のようなB子ですが、いいように利用されているだけにしか見えません。B子も講師も立場を忘れて「友だちだからいいか」、といったなあなあの関係になってしまったのが原因ですが、一方的に不利益を被っているB子はだんだんおもしろくなくなり、とうとうオンライン英会話の相談窓口に報告。講師は即座に除籍となったそうです。
対等の立場でお互い気持ちよく
お互い立場を認識しルールやマナーを尊重した付き合いであればこんなことにはならなかったはずで、講師におもねりニコニコと許すのではなく「レッスンを途中でキャンセルするのなら、レッスンチケットを発行してほしい」とはっきり言うべきでした。語学力の問題で言えない場合は相談窓口にうかがうことができます。この講師が除籍になったのは、おそらく実際はやっていないレッスンをやったことにしてほしいといった詐欺行為が原因なので、遅刻が多い、レッスン中にほかのことをしている、といった程度なら即座に除籍とまではならないようです。
結局は1対1の人間同士のつきあいですから、いろいろ起こりやすいのがオンライン英会話。筆者の子どもはまだ中学生なので、ある程度子どもと講師との関係やレッスンの様子を把握するために、ときどき、特によく予約する講師と話をするようにしています。レッスンを受ける本人以外の人が話してはいけないというルールがあるようですが、5分くらい時間をもらって、こちらの希望するレッスンの方向性や子どもの授業態度などについて話し合うのです。講師から問題点を教えてもらったら、改めるよう子どもに伝えます。こちらが気分よくレッスンを受けることができても、講師のほうはいろいろ我慢しているという状況ではお互いに楽しく長くレッスンを続けることはできないという想いもあってそうしているのですが、今のところよい関係が築けているかな、と思います。こちらがクライアントと先述しましたが、対等の立場でお互いに気持ちよくつきあえてこそ、長く続けられるのではないかと考えています。
いろいろな学習スタイルを選ぶことができ、低価格でとても便利なオンライン英会話。高い学習効果を得てこそ「安いのにすごい」と感動できるので、トラブルは避けたいですね。