【英文法書比較】プロ講師が3冊を徹底評価!

【英文法書比較】プロの英語講師が最新英文法書3冊を徹底評価!「どの英文法書を選んだら文法をしっかり理解できるの?」

今までで一度はこの質問をした英語学習者の方は多いですよね。
書店へ行くと数え切れないほどの文法書が並び、とても素晴らしいものも多くあります。
この記事では、筆者が3冊の文法書を選び、それらを評価していくので、ぜひ今後の英文法書選びの参考にしてくださいね。

長年多くの学習者に愛されてきた文法書を評価してもあまり新鮮味が無いので、今回は下記の要件を満たすものを、筆者が選ばせてもらいました。

1.2020年~2022年に出版されたものである
2.初心者が一から英文法を学べるものである
3.TOEICやビジネス英語等ではなく、日常英語を使うための一般的な英文法書である

今回選んだ3冊を読み、①分かりやすさ ②値段 ③内容 ④総合点を各5点満点で評価をしてみました。
記事のために筆者の独断と偏見で評価をつけさせてもらいましたが、選択した3冊は、それぞれ良い点があり、とても勉強になる文法書でした。
この記事では、各文法書について上記の評価に加え、プラスな点を3点、マイナスな点を2点記載しています。
ただ、筆者がマイナスと感じた点でも、学習者によってはプラスと感じるかもしれません。そういった点を予めご理解いただければと思います。 それでは早速1冊目から見ていきましょう!

英文法書①:基本にカエル英語の本 英文法[文のしくみ]

分かりやすさ:★★★★☆
値段:★★★★☆
内容:★★★☆☆
総合点:★★★★☆

この文法書は2020年7月に出版されたもので、373ページあり、価格が1800円+税です。
対象者は「英語が苦手」「文法が嫌い」「1から英語をやり直したい」といった方となっています。

筆者がこの本を手に取った理由はいくつかありますが、一番は表紙に書かれたカエルのイラストに好感を持った事です。中を見てもイラストが多く使われていて、初心者は安心して読もうという気になるのではないでしょうか。

目次には、「Intro 文の要素」「第1章 品詞と文型」「第2章 句」「第3章 節」のみ書かれていて、ちょっと内容的には足りない部分もあるかもしれないと感じたものの、筆者も英語の基本と考えている「文の要素」や「品詞」といった部分に多くのページを割いていたので、これは読んでみたいと思いました。
それでは早速「基本にカエル英語の本」のプラスな点とマイナスな点を見てみましょう!

プラスな点①:初心者に優しい作り

1点目は、本がとにかく初心者が安心して読めるような作りになっている点です。
表紙のイラストに好感を持って選んだ本でしたが、肝心の内容も文字が大きく、イラストや表は多く、色や言葉遣いも英語が苦手な方が読んでも負担に感じないことは間違いないですよ。 Introと第1章の例文は簡単、且つ以前出たものを繰り返し使っているので、例文の内容が分からず悩むということは、特に本の前半で感じる事はありません。

プラスな点②:文法用語も分かり易く説明

2点目は、文法書では当たり前に使っている文法用語を1から分かり易く、例を挙げながら説明しているという点です。
時々ここでも少し説明が欲しいと感じる時はありましたが、説明が特に必要なIntroや第1章では、例えば「主語」「動詞」は何?といった説明も丁寧にしているので、本当に英語が苦手だったり、文法が嫌いといった人でも、「あ~、やっぱり英文法は苦手だ」と感じる心配はなく、読み進める事が出来るようになっています。
ちなみに、日本語では主語がしょっちゅう省略されるけど、英語では省略される事は稀といった情報も伝えながら、学習者が持つ可能性がある疑問もなるべく排除するように作っている点もプラスです。

プラスな点③:説明する文法の順序が絶妙

プラスな点3つ目は、扱う文法の順序が学習者にとって納得のいくものであるという点です。英語を理解するためには、「主語」、「動詞」、「補語」、「目的語」という「4つの文の要素」がとても大切です。まずはそこから始め、「語順」→「文型」という流れになっています。 よって、5文型が登場すると「ウっ」と思った苦い記憶を持っている人でも、そこにたどり着くまでに必要な情報は確認しているので、楽々とはいかないかもしれませんが、ちゃんと理解しながら読み進める事が出来ます。

マイナスな点①:もう少し踏み込むと良い部分も

全体的には初級者を意識して書けていますが、時折「少し惜しい」と感じてしまう事があります。
例えば、「人称代名詞」のパートで、「「主語」として機能する⇒「主格」」とサラッと書いてあるのですが、「主語」と「主格」って何が違うの?と疑問に思ってしまう人も多いと思います。こういった説明も簡単で良いので、あると良かったなと思いました。

また、「頻度を表す副詞」を置く5つの場所が例文と一緒に分かり易く説明されています。ただ、その5つの場所をどうやって選べば良いのかが書かれていないので、実際に使うという時に悩んでしまう事が考えられます。こういった部分をもう少し踏み込んで説明できていれば更に良かったのではないかという印象を受けました。

マイナスな点②:難易度にバラツキがある

率直な感想として、Introと第1章と比べて、第2章と第3章の難易度が一気に上がるように感じました。
初心者にも分かるように説明しようというのは本を通して感じられますが、例文の難易度がいきなり上がったりする部分があったので、初心者にはきついのではないかなと感じました。
最初の方は、カエルにちなんでfrogやswimといったような単語が繰り返し使われていたのですが、突然Our mission is empowering children.といった例文が出て来て、日本語訳はあるものの、圧倒される学習者も多いだろうなと思ってしまいました。

また、内容に関しても、第3章あたりは難易度が一気に上がり、頭では読めば理解出来そうだけれども、自分で内容を誰かに説明しようとした場合、難しいのではないかなと感じました。もう少し情報の詰め込みが少なければ、余裕を持って頭に入れる事が出来るのではないかなという印象を受けました。

全体的に表紙を見て持った期待を裏切らない、初心者にも優しい英文法書でした。

英文法書②:日本語で理解する英文法

分かりやすさ:★★★☆☆
値段:★★★☆☆
内容:★★★☆☆
総合点:★★★☆☆

2冊目の文法書は2020年8月に出版された「日本語で理解する英文法」です。486ページとかなり厚みもあり、価格は2200円+税となっています。
対象者は、「ひと通り英語を勉強してみたものの、やはり、よく分からない」「いま、英語を勉強しているけれど、何が分からないのかも分からない」人と記載されていますが、初心者から中上級者まで幅広いレベルの学習者が対象となっています。

正確には5つの章に分かれていて、対象者も章によって若干異なっています。

第1章;基本品詞と文の要素 (初心者~)
第2章:品詞と時制 (初心者~)
第3章:品詞の変換 (初心者~)
第4章:複雑な構造の文 (中上級者)
第5章:複雑な時制の文 (中上級者)

筆者がこの本を選んだ理由はとてもシンプルで、ずばりタイトルです。「日本語で理解する英文法」というタイトルが、どういう意味なのか興味を持った事が大きな理由です。
日本語で説明するという事だけだと目新しいものはないので、それが違うのか見てみたかったというのがあります。

この文法書のアピールポイントは、2つの「今までの文法書と違うアプローチ」で、1つ目は「各課とも、日本語の例文で始まる点」で、2つ目は「既存の英文法の枠に囚われない全く新しいアプローチ」との事でした。2つ目は正直に言うと、実際に読んでみても私は「新しいアプローチ」に気付く事が出来ませんでした。 とは言え、プラスな点もしっかりとありましたので、早速プラスとマイナスな点を見てみましょう。

プラスな点①:英文法を理解するためのポイントが的確

まず一番に感じた事は、英文法を理解する上で重要なポイントを英語が苦手な人達も分かるように一から説明をしているという点です。
例えば、第1章1課の日本語と英語で文を構成する7つの基本要素が「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのように」「どうした」とありますが、これは英文を作る上ではとても重要で、私も英文法を教える時に、生徒にはこれを意識して文を作ると分かり易いと伝えています。これがしっかり書かれている点は好感を持てました。
他にもこのような英文法を理解するために大切なポイントが多く記載されていた点はとても良かったです。

プラスな点②:日本人の知りたいという心理に合っている

各課の英文法は、ネイティブがどのように感じるかといった点を感じてもらうために、まずは日本語の例文を挙げた上で、日本語の文法について考えてもらうという形式をとっています。それがこの本の一番の売りです。
多くの日本人の心理としては、英語を学習する際に、日本語に当てはめて、全てをきっちり納得するようになるまで知りたいという気持ちがあります。日本語の文法を、例文を見ながら考えるというアプローチ自体は、こういった気持ちを持った学習者を納得させるという意味ではありなのだと感じます。同時に、このアプローチは、マイナスに働いてしまうという事も考えられ、それについては後ほど述べるようにします。

プラスな点③:学習者が勘違いしやすいポイントも確認できる

本書には、「発展」や「補足」という部分があり、文法の復習や日本人学習者に知っておいて欲しいポイントが書かれています。
英語を教える側からしても、「そうそう、これは学習者に知っておいて欲しい点だよね」と思う点が多くあり、「発展」と「補足」は是非飛ばさず読んで欲しいと思いました。
例えば冠詞のanをつける名詞について述べる際、母音は名詞の最初の文字ではなく、音であるとしっかり述べていました。当たり前のように見えて、実は「母音の前にanを置く」とだけ書いて、音であるという部分に言及しない文法書もあります。 こういった学習者が勘違いしやすいポイントをしっかりと記載しているのは大きなプラスな点だと感じました。

マイナスな点①:日本語の文法を考えるので疲れてしまう

この文法書では、STEP1で日本語の例文を見ながら文法の説明をしてから、STEP2で英語ではどうなるのか説明しています。ただ、これをする事で、とにかく文字数、そしてページ数が多くなって、特に英語文法が苦手だったり、アレルギーになっている人は読むのがしんどくなってしまう可能性があると感じました。
また、読んでいて個人的に感じた点ですが、例えば「品詞」の説明あたりまでは「日本語の文法」→「英語の文法」の流れがあるのは良い気はしましたが、それ以上は読んでいてむしろ日本語の文法の間違いを考えて疲れてしまい、英語の文法の説明に入ってもあまり頭に入ってこなかった事がありました。

日本語の文法と英語の文法の説明を一致させることに気が行ってしまい、英語の文法の理解というところにたどり着くまでに、正直日本語の文法を考えるのは必要なのかと疑問に思ってしまう程の気力を使うようになっていました。
日本語から英語という流れには、一長一短あって、マイナスな点としては、文法的にも訳的にもきちっとはまらないと納得がいかないようになってしまい、言語を使えるようにするという意味では、逆効果になる可能性も考えられます。 一応「本書の使い方」で、日本語の例文に関しては、ネイティブにはどう聞こえるかの疑似体験のためのもので、日本語文法の説明はサッと読み流す感じで良いとありました。しかし、この形式は大きな売りなので、読み流すのは学習者からするとむしろ気持ち悪く感じてしまうのではないかと思います。

マイナスな点②:レベルにバラツキがある

正直なところ、レベルが少しどっちつかずになっている印象があります。

第1章と第2章がとても大切な部分とあり、初心者にも分かり易い丁寧な説明になっていて、とても良い印象を受けました。しかし、それ以降の特に第4章と第5章は、かなり複雑な内容になっており、第1章から勉強して来た初心者にはきつい内容や説明、難易度が高い例文となっていました。
実際にそれらの章については「中上級者向け」と記載はありましたが、そこまでレベルを一気に上げる必要はあったのか疑問には思う部分はありました。

また、それらの章が中上級者向けであるのであれば、第1章と第2章のように、「日本語の文法」→「英語の文法」という流れで作る必要性は無いようには感じました。
少々辛口に聞こえてしまうコメントを書きましたが、こういった点も良いと感じる学習者もいると思いますので、そういった部分は理解してもらえればと思います。

日本語でネイティブがどう感じるかという点を一貫して見せようとしていたアプローチは面白かった1冊でした。

英文法書③:一度読んだら絶対に忘れない英文法の教科書

分かりやすさ:★★★★☆
値段:★★★★★
内容:★★★★☆
総合点:★★★★☆

最後の1冊は、2021年4月に出版された「一度読んだら絶対に忘れない英文法の教科書」です。こちらは239ページで1600円+税なので、比較的選びやすいボリュームと価格帯ですね。

この文法書のポイントは、英文法は「公式の暗記」ではなくて、1つのストーリーに沿って、正しい「学び順」で文法を理解する事が大切と主張しているところです。
その「学び順」で学習する事で、無理やり文法を覚えるのではなく自然に頭に入って来るとの事です。
英文法は暗記しても、「理解」していないと使えるようにならないと断言している点も好感を持てました。

この文法書の対象者は、英作文を書いたり、会話で意思疎通が図れるようになりたい人、初心者や英文法を暗記して上手く使えていない人です。目的が英語を使うという部分にある点も期待を持てる1冊です。
個人的に前から読みたいと思っていた1冊で、実は欲しいものリストに入れてありました。「一度読んだら絶対に忘れない」というのはインパクトがあるので、どこまで本当に頭に残るのかという点が気になりました。
それではプラスな点とマイナスな点を見てみましょう。

プラスな点①:ネイティブの思考を意識させる文法の学び方

ネイティブの思考が自然に身につく英文法の学び方という部分に焦点を当てている点がとても良い点で、そのために重要視している3つのポイントがあります。

1.英語という言語の「フレームワーク(枠組み)」を理解する
2.単語に含まれている「隠れニュアンス」を理解する
3.文法のルーツを理解する


この中で特に1と2は学習者が知っておくと良いポイントですね。
1は多くの文法書で同じような事が書かれているとても重要なポイントです。

具体的には、動詞を中心とした「文の基本構造」を知るということ、そして「時制」を知るということです。この文法書では、これらを理解して使えれば、言語の9割をマスターできたと言っても過言ではないとあります。 また本書では、中学と高校1年までに学ぶ文法を、独自の順番に並べ替えていますが、それが「英語のフレームワーク」(英語を使う時の言葉の構造)を理解する上で重要、且つ論理的な「学び順」として紹介している点も良い点として挙げられます。

プラスな点②:日本語と英語のズレを明確にしている

日本語と英語にはズレがあるという部分を明確にしている点も学習者には重要な指摘です。「A(日本語)=A(英語)」にならない事があると伝える事で、特にニュアンスの違いによって生じるズレを学習者に気付かせようとしている点がとても良いですね。

例えば下記のような会話例が挙げられていました。

A: Dinner is ready now.(夕飯の支度ができたよ。)
B: OK, I’m (    ). (わかった、今行くよ。)

ここのかっこには「行く」が入るので、goを使ったgoingにしてしまう可能性が考えられますが、これは、夕食が用意されている場所へ近づくという意味で、comeを使ったcomingになります。
こういったズレについても言及している点が学習者には嬉しいですね。 このようなところからも、この文法書が単に「英文法」を知識として学ぶだけのものではなく、「英語を使う」事も目的としている事が分かります。

プラスな点③:物語を読んでいるような文法書

この文法書は、英語の文法書ではあるものの、「ストーリー」を読んでいるかのように文法を学ぶ事が出来ます。
この文法書の売りでもある「一度読んだら忘れない」ために、著者は「1つのストーリー」に沿って覚えていくと書いています。これに関しては、本を読み進めると読者は自然に気付けるようになっています。

英語を使う際に必要な文法を「学び順」通りに見ていく過程で、単に英語の「公式」を確認するというよりも、「なぜ、「三単現」だけSがつくのか?」といった学習者が思う素朴な疑問だったり、「英語は「語順」が命」といった、学習者が知っておくべきポイントを伝えながら文法をサラッと理解させる手法になっています。よって、文法書で勉強をしているという感覚よりも、「ストーリー」を読みながら使える文法を覚えていっているという感覚を持つようになります。
これはとても重要で、英文法の説明を「理解」そして「納得」しながら頭に英文法を残せるようになっています。

マイナスな点①:扱える内容に限りがある

「ストーリー」を大切にしているので、扱う内容(説明の深さ)が限られています。
これはあまりごちゃごちゃせず、重要なポイントを覚えて貰うという点では良い部分でもある反面、学習者のレベルによっては、「説明がそこまでだとまだ理解度が追いつかない」という可能性も考えられます。

例えば「関係代名詞」の部分では、文の作り方はとても分かり易く説明していましたが、例文は目的格のwhomを使った関係代名詞の使い方を見せているのみでした。
人や物に対して、主語、所有格と目的格の時には、どの関係代名詞を選ぶかという表はあるものの、whom以外を使った例文はありませんでした。
例えばせめて主格の例文を1つ入れるなどした方が学習者の理解度は上がるのかなと感じました。

本の著者も、特に多くの学習者がこの関係代名詞に悩まされていると書いているので、そもそも使う機会が関係代名詞の中でも多い方ではないwhomのみの例文ではなく、そういった部分を考慮して扱う内容をもう少し増やせれば良かったかと感じました。

マイナスな点②:前から読む事が求められる

「ストーリー」を大切にしているため、小説のように前から読む必要があり、ピンポイントで知りたい文法がある場合、その箇所を探して読んでも物足りなさを感じる可能性があります。
一般的な英文法書に比べても、決して例文が多かったり、説明が多い訳ではないので、人によっては疑問に思っている部分が解消しない、または書いてあることは分かるけれども、不十分に思ってしまう可能性はあります。
この文法書の全体的な印象としては、経験豊富や英語講師、そして通訳者によって書かれた「使うための英文法」を意識した良い本だと感じました。

まとめ

今回ご紹介した3冊は比較的新しい文法書で、いずれもそれぞれ素晴らしいポイントが多くありました。
数多くある英文法書の中から自分自身に合ったものを1冊選ぶ事は決して簡単ではありません。選ぶ際には、まずは下記の3点を意識して書店で文法書を見てください。

① 文法書を探している理由
② 学習する必要がある文法の範囲

③ 読みやすく、内容が頭に入って来るか

こういった点に加えて、今回お伝えした内容も参考にしながら、あなたに合った英語の文法書を見つけてもらえると嬉しいです。

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